2019年5月に米FDA(食品医薬品局)が承認した主な新薬と適応拡大をまとめました。
【新薬】ZolgensmaやVyndaqelなど
「Dengvaxia」仏サノフィパスツール
「Dengvaxia」は、米国で初めて承認されたデング熱ワクチン。デング熱の感染歴があり、流行地域(アメリカ領のサモア、グアム、プエルトリコ、ヴァージン諸島)に住む9~16歳が対象です。半年ごとに3回接種します。
「Qternmet XR」英アストラゼネカ
「Qternmet XR」 は、SGLT2阻害薬dapagliflozinとDPP-4阻害薬saxagliptinの配合剤「Qtern」に、metforminを加えた徐放性の3剤配合剤です。適応は2型糖尿病。日本での開発は行われていません。
「Vyndaqel / Vyndamax」米Foldrx(米ファイザー)
「Vyndaqel」(一般名・tafamidis meglumine)は、トランスサイレチン型心アミロイドーシスの適応で承認されました。日本では今年3月に世界に先駆けて承認されており、欧州でも申請中。Vyndaqelは1日1回4カプセル(1カプセルは20mg)、「Vyndamax」は1日1回1カプセル(1カプセルは61mg)を投与します。
「Ruzurgi」米Jacobus
「Ruzurgi」(amifampridine)は、小児のランバート・イートン筋無力症候群(LEMS)の治療薬です。LEMSは、神経と筋肉の間の情報伝達が妨げられ、筋力が低下する自己免疫疾患。米国では、成人向けLEMS治療薬はすでに承認されていましたが、小児向けはRuzurgiが初めて。
「Nayzilam」Proximagen(ベルギー・UCB)
「Nayzilam」(midazolam)は、てんかんの重積発作に対する鼻内噴霧製剤。midazolamにはすでに注射剤がありますが、スプレー剤になったことで家族など医療専門家以外でも投与することが可能になりました。
「Slynd」米Exeltis
「Slynd」は黄体ホルモンdrospirenone単剤で、エストロゲン(卵胞ホルモン)フリーの経口避妊薬。黄体ホルモンと卵胞ホルモンの配合避妊薬で問題となる血栓塞栓症のリスクを避けることができると期待されています。
「Piqray」スイス・ノバルティス
PI3K阻害薬「Piqray」(alpelisib)は、PIK3CA遺伝子変異陽性のホルモン受容体陽性/HER2陰性の進行性・転移性乳がんを対象に、フルベストラントの併用療法で承認されました。PI3Kは、がん細胞の増殖シグナル経路の1つ。日本では臨床第3相(P3)試験が行われています。FDAは同薬の承認にあわせて、コンパニオン診断薬として独QiagenのPIK3CA遺伝子変異の検出キットも承認しました。
「Zolgensma」米AveXis(スイス・ノバルティス)
「Zolgensma」(onasemnogene abeparvovec)は、2歳以下の小児の1型脊髄性筋萎縮症(SMA)を対象に承認された遺伝子治療薬。1回の静注で治療が完了し、発症前でも使用できます。212.5億ドル(約2億3375億円)と高額なため、ノバルティスは費用の支払いを支援するプログラムを提供します。日本では昨年11月に申請済み。先駆け審査指定制度の対象品目に指定されているため、今年中の承認が見込まれています。
【適応拡大】Bavencioの腎細胞がん、Cyramzaの肝細胞がんなど
「Bavencio」独メルク
独メルクとファイザーが共同開発する免疫チェックポイント阻害薬の抗PD-L1抗体「Bavencio」(avelumab)は、進行性腎細胞がん(1次治療)を対象にチロンキナーゼ阻害薬「Inlyta」(Axitinib)との併用療法が承認されました。同適応では、日本でも今年1月に申請を済ませています。
「Tibsovo」米Agios
IDH1阻害薬「Tibsovo」(ivosidenib)は、IDH1遺伝子変異陽性で集中化学療法ができない急性骨髄性白血病(AML)への適応拡大が承認。同薬は18年7月に米国で再発・難治性のIDH1遺伝子変異陽性AMLで承認を取得。日本では開発されていません。
「Xeomin」独Merz
A型ボツリヌス毒素製剤「Xeomin」(incobotulinumtoxinA)は、新たに慢性流涎症、眼瞼痙攣の適応で承認されました。同薬は欧州で05年に、米国で10年に承認済み。日本では、Merzとライセンス契約を結んでいる帝人ファーマが上肢・下肢痙縮を対象にP3試験を実施中です。
「Cyramza」米イーライリリー
抗VEGFR-2抗体「Cyramza」(ramucirumab)は、高AFP(α-フェトプロテイン)の進行性肝細胞がんへ適応拡大が承認されました。AFPは1次治療後の予後バイオマーカーで、患者の約4割が高AFPと診断されます。日本と欧州でも同適応で申請中です。
「Venclexta」米アッヴィ
BCL-2阻害薬「Venclexta」(venetoclax)と「Gazyva」(obinutuzumab)の併用療法が、未治療の慢性リンパ性白血病(CLL)を対象に承認。承認の根拠となったP3試験では、12カ月の治療で標準療法に比べて病勢進行・死亡リスクを67%低下させました。Venclextaは日本ではまだ承認されておらず、現在、再発・難治性CLLの適応で申請中です。
「Jakafi」米incyte
JAK1/JAK2阻害薬「Jakafi」(ruxolitinib)は、ステロイド難治性の急性移植片対宿主病の適応追加の承認を取得。日本では、急性・慢性の移植片対宿主病を対象に、提携先のノバルティスファーマがP3試験を進めています。
(亀田真由)