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ニュース解説

普及進む後発医薬品、領域ごとの使用割合は?

更新日

医療費抑制の切り札の1つとして、国が使用を推進する後発医薬品。強力な政策的後押しもあり、急速に普及しています。

 

一方、疾患や製剤の特性によって後発品に切り替わりにくい領域があることも指摘されています。使用状況を詳しく見てみると、ほぼ全て後発品に切り替わっている領域もあれば、3割ほどにとどまる領域があるなど、使用割合は領域によってバラつきがあります。

 

 

領域で大きなバラつき 「外用薬」「抗がん剤」など使用割合低く

厚生労働省が先月発表した2015年度の「調剤医療費の動向」によると、薬局で調剤(院外処方)された医薬品(長期収載品+後発医薬品)に占める後発品の数量ベースの割合は60.1%。14年度(56.4%)に比べて3.7ポイント、13年度(47.9%)からは12.1ポイント上昇しました。月ごとに見てみると、14年度はじめの14年4月に53.8%だった使用割合は、15年末の16年3月には63.1%まで高まっています。

 

国は昨年、従来「17年度末に数量ベースで60%」としていた後発品の使用目標を、「17年半ばまでに70%、18~20年度のなるべく早期に80%」に引き上げました。薬局や医療機関への報酬上のインセンティブを引き上げ、使用を強力に後押ししています。

 

下のグラフは「調剤医療費の動向」から、14年4月と16年3月の後発品使用割合を薬効分類(大分類)別に見たものです。

 

薬効分類(大分類)別の後発医薬品使用割合

 

16年3月時点で最も後発品の使用割合が高かったのは「ビタミン剤」(92.0%)で、次いで抗血栓薬などの「血液・体液用薬」(78.4%)、消化性潰瘍薬や整腸剤などの「消化器官用薬」(76.3%)、気管支拡張薬や去痰剤などの「呼吸器官用薬」(66.1%)、栄養剤などの「滋養強壮薬」(64.5%)と続きます。

 

逆に、最も使用割合が低かったのが、貼付剤や軟膏剤などの「外皮用薬」(33.6%)。「腫瘍用薬」(45.5%)や合成抗菌薬や抗ウイルス薬などの「化学療法剤」(46.3%)、点眼薬などの「感覚器官用薬」(48.4%)なども低くなっています。

 

貼付剤や軟膏剤、点眼薬は「貼り心地」「塗り心地」「差し心地」の面から、後発品に切り替わりにくい領域とされています。実際、貼付型消炎鎮痛剤「モーラステープ/モーラスパップ」は、後発品が参入した今も高い市場シェアを維持しています。

 

抗がん剤は主に副作用の面から後発品への切り替えに慎重な医師が多いと言われますし、患者が薬を変えることを嫌がる傾向のあるとされる中枢神経系用薬も使用割合は55.1%と比較的低い部類に入ります。

 

「高血圧」「中枢」「アレルギー」など大型品参入の領域で伸び

領域別の使用割合をもう少し詳しく見てみましょう。下の表は、薬効分類(中分類)別の後発品使用割合を、14年4月から16年3月までの伸びが大きい順に並べたものです。

 

薬効分類(中分類)別の後発品使用割合

最も伸びが大きかったのは、大分類では滋養強壮薬に分類される「無機質製剤」。2年間で使用割合は17.3ポイント上昇しました。次いで大きく伸びたのは、ARBやカルシウム拮抗薬、ACE阻害薬などの「血圧降下剤」(15.2ポイント増)。以下、認知症治療薬などの「その他中枢神経系用薬」(15.1ポイント増)、多くの第2世代抗ヒスタミン薬などを含む「その他のアレルギー用薬」(13.6ポイント増)など、ここ数年で大型製品に後発品が参入した領域が続きます。

 

逆に、使用割合の伸びが最も小さかったのは「合成抗菌剤」。9.3ポイント減少しました。

 

後発品の数量ベースの使用割合は、後発品のある先発品(長期収載品)と後発品の合計を分母として算出しています。このため、特に大型品が長期収載品になった場合、分母だけが一気に膨れ、使用割合が一時的に大きく下がる、といったことが起こります。

 

合成抗菌薬の後発品使用割合を月別に見ると、14年12月には66.3%だったのが、翌15年1月には49.1%までダウンしています。これは、14年12月に「クラビット」(レボフロキサシン)の高用量製剤に後発品が発売されたことが影響していると考えられます。

 

使用割合が100%を維持して伸び率が0の薬効を除くと、合成抗菌剤に次いで伸び率が小さかったのが抗がん剤の「代謝拮抗剤」(0.1ポイント増)。「止しゃ剤、整腸剤」(1.1ポイント増)や「糖尿病用剤」(1.2ポイント増)なども伸びは小幅です。「止しゃ剤、整腸剤」はもともと使用割合が高いため伸びの余地が小さく、「糖尿病用剤」は15年6月にビグアナイド系薬の「メトグルコ」(メトホルミン)に後発品が参入し、合成抗菌剤と同じ理由で使用割合が一時的に大きく減りました。

 

入院では抗がん剤が伸びる

ここまでは「調剤医療費の動向」をもとに薬局調剤分の後発品使用割合について見てきましたが、入院や院内処方の状況はどうでしょうか。

 

下の表は、厚労省が毎年発表している「社会医療診療行為別統計」から薬効分類別の後発品使用割合を入院/院内処方(入院外)/院外処方(薬局調剤)に分けて見たものです。この統計は、毎年6月に審査したレセプトを対象としたもので、レセプトに記載された薬剤の点数にしめる後発品の点数を算出したものです。これまで見てきた数量ベースの使用割合ではなく、点数(薬剤料)ベースの使用割合になります。

 

後発医薬品の薬効分類別点数の割合(%)

 

14年と15年を比べると、入院では「血液・体液用薬」「抗生物質」「中枢神経系用薬」が上位を占めますが、使用割合はほぼ横ばい。一方、腫瘍用薬は1.8ポイント伸びました。後発品に切り替わりにくいとされてきた抗がん剤ですが、DPC病院の収入を左右する「機能評価係数II」に後発品の使用割合が組み込まれたこともあり、入院では使用割合が伸びています。

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