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サンバイオ「アクーゴ」発売目前、製造・供給への自信アピール…委託先の施設公開

更新日

前田雄樹

「アクーゴ」出荷へ意欲を語るサンバイオの森敬太社長

 

外傷性脳損傷に対する細胞医薬品「アクーゴ」について、出荷制限の解除に向けた承認申請を行ったサンバイオ。昨年7月の条件・期限付き承認から1年が経とうとする中、ようやく販売開始が近づいてきました。6月19日には製造委託先の施設をメディアに公開し、製造と供給への自信をアピールしました。

 

7月までに出荷制限解除想定

アクーゴを受託製造するのは、再生医療CDMOミナリスアドバンストセラピーズ(横浜市)。6月19日のメディア向け説明会では、細胞を加工・培養するクリーンルームや、製品を凍結して保管する設備などが公開されました。サンバイオの森敬太社長は「ここで製造したものが日本中、世界中に届けられる」とし、ミナリスの坂東博人社長は「世界初と言われる脳の再生医療を、まずは日本向けに着実に商用製造し、さらにはグローバルに届ける」と意欲を語りました。

 

細胞を加工・培養するクリーンルームの様子(横浜市のミナリスの施設)

 

アクーゴは健康成人の骨髄由来の間葉系間質細胞を加工・培養して作る細胞医薬品で、2024年7月に「外傷性脳損傷に伴う慢性期の運動麻痺の改善」を対象に条件・期限付き承認を取得。ただ、申請後に製法を変更したため、審査の過程では市販品と治験製品との同等性/同質性が確認できず、承認に際しては「同等性/同質性を評価し、必要な一部変更承認申請が承認されるまで出荷を行わない」との条件が付けられました。

 

サンバイオは承認後、2回の市販品製造を通じて同等性/同質性を評価するとしていましたが、1回目の製造は基準を満たせず、出荷制限解除の想定時期を3カ月先送り。2回目、3回目の製造は基準に適合し、これを受けてサンバイオは今月12日に出荷制限解除に向けた承認申請を行いました。申請が承認されれば、承認条件の1つである出荷制限に関する内容が変更され、出荷が可能な状態となる見通し。同社は7月までに出荷が可能になると想定しています。

 

加工・培養した細胞を入れる「バイアル」(横浜市のミナリスの施設)

 

「確実に作れる自信ある」

サンバイオとミナリスは2018年からアクーゴの商業化に向けたプロジェクトを進めてきました。サンバイオは同年11月にアクーゴの治験成功を発表。翌年4月には画期的新薬を迅速に承認する「先駆け審査指定制度」の対象品目に指定され、早期承認への期待が高まりましたが、製造面の課題によって申請や承認に時間を要した経緯があります。

 

関連記事:サンバイオの「アクーゴ」審査報告書で明らかになった「異例の承認遅れ」の背景

 

森氏は「再生医療は一にも二にも製造。かなり大変な道のりだったが、ミナリスと苦労しながら作り込んできた安定供給は非常に大きな財産だ」とし、「日本での外傷性脳損傷での発売については十分な体制を敷くことができた」と強調。坂東氏も「確実に作ることができるという自信がある」と語りました。

 

製造した細胞医薬品を液体窒素で凍結し、マイナス150度以下で保管する設備。1つのタンクで1万本のバイアルが保管できる(横浜市のミナリスの施設)

 

サンバイオによると、アクーゴの対象となる慢性期外傷性脳損傷の国内患者数は約6万人。発売後は、治験を行った5つの医療機関を中心に投与を始め、将来的には投与施設を100程度まで広げていく考えです。

 

日本での承認取得に経営資源を集中させるため23年夏から中断していた米国事業も再始動。慢性期脳梗塞での最終治験実施に向けて米FDA(食品医薬品局)と協議を進めています。過去に治験に失敗した脳梗塞への再チャレンジも準備しており、「4~5年後には日米で1000万人を超える患者に届けられるようになる」(森氏)。今年1月には、適応拡大や米国展開を見据えて供給の安定化・複線化を図るためにJCRファーマとも製造委受託契約を結びました。

 

森氏は「国内販売でノウハウやデータの蓄積し、それを生かして米国市場と脳梗塞にチャレンジする。横浜での製造・安定供給も強みに、再生医療分野のグローバルリーダーを目指す」と話しました。

 

 

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