市場拡大が著しく、開発競争も熾烈ながん領域。製薬大手の後期開発パイプラインをまとめました(全5記事。この記事は半年をめどに更新していく予定です。全記事まとめはこちら)。
パイプラインは調査時点で各社がホームページで公表していた情報に基づく。いつ時点の情報かは会社によって異なるため、承認・申請など直近のイベントが反映されていない場合もある。 |
スイス・ロシュ
免疫チェックポイント阻害薬の抗PD-L1抗体アテゾリズマブ(製品名・テセントリク)は、欧州で非小細胞肺がん(ファーストライン)とトリプルネガティブ乳がん(術前補助療法)を対象に申請中。抗TIGIT抗体tiragolumab(開発コード・RG6058)との併用療法も開発しており、小細胞肺がんの適応で2022年の申請を目指しています。免疫療法では、抗CD20/CD3二重特異性抗体のmosunetuzumab(RG7828)と同glofitamab(RG6026)もP3試験段階です。
抗CD79b抗体薬物複合体(ADC)のポラツズマブ ベドチン(ポライビー)は、今年3月に日本でも再発・難治性のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫治療薬として承認。グローバルで、未治療患者への適応拡大に向けた臨床第3相(P3)試験を進めています。
昨年には米ブループリントと提携し、RET阻害薬pralsetinib(Gavreto)をパイプラインに加えました。同薬は、同9月に米国で承認されています。このほか、がん細胞の増殖に関わるPI3K/Akt経路に作用する薬剤のAKT阻害薬ipatasertib(RG7440)とPI3Kα阻害薬inavolisib(RG6114)も開発中。ipatasertibは、2022年までに去勢抵抗性前立腺がんの適応で申請を行う予定です。
米ファイザー
独メルクと開発する抗PD-L1抗体アベルマブ(バベンチオ)は、日本で今年2月、尿路上皮がんに適応拡大しました。国内で卵巣がん対象のP3試験を進めているほか、海外ではTLR9アゴニストCMP-001やPARP阻害薬talazoparib(Talzenna)との併用療法などを開発中。talazoparibは、単剤療法やアンドロゲン受容体シグナル伝達阻害薬エンザルタミド(イクスタンジ)との併用で、去勢抵抗性前立腺がんやトリプルネガティブ乳がんを対象に臨床試験を行っています。
新規候補化合物では、抗PD-1抗体sasanlimab(PF-06801591)が、筋層非浸潤性膀胱がんを対象とするBCGとの併用療法でP3試験を進行中です。
スイス・ノバルティス
ノバルティスは、2021年中に3つの新規有効成分の申請を目指しています。1つは、米エンドサイト買収で獲得した放射線医薬品の177Lu-PSMA-617。今年3月には、転移性去勢抵抗性前立腺がんを対象に行ったP3試験で主要評価項目を達成したと発表しました。残る2つはBCR-ABL阻害薬asciminib(ABL001)と抗TIM3抗体sabatolimab(MBG453)で、前者は慢性骨髄性白血病で、後者は骨髄異形成症候群で、それぞれ申請を行う予定です。
CAR-T細胞療法のチサゲンレクルユーセル(キムリア)は、年内にびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(初回再発)と濾胞性リンパ腫への適応拡大の申請を行う予定。血液がん治療薬としては、マルチキナーゼ阻害薬midostaurin(Rydapt)が、FLT3遺伝子変異陽性の急性骨髄性白血病を対象に日本でP2試験を行っています。
これ以外に、抗IL-1β抗体カナキヌマブ(イラリス)を非小細胞肺がん治療薬として開発していますが、今年3月、セカンドラインまたはサードラインでのドセタキセルとの併用療法を評価した臨床試験で主要評価項目を達成しなかったと発表。ファーストラインやアジュバント療法でのP3試験は継続しています。
(亀田真由)
AnswersNews編集部が製薬企業をレポート
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