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高額化するHIV治療薬―後発品の登場で手の届く治療は実現するか|DRG海外レポート

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米国に本社を置くコンサルティング企業Decision Resources Groupのアナリストが、海外の新薬開発や医薬品市場の動向を解説する「DRG海外レポート」。今回取り上げるのはHIV治療薬。米国では患者の4割が薬物治療を受けておらず、患者の費用負担をいかに下げていくかが課題となっています。

 

(この記事は、Decision Resources Groupのアナリストが執筆した英文記事を、AnswersNewsが日本語に翻訳したものです。本記事の内容および解釈については英語の原文が優先します。正確な内容については原文を参照してください。原文はこちら

 

高騰する価格 Truvadaは発売時定価の2.5倍に

HIVの治療コストは患者数の増加に伴って年々上昇している。医療制度にとってかなりの負担となっており、最新の抗ウイルス薬では患者のアクセスが制限されるという状況も生まれているようだ。

 

UNAIDS(国連合同エイズ計画)は「90/90/90」(HIV患者の90%が診断を受け、その90%が薬物治療を行い、その90%でウイルス量が抑制される)を目標としているが、米国は主要国の中でもこれに大きく後れをとっている。

 

米国 患者の4割は薬物治療受けず

Decision Resources Groupの疫学調査によると、2017年に米国で診断されたHIV患者のうち、抗ウイルス薬による治療を受けたのは60%にすぎない。これはCDC(米国疾病管理予防センター)の調査とも一致する。HIVの流行を抑えるにはこれを改善する必要があるが、ポイントとなるのは治療費の軽減だ。

 

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米国の治療ガイドラインが推奨する薬剤は、ここ数年で発売されたブランド薬が大半を占めており、その価格は高騰している。ギリアドのBiktarvyは米国で今年発売されたばかりのシングルタブレットレジメン(STR)だが、定価は年間3万5839ドル。従来品のGenvoya(ギリアドが2016年に発売したSTR)は年間3万930ドルかかる。

 

HIV患者支援団体は価格の引き下げを求めているが、HIV治療薬は年々高額化している。ブランド薬の年間価格上昇率は7~8%と歴史的な数字だ。Truvada(ギリアド)の価格は今年、年間2万100ドルと発売当時の定価の2.5倍まで上昇した。

 

ジェネリックへの切り替えを促すには

高額なARTの登場が市場の拡大を後押ししているが、その分、保険者の負担は増している。保険者は価格の安いブランドジェネリックの使用を患者に促す方法を探っている。10月3~7日にサンフランシスコで開かれたIDWeek(米国感染症学会週間)では、Rochelle Walensky医師がその一例を紹介した。

 

Walensky医師が紹介したのは、ユナイテッドヘルスケアの「My ScriptsRewards」。このプログラムでは、ジェネリックに切り替えたHIV患者の自己負担をゼロにし、さらにほかの医療費を500ドルまでカバーする。

 

ただ、こうした取り組みで問題となるのは、推奨されている標準治療と臨床的に同等でない治療薬に患者を誘導すべきか、ということだ。

 

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マイランのSymfiとCimonはそれぞれ、ギリアドのAtriplaとTruvadaに似ているが、エムトリシタビンをラミブジンに置き換えているため、同等とは言えない。さらに、AtriplaとTruvadaは臨床医にとってもはやファーストラインの選択肢ではなくなっている。Atriplaは、中枢神経系の毒性のため2015年に米国のガイドラインで推奨度が下げられた。Truvadaは、より安全な後継品であるDescovyへの切り替えが進んでいる。

 

ブランドジェネリックは先発品に比べて40%ほど安いが、切り替えのデメリットを正当化するのに十分なコスト削減になるかは不明だ。標準治療として推奨されているIsentress(メルク)やTivicay(ヴィーヴ)にジェネリックが発売されるのはまだ先で、それぞれ2023年、2027年と見込まれている。

