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2018年上半期 米FDAが承認した新薬まとめ|DRG海外レポート

更新日

米国に本社を置くコンサルティング企業Decision Resources Groupのアナリストが、海外の新薬開発や医薬品市場の動向を解説する「DRG海外レポート」。今回は、今年上半期に米FDAが承認した新薬を振り返ります。

 

(この記事は、Decision Resources Groupのアナリストが執筆した英文記事を、AnswersNewsが日本語に翻訳したものです。本記事の内容および解釈については英語の原文が優先します。正確な内容については原文を参照してください。原文はこちら

 

95年以降最多となった2017年の承認ペースを維持

製薬企業にとって2017年は、米FDA(食品医薬品局)からの承認獲得という面では非常にいい年だったと言える。FDAによる新薬の承認数は、2016年が22だったのに対し、2017年は46に上った。この数は59の新薬が承認された1996年以降では最も多く、ここ10年間の平均である32を上回っている。新薬開発のコストが26億ドルまで高騰していることを考えると、2017年の承認数はいっそう際立つ。

 

今回の記事では、今年上半期の承認状況をまとめ、昨年の勢いが今年も続いているのかを検討する。

 

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上半期の承認はNMEが16 BLAが8

2018年の上半期、FDAは新規有効成分(NME)を16、生物学的製剤(BLA)を8つ承認した。Decision Resources Groupでは、このうち4つが2025年までにブロックバスターに成長すると予測している。

 

今年7月には6つのNMEが承認されており、FDAは好調だった昨年の承認ペースを維持していることがうかがえる。約50のNMEが承認目前という段階まできており、2018年はその多くが承認され、ブロックバスター候補として相次いで市場に出る年になりそうだ。

 

トランプ政権によってFDAの体制が変わったことが、こうした状況に表れているのかもしれない。FDAは、先発品だけでなく後発品についてもより迅速に患者に提供できるようにすることを計画している。審査期間の短縮に向け、FDAは規制の撤廃や何度かにわたるレビューサイクルの削減、承認プロセスの合理化などに取り組む予定だ。

 

 2018年上半期に承認されたNMEとBLAの表。承認日:1月26日、薬剤名:Lutathera、社名:AAA USA、領域:がん。承認日:2月7日、薬剤名:Biktarvy、社名:Gilead Sciences、領域:抗ウイルス薬。承認日:2月12日、薬剤名:Symdeko、社名:Vertex Pharms、領域:希少疾患。承認日:2月14日、薬剤名:Erleada、社名:Janssen Biotech、領域:がん。承認日:4月17日、薬剤名:Tavalisse、社名:Rigel Pharms、領域:希少疾患。承認日:4月19日、薬剤名:Akynzeo、社名:Helsinn Healthcare、領域:がん。承認日:5月16日、薬剤名:Lucemyra、社名:US Worldmeds、領域:中枢神経系。承認日:5月18日、薬剤名:Lokelma、社名:AstraZeneca、領域:代謝異常。承認日:5月21日、薬剤名:Doptelet、社名:Akarx、領域:血液。承認日:5月31日、薬剤名:Olumiant、社名:Eli Lilly、領域:免疫。承認日:6月13日、薬剤名:Moxidectin、社名:Medicines Development for Global Health、領域:駆虫薬。承認日:6月25日、薬剤名:Zemdri、社名:Achaogen、領域:抗菌薬。承認日:6月25日、薬剤名:Epidiolex、社名:GW Research、領域:CNS。承認日:6月27日、薬剤名:Braftovi、社名:Array Biopharma、領域:がん。承認日:6月27日、薬剤名:Mektovi、社名:Array Biopharma、領域:がん。承認日:5月3日、薬剤名:Andexxa、社名:Portola Pharmaceuticals、領域:血液。

 

2018年上半期に承認されたブロックバスター候補

Biktarvy(bictegravir sodium/emtricitabine/tenofovir alafenamide fumarate)

bictegravir sodium(50mg)とemtricitabine(200mg)、tenofovir alafenamide fumarate(25mg)の3剤配合剤である「Biktavy」の発売は、予想される売り上げ規模としては2018年で最大のものの一つになるだろう。インテグラーゼ阻害剤ベースの3剤配合のレジメンを発売することで、ギリアドはグラクソ・スミスクラインの「Triumeq」と競争できるようになる。

 

Biktarvyは、tenofovir alafenamide fumarateを含有することで、腎や骨関連の長期的な安全性が向上。ブースターを含んでいないため、「Stribild」「Genvoya」よりも安全性の高い選択肢となる。

 

Biktarvyは2018年6月、欧州でも承認を取得した。

 

Erleada(apalutamide)

「Erleada」は非転移性去勢抵抗性前立腺がん(nmCRPC)の治療薬として初めてFDAの承認を取得した。ジョンソン&ジョンソンのブロックバスター「Zytiga」には今後、後発品が登場するが、Erleadaはそれらとの競争を支援し、前立腺がん市場での同社のポジショニングをさらに強固なものにするだろう。ErleadaとZytigaの併用も臨床第3相(P3)試験が行われている。

 

今回の承認は、P3試験「SPARTAN」の結果に基づくものだ。同試験では、Erleadaによって遠隔転移または死亡のリスクが72%低下し、無増悪生存期間(PFS)の中央値が2年あまり延長した。

 

3D rendering pills, white pills scattered on black background. Medicines for treatment. Pharmaceutical preparation, Medical product

 

Olumiant(baricitinib)

