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「CAR-T療法」世界初承認で高まる関心…日本企業でも開発に動き―武田も参戦、タカラバイオは20年の承認目指す

更新日

8月に米FDAが世界で初めて承認し、注目を集める「CAR-T細胞療法」。開発は海外が先行していましたが、ここにきて日本企業にも動きが出てきました。

 

今年1月に米国企業から新薬候補の権利を獲得した第一三共に続き、武田薬品工業がバイオベンチャーと提携を結んで開発に参入。タカラバイオはすでに臨床試験を始めており、2020年度の承認取得を目指しています。

 

武田がベンチャーと提携 固形がん向けに開発

「がん領域で世界トップ10」を目指す国内製薬最大手が、ついにCAR-T細胞療法の開発に名乗りを上げました。

 

武田薬品工業は9月4日、がん免疫療法を開発するノイルイミューン・バイオテック(東京都中央区)と、CAR-T細胞療法の研究開発で提携契約を結んだと発表しました。ノイルイミューンは国立がん研究センター・山口大発のバイオベンチャー。同大の玉田耕治教授が開発した技術を活用し、開発がほとんどなされていない固形がんに有効なCAR-T細胞治療の共同研究を行います。

 

CAR-T細胞(キメラ抗原受容体発現T細胞)療法は、患者から採取したT細胞(免疫細胞の一種)に、がん細胞表面の抗原を標的として認識するよう遺伝子改変を加え、再び患者の体内に戻す治療法。免疫細胞ががんを攻撃しやすい状態にすることで、高い抗腫瘍効果を発揮します。

 

CAR-T細胞療法の仕組み。1、患者からT細胞を採取。2、採取したT細胞の遺伝子を改変。3、改変し、がん細胞を認識するアンテナを得たCAR-T細胞を体内に戻す

 

 CAR-T細胞療法は現在、白血病やリンパ腫など血液がんが開発の中心。固形がんに対しては腫瘍局所での集積や生存・増殖など課題が多く、開発はほとんど進んでいません。

 

ノイルイミューンが基盤とする技術は、CAR-T細胞にサイトカインやケモカインを産生する機構を持たせることで、CAR-T細胞の増殖と生存能力を高め、固形がんの局所に集積しやすくしたものです。同社の石崎秀信社長は「この技術は、固形がんに対する革新的な治療法開発のための基盤技術だ」とコメント。CAR-T細胞療法の開発は海外勢が先行していますが、武田は固形がんを対象とすることでプレゼンスを築く考えです。

 

第一三共は米社と タカラバイオは治験開始

CAR-T細胞療法をめぐっては、スイス・ノバルティスの「キムリア」が8月30日に世界で初めて米国で承認を取得。これに先立つ同28日、米ギリアド・サイエンシズは、ノバルティスと世界初承認を競っていたベンチャーの米カイト・ファーマを119億ドル(1ドル=110円換算で約1兆3000億円)で買収すると発表しました。カイト社も昨年12月にCAR-T細胞療法を米国で申請済み。米FDA(食品医薬品局)は今年11月29日までに承認の可否を判断することになっています。

 

第一三共は今年1月、そのカイト社と、米国申請中の「KTE-C19」の日本での独占的開発・製造・販売権を獲得する契約を締結。あわせて、そのほかの開発品目の導入オプション権も取得しました。国内では、第一三共がカイト社から技術移管を受けて製品の製造を行うことになっています。

 

一方、日本企業が開発するCAR-T細胞療法で唯一、臨床試験に入っているのが、タカラバイオの「TBI-1501」。今年、再発・難治性のCD19陽性B細胞性急性リンパ芽球性白血病を対象とした臨床第1/2相試験を、自治医科大など6施設で始めました。試験は2020年3月まで続く予定で、同社は20年度中の申請・承認取得を目標としています。小児を対象とした臨床試験も計画中です。

 

CAR-T細胞療法の開発をめぐる日本企業の動き。第一三共:米カイト・ファーマから「KTE-C19」の日本での独占的開発・製造・販売権などを獲得する契約を締結。タカラバイオ:再発・難治性のCD19陽性B細胞急性リンパ芽球性白血病を対象とする「TBI-1501」のP1/2試験を開始。武田製薬:ノイルイ」ミューン・バイオテックと研究開発で提携契約を締結。

 

開発は海外先行

日本でも動きが活発化してきたCAR-T細胞療法ですが、開発は海外が先行しています。

 

米国の国立衛生研究所(NIH)が運営している臨床試験データベース「ClinicalTrials.gov」で「CAR-T」と検索すしてヒットした臨床試験は、開始前あるいは中断・終了したものを除いて246件(2017年9月8日時点)。国・地域別に見ると、最も多いのは中国(113件)で、米国(94件)、欧州(32件)と続き、日本はわずか2件にとどまります。現在、国内で臨床試験が行われているのは、米国で承認を取得したノバルティスの「CTL019」(キムリア)と、タカラバイオの「TBI-1501」の2品目だけです。

 

「CAR-T」で検索するとヒットする臨床試験の国別件数

 

米国では1回5000万円超 避けられぬ費用の議論

スイス・ノバルティスの発表によると、小児・若年成人の再発・難治性B細胞性急性リンパ芽球性白血病を対象に行われたP2試験「ELIANA」では、解析対象となった63人の83%が、3カ月以内に完全寛解または血球数回復が不十分な完全寛解を達成したといい、次世代のがん治療として高い期待が寄せられています。

 

一方、ネックとなるのはやはり価格です。ノバルティスは「キムリア」1回投与あたりの価格を47万5000ドル(1ドル=110円換算で5225万円)に設定。一方で、投与1カ月以内に治療に反応のあった患者だけに支払いを求めることでノバルティスと米政府は合意しました。

 

日本でも2020年前後に臨床現場で使えるようになる見通しですが、高額な費用をめぐる議論は避けられません。

 

【AnswersNews編集部が製薬会社を分析!】

武田薬品工業

 

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AnswersNews編集部が製薬企業をレポート

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