過去5年の日本の医薬品市場の成長率は年平均1.0%で、先進10カ国で最低となったことが、米IQVIAの最新のレポートで明らかになりました。向こう5年間の年平均成長率はマイナス3~0%と、こちらも先進国の中で最低。世界3位は維持するものの、存在感の低下は避けられそうにありません。
14~18年、日本市場の成長率は年平均1%
米国の調査会社IQVIAが1月29日に発表した最新の医薬品市場予測レポート「The Global Use of Medicine in 2019 and Outlook to 2023」によると、2018年の日本の医薬品市場の規模は864億ドル。14~18年の5年間の市場成長率は年平均1.0%で、先進10カ国の中で最低となりました。
最大市場の米国は4849億ドルで、過去5年の年平均成長率は7.2%。そのほかの先進国も軒並み年平均4~6%程度の成長となる中、成長率が1%台にとどまったのは日本とフランスだけです。
レポートでは日本市場について「2年に1回の薬価引き下げシステムにより、成長率はほかの先進国市場よりも一貫して低くなっている」と指摘。「厚生労働省の予算管理によって、全体的な薬剤支出の傾向はおおむね維持されてきた」と分析しています。
18年4月に行われた薬価改定は、薬剤費ベースでマイナス7.48%と過去20年で2番目に大きな引き下げ幅となりました。新薬創出・適応外薬解消等促進加算の対象は大幅に縮小され、長期収載品の薬価を後発医薬品並みの水準まで引き下げる新たな仕組みも導入。適応拡大などで売り上げが大幅に拡大した医薬品は、2年に1度の薬価改定を待たずに引き下げられることとなり、11月には免疫チェックポイント阻害薬「オプジーボ」がこのルールに基づいて大幅な薬価引き下げを受けました。
19~23年はマイナス成長
日本市場の低成長は、向こう5年間も続く見通しです。IQVIAの予測によると、19~23年の日本市場の成長率はマイナス3%~0%と予測。先進国はいずれも、過去5年間に比べて今後5年間は成長が鈍化する見通しですが、マイナス成長が見込まれるのは日本とフランス(マイナス1%~2%)だけです。
薬価引き下げに加え、日本市場のマイナス成長の要因として挙げられているのが、後発品の使用拡大です。レポートによると、18年に73%だった後発品の使用割合(数量ベース)は、23年に83%まで上昇。逆に、長期収載品は27%から17%に縮小します。抗がん剤などのスペシャリティー領域の医薬品は金額ベースで全体の41%までシェアを拡大しますが、IQVIAは「後発品の普及を通じたコスト削減により、スペシャリティー医薬品が増えても全体的な予算には影響しない」とみています。
日本市場は中国の半分以下に
世界市場は2023年まで年平均3~6%成長し、23年には1兆5000ドルを突破する見通し。米国は4~7%と引き続き高い成長が予想されており、欧州も1~4%の成長が見込まれています。
向こう5年でマイナス成長が予想される日本市場ですが、米国、中国に次ぐ世界3位の位置はキープする見通しです。ただ、米国を100として市場規模を指数化してみると、日本は13年24、18年18、23年12と大きく縮小。23年には2位中国(27)の半分を下回ります。
14~18年の年平均成長率が7.6%だった中国も、向こう5年は3~6%と成長は鈍る見通し。ただ、23年に市場規模は1400~1700億ドルに達すると予想され、一国で欧州5カ国の規模に近づきつつあります。
23年には、世界市場でブラジルがトップ5に、インドがトップ10に、そしてベトナムがトップ20に入ると予測されています。減速傾向にあるものの、新興国では高成長が続く見込み。レポートでは「新興国の成長は主に一人当たりの薬剤使用の増加に由来しているが、経済成長とともに患者の支払い能力が上がるにつれて、新薬の普及が拡大する」と見通しています。