協和発酵キリンは10月6日、開発中の抗がん剤チバンチニブ(開発コード・ARQ197)の開発中止を決めたと発表した。肝細胞がんなど複数のがん種を対象に臨床試験を行ってきたが、いずれも有効性を示せなかった。
チバンチニブは米アーキュール社が創製したc-Met阻害薬と呼ばれる新規作用機序を持つ低分子化合物。c-Metは受容体型チロシンキナーゼの略。c-Met受容体のチロシンキナーゼの異常な亢進は、がん細胞の増殖・生存・血管新生・浸潤・転移などさまざまな細胞内シグナル伝達に関与することが知られており、c-Metを阻害することでがんの増殖を抑えられると期待されていた。
協和発酵キリンは2007年4月、アーキュールとライセンス契約を結び、チバンチニブの日本とアジアの一部地域(中国、韓国、台湾)での独占的開発・販売権を取得した。胃がんと非小細胞肺がん、肝細胞がんを対象に臨床試験を行ってきたが、今年3月には肝細胞がんを対象とした国内臨床第3相(P3)試験で主要評価項目の無増悪生存期間(PFS)を延長できなかったと発表。胃がんや肺がんでの開発も失敗した。
協和キリンが権利を持つ国と地域を除く全世界では第一三共が開発・販売権を持っているが、今年2月には肝細胞がんを対象とした臨床第3相試験で主要評価項目である全生存期間(OS)を延長できなかったと発表。非小細胞肺がんや大腸がんでの開発も失敗に終わっている。