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膀胱がんに「サイラムザ+ドセタキセル」新たな併用療法の可能性―免疫チェックポイント阻害薬との競合は?|DRG海外レポート

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米国に本社を置くコンサルティング企業Decision Resources Groupのアナリストが、海外の新薬開発や医薬品市場の動向を解説する「DRG海外レポート」。今回は、膀胱がんに対する「サイラムザ」とドセタキセルの併用療法を取り上げます。欧州臨床腫瘍学会で発表された臨床第3相試験の結果をもとに、免疫チェックポイント阻害薬との競合を含め、今後の治療での位置付けを探りました。

 

(この記事は、Decision Resources Groupのアナリストが執筆した英文記事を、AnswersNewsが日本語に翻訳したものです。本記事の内容および解釈については英語の原文が優先します。正確な内容については原文を参照してください。原文はこちら

 

米リリー 18年半ばのOS最終結果を待って申請か

米イーライリリーの「サイラムザ」(一般名・ラムシルマブ)とドセタキセルの併用療法を評価した臨床第3相(P3)試験「RANGE」の有望な結果により、プラチナ製剤抵抗性の進行または転移性膀胱がんに新たな治療選択肢がもたらされる。

 

RANGE試験は、膀胱がんに対する血管新生阻害剤の治療ベネフィットを示した世界初のP3試験。プラチナ療法後の患者で化学療法よりも優れた無増悪生存期間(PFS)を示した治療は、これが初めてだ。

 

Bladder Cancer text, stethoscope lying down on the cumputer keyboard

 

ラムシルマブ上乗せ PFSを1.3カ月延長

ESMO2017(欧州臨床腫瘍学会)のPresidential SymposiumⅡで、Daniel Petrylak氏(米イェール大医学大学院、同大がんセンター)は、「サイラムザ」とドセタキセルの併用群は、プラセボ+ドセタキセル群に比べてPFSが有意に改善したことを示すデータを発表した(4.1カ月vs.2.8カ月)。病勢進行のリスクは24%低下したことになる。

 

PFSを1.3カ月改善したことに臨床的意義があるかは議論の余地がある。ただ、この試験が、PFS、OS(全生存期間)、PRR(全奏効率)の検討にゲートキーパー法を採用したことは注目すべきだ。これは、PFSが統計的に有意となってはじめて、OSの解析が行わることを意味する。

 

主要評価項目のPFSを達成したにもかかわらず、イーライリリーは今年初め「おそらく、OSの結果は世界中の規制当局から提出を求められることになるだろう」とコメント。あわせて、最終的なOSの結果は2018年半ばになると発表した。同じ適応ですでに5つの免疫チェックポイント阻害薬が承認されていることを考えると、市場投入が遅れることでサイラムザの同適応での販売は伸び悩むかもしれない。

 

免疫チェックポイント阻害薬が有利か

RANGE試験の結果が発表されたセッションでは、討論の参加したYohann Loriot氏(パリ・サクレー大、ギュスターヴ・ルシー研究所)が「RANGE試験は、進行または転移性の膀胱がんの標準治療に影響を及ぼすのだろうか?」と問いかけた。複数の免疫チェックポイント阻害薬(抗PD-1抗体/抗PD-L1抗体)が承認されたことで、進行膀胱がんの治療アルゴリズムは変化している。少なくとも、プラチナ療法後の患者では、サイラムザ+ドセタキセルの治療が浸透するのは難しいのが現状だ

 

発表されたデータによると、ドセタキセルにサイラムザを上乗せしても、毒性が著しく上昇することはなかった。しかし、このレジメンの安全性プロファイルは、抗PD-1抗体/抗PD-L1抗体単剤療法に比べて明らかに劣っている。

 

サイラムザ+ドセタキセルと「キイトルーダ」(ペムブロリズマブ、この適応でP3試験のデータがある唯一の免疫チェックポイント阻害薬)とで臨床データを比較すると、PFSやQOLでキイトルーダが優れており、サイラムザ+ドセタキセルよりも抗PD-1抗体/抗PD-L1抗体のほうが好まれるかもしれない

 

blue and dark science abstract as background

 

免疫チェックポイント阻害薬後の選択肢に

ただ、抗PD-1抗体/抗PD-L1抗体がすべての患者に使えるわけではなく、投与しても奏効しない患者もいる(プラチナ製剤抵抗性患者のORRは15~20%)。

 

RANGE試験が、過去に免疫チェックポイント阻害薬の単剤療法を受けた患者(プラチナレジメン終了後24カ月以内)を組み入れたことは重要だ。プラチナ製剤抵抗性、特に免疫チェックポイント阻害薬後に進行した膀胱がんに対する治療選択肢は非常に限られている。サイラムザ+ドセタキセルは、プラチナレジメン後、免疫チェックポイント阻害薬後の3番目あるいはそれ以降の選択肢となるだろう

 

われわれのサイラムザに関する予測は、こうしたデータと臨床推論に基づいている。標準治療にとってかわるものではないが、サイラムザ+ドセタキセルは新たな治療選択肢を提供し、進行または転移性膀胱がんに対する治療の優先順位付けに影響を及ぼすだろう。

 

(原文公開日:2017年9月15日)

 

【AnswersNews編集長の目】

現在、日本では胃がんと直腸・結腸がん、非小細胞肺がんの適応で承認されている血管新生阻害薬「サイラムザ」。2016年の国内売上高は薬価ベースで289億円(前年比314.2億円)と急速に売り上げを伸ばしています。肝細胞がんと膀胱がんで適応拡大に向けた試験が行われており、ESMO2017で結果が発表された「RANGE試験」には日本も参加しています。

 

一方、膀胱がんに対する免疫チェックポイント阻害薬の開発状況を見てみると、MSDの「キイトルーダ」が今年4月に適応拡大を申請。小野薬品工業の「オプジーボ」とメルクセローノとファイザーの「バベンチオ」、中外製薬のアテゾリズマブ、アストラゼネカのデュルバルマブ/トレメリムマブはいずれもP3の段階にあります。このうちアテゾリズマブは17年中の申請を予定していることを明らかにしています。

 

記事では免疫チェックポイント阻害薬が先行し、ラムシルマブが割って入る余地はさほど大きくないとされていますが、日本ではどうなるでしょうか?

 

この記事は、Decision Resources Groupのアナリストが執筆した英文記事を、AnswersNewsが日本語に翻訳したものです。Decision Resources Groupは、切除不能な局所進行・転移性尿路上皮がんに対してドセタキセルと併用するサイラムザの今後10年の売上予測を含むレポート(Bladder Cancer Disease Landscape & Forecast)を11月末に発行予定です。レポートに関する問い合わせはこちら

 

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