2018年5月、FDAがイーライリリーの「Olumiant」(中等症から重症の関節リウマチを対象とした1日1回経口投与のJAK阻害薬)を承認し、同薬の再申請の道のりに終止符を打った。米国では2剤目のJAK阻害剤となったOlumiantは、ファイザーの「Xeljanz」から約6年遅れて承認された。一方、欧州ではOlumiantがXeljanz より1ヶ月早く承認を取得している。

 

Olumiantは、安全性の懸念から米国では1日4mgではなく2mgの投与量で承認された。添付文書には黒枠警告がついており、FDAの懸念は払拭できていない。

 

Decision Resources Groupとしては、JAK阻害薬は関節リウマチの領域で最も市場拡大のスピードが早いクラスと予測している。Olumiantの承認はupadacitinib(アッヴィ)やfilgotinib(ギリアド)にとってもガイドとなるだろう。JAK依存性サイトカインは多くの炎症性疾患や自己免疫疾患に関与しており、JAK阻害薬は今後、適応を広げていく可能性がある。Olumiantの費用は年間約2万5000ドルで、生物学的製剤の「Humira」よりも6割ほど安い。価格の低さも手伝って、Olumiantはブロックバスターになると予想される。

 

Aimovig(erenumab)

「Aimovig」は、月1回70mgまたは140mgの皮下投与により、片頭痛の頻度と治療薬の使用を6ヶ月にわたって有意に低下させ、投与1カ月目から早くもベネフィットが認められた。臨床試験では、突発性片頭痛と慢性片頭痛の両方で有効性を示し、CGRP受容体を阻害する薬剤として唯一、FDAの承認を得た。

 

同薬は専用の自己注射器を使って患者自身で投与することができる。ノバルティスとアムジェンが共同開発しており、米国とカナダ、日本ではアムジェンが、欧州とその他の地域ではノバルティスが販売権を持っている。

 

FDAによる審査・承認の傾向

オーファンドラッグ開発の傾向は続いている。

 

・2018年上半期に承認を得た新薬の38%がオーファンドラッグ。この割合は、2017年が通年で39%、2016年は41%だった。
・予備登録されたNMEのうち20が、1つ以上の適応症に対してオーファンドラッグの指定を受けている。

 

オーファンドラッグの指定を受けた医薬品は高い価格設定が可能になるため、製薬企業は希少疾患をポートフォリオに加えたいと考えている。オーファンドラッグの売り上げは大きく伸び、ほかのすべての領域の医薬品を上回るようになるだろう。従来型のブロックバスターモデルは姿を消しつつあり、価格の高いオーファンドラッグに道を譲っている。

 

製薬企業が希少疾患に目を向けるようになったのは喜ばしいことだ。ただし、こうした薬から患者が受ける恩恵と、価格の高さが財政に与える影響の間で、綱引きがエスカレートしつつある。

 

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優先審査も積極的

有効性や安全性の著しい向上を示した薬について、FDAが優先審査で優遇する状況は続いている。

 

・2017年に引き続き、2018年も多くの医薬品が優先審査の指定を受けている。2018年上半期は、NMEとBLAの42%が優先審査に指定された(2017年は61%、2016年は68%)。標準審査を受けたNMEとBLAはわずか29%にとどまっている。

 

この傾向はがん治療薬にも当てはまる。2018年に承認されたNMEとBLAの25%はがん治療薬で、予備登録薬の25%はがんを対象としたものだ。がん治療薬とスペシャリティ領域の薬剤、そしてオーファンドラッグはホットな分野で、相次ぐ承認によって医療費にも影響するだろう。

 

審査の迅速化は患者に利益をもたらすか

ただし、迅速な承認が業界と患者の双方に利益をもたらすかどうかという点については、議論の余地が残されている。承認数が増えるということは、それだけ医師や薬剤師が知っておくべき薬が増えるということで、リスク・ベネフィットを判断するための負担が増すことになりかねない。また、ハードルを下げて承認を迅速化することで、患者をリスクにさらす恐れもある。

 

とはいえ、審査期間が短縮されれば、多くの薬が臨床現場に届くことになるし、規制のハードルが低くなれば開発のコストも抑えられる。最終的には患者と保険者の利益につながると言えるだろう。後発品メーカーも、FDAがこの姿勢を維持すると見て、それを歓迎している。承認プロセスの迅速化は、企業の負担を軽減し、競争と革新を後押しする。薬の価格が下がって喜ばれることは言うまでもない。

 

(原文公開日:2018年8月9日)

 

【AnswersNews編集長の目】

米FDAが今年上半期に承認した24の新薬のうち、Decision Resources Groupがブロックバスターになると予想するのは4製品。このうち日本で承認されているのはイーライリリーの関節リウマチ治療薬「オルミエント」だけで、残る3剤は開発段階にあります。

 

ギリアドはこれまでJT(日本たばこ産業)と提携して日本で抗HIV薬を展開してきましたが、「Biktavy」については自社で販売する方針です。JTの8月28日の発表によると、ギリアドはBiktavyの承認取得と販売を同社日本法人で行うとJTに通知するとともに、抗HIV薬に関するライセンス契約の解消を提案。両社は提携解消に向けた意思確認書を交わし、今後、協議を行うことになりました。

 

ヤンセンの前立腺がん治療薬「Erleada」は日本で臨床第3相(P3)試験を実施中。片頭痛治療薬「Aimovig」は、アステラス・アムジェン・バイオファーマがP2試験を行っています。

 

この記事は、Decision Resources Groupのアナリストが執筆した英文記事を、AnswersNewsが日本語に翻訳したものです。

 

【記事に関する問い合わせ先】
ディシジョン・リソーシズ・グループ(担当:斎藤)
E-mail:ssaito@teamdrg.com
Tell:03-5401-2615

 

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