 

価格をいかに下げるか

HIV治療薬の価格をいかにして引き下げていくか。C型肝炎治療薬市場で最近起こっていることが参考になるかもしれない。

 

C型肝炎治療薬で起きた変化

ギリアドは、HarvoniとEpclusaのオーソライズド・ジェネリックを2019年に発売すると発表した。定価は2万4000ドルで、Harvoniの9万4500ドル、Epclusaの7万4760ドルを大きく下回る。競合品のMavyret(アッヴィ)よりも10%安い。メディケアの被保険者は、安いジェネリックを使うことで自己負担のうち2500ドルを免除される。

 

こうした取り組みはHIV患者にとって利益となる可能性があり、費用負担の軽減という点で最も恩恵を受けるのは、おそらくメディケアの患者だろう。ギリアドのオーソライゾドHCVジェネリックが発売されれば、従来は費用面から使えなかったHCV治療薬へのアクセスが提供されることになる。こうした方法をHIV治療薬にも広げれば、HIV患者も現時点で有効性が最も高い治療薬を使いやすくなる。

 

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保険者とメーカーの連携が必要

ただし、HIV治療薬市場にはHCV治療薬のような激しい競争がない。HCV治療薬はその性質上、大きな売り上げをあげられる期間が限られているため、価格定価を招きやすく、それゆえ販売競争は熾烈だ。HIV治療薬メーカーとしては、価格を引き下げる動機が乏しい。

 

米国のHIV領域では、市場に大きな変化が起こらない限り、この先もARTにかかる費用が治療アクセスの障壁となる。しかしながら一部では、Ryan White ActやAIDs Drug Assistance、そしてメーカーの福利プログラムによって、患者向けの費用援助が提供されている。

 

それでも、その時々で最高の臨床プロファイルを持つARTが低価格で使えるという至上の目標を達成するためには、保険者とメーカーが連携して取り組む必要がある。

 

(原文公開日:2018年10月17日)

 

【AnswersNews編集長の目】

かつては死の病として恐れられたエイズですが、現在は薬物療法の進展によってHIVに感染しても一般的な寿命を享受できる状況になりつつあります。

 

現在、治療の中心となっているのは、▽核酸系逆転写酵素阻害薬▽非核酸系逆転写酵素阻害薬▽プロテアーゼ阻害薬▽インテグラーゼ阻害薬――を組み合わせて使う「抗レトロウイルス療法」が主流。近年はこれらを1剤に配合して利便性を高めた新薬や、より安全性や有効性の高い新薬が相次いで登場しています。

 

日本では2014年にヤンセンが「コムプレラ」(リルピビリン/テノホビル/エムトリシタビン)を発売。13年には鳥居薬品が「スタリビルド」(エルビテグラビル/コビシスタット/エムトリシタビン/テノホビルジソプロキシルフマル酸塩)、15年にはヴィーブが「トリーメク」(ドルテグラビル/アバカビル/ラミブジン)、16年には鳥居が「ゲンボイヤ」(エルビテグラビル/コビシスタット/エムトリシタビン/テノホビルアラフェナミドフマル酸塩)発売しました。今年9月にはヤンセンの「オデフシィ」(リルピビリン/テノホビルアラフェナミド酸塩/エムトリシタビン)も発売されています。

 

記事中にも出てきたギリアドの「Biktarvy」(ビクテグラビル/エムトリシタビン/テノホビルアラフェナミド酸塩)は、日本でも近く承認申請される見通しです。

 

この記事は、Decision Resources Groupのアナリストが執筆した英文記事を、AnswersNewsが日本語に翻訳したものです。

 

【記事に関する問い合わせ先】
ディシジョン・リソーシズ・グループ日本支店
斎藤(カスタマー・エクスペリエンス・マネージャー)
E-mail:ssaito@teamdrg.com
Tel:03-5401-2615(代表)

 

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