医薬品開発受託の市場拡大が止まりません。
日本CRO協会が先月発表した2016年の年次業績報告によると、協会会員企業の総売上高は1723億円で前年から12.7%増加。17年は1957億円と2000億円規模に達する見通しです。
国際共同治験の受託が増えているのに加え、がん領域のプロジェクトが飛躍的に増加。高まるニーズを背景に、各社とも人員の拡大を急ピッチで進めています。
市場規模3年で26%増加
日本CRO協会が3月30日に発表した2016年(1~12月)の年次業績報告によると、同年の協会会員企業26社の総売上高は1723億円で、前年から12.7%増加しました。13年(1368億円)と比べるとこの3年で市場は25.9%成長。17年は1957億円と16年から13.6%増えると予測しており、市場拡大に一層拍車がかかります。
会員企業の総売上高のほとんどを占めるのが、医薬品の開発関連業務。16年は1588億円(前年比12.1%増)で全体の92.2%を占めました。13年と比べると医薬品開発関連業務の売上高は32.2%増加。最近は医療機器の開発関連業務も増えており、16年は34億円(17.7%増)となりました。全体に占める割合は2%に過ぎませんが、過去3年で29.3%増と大きく伸びています。
伸びる「国際共同治験」「がん」
開発のスピードアップとコストダウン、開発品目の多様性や専門性の高まり――。新薬創出の難易度が上がり、開発競争が激化する中、拡大するニーズがCRO業界の成長を支えています。開発環境が好転するとは考えにくく、アウトソーシングの需要はさらに高まっていくと予想されます。
中でも近年特に伸びているのが、国際共同治験の受託。日本CRO協会の年次報告書によると、2016年に会員企業が受託した医薬品のモニタリングプロジェクト761件のうち、国際共同治験は242件と全プロジェクトの31.8%を占めました。モニタリングプロジェクト全体に占める国際共同治験の割合は、14年が21.7%、15年が27.4%、16年が31.8%と増え続けています。
開発の効率化や日本の治験環境の国際化などを背景に、製薬企業が国際共同治験を行うケースは増えています。CROの受託件数もそれに伴って増えており、外資系のCROはもちろん、内資系でも大手などでアジアを中心に国際共同治験を受託できる体制を整えています。
もう1つ、CROの成長を支えているのが、がん領域のプロジェクトの飛躍的な増加です。5年前の2011年は120件余りでしたが、16年にはモニタリングプロジェクト全体の4分の1にあたる200件に迫る勢い。循環器官やアレルギーといった領域も増えているほか、中枢神経系や糖尿病などの代謝性医薬品のプロジェクト数も比較的高い水準を保っています。
人員拡大 急ピッチ
高まる需要を背景に、CRO各社は人員の拡充を急ピッチで進めています。2016年に1万5000人を超えた日本CRO協会会員企業の従業員数は、17年には1万7359人に達する見通し。新卒採用は増加分の半数程度で、中途採用も活発です。
最も人数の多い職種は、モニタリングに従事するCRA(臨床開発モニター)。6527人で全体の41.7%を占めました。CRAの人数は2013年からの3年間で1600人以上増加。市販後の安全対策に関わるGVP関連(PV)の業務にあたる従業員も大きく増えています。
進む集約化 外資も攻勢
市場拡大の一方で、進んでいるのが大手CROへの集約化です。
シミックホールディングスは2011~15年にかけて、スギメディカルリサーチや日本アルトマークのCRO事業など複数のCROを相次いで傘下に収めました。エムスリーもMICメディカルを2012年に、メディサイエンスプラニングを14年に、ぞれぞれ子会社化。イーピーエスホールディングスも同じ年に日揮ファーマサービスを子会社化しました。大手によるM&Aを通じた中小CROの淘汰が進んでいます。
外資系CROも攻勢をかけています。米PRAヘルスサイエンシズは今年6月、武田薬品工業と合弁会社を設立して同社の治験関連業務の一部を引き継ぐ予定。米PPDは15年、新日本科学の臨床開発部門と合弁会社を設立して日本市場に参入しました。クインタイルズ・トランスナショナル・ジャパンは14年、アストラゼネカの日本法人と包括的なパートナー業務契約を結び、共同開発チームを立ち上げています。
治験の大型化や国際化、治験業務や申請データの電子化を背景に、CROのみならずIT企業も巻き込んだ企業間提携も活発です。成長市場をめぐり、激しい主導権争いが続きそうです。