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ブリストル、主力品特許切れでも「2032年に売り上げ倍増」強気目標の裏に新製品候補への自信

更新日

前田雄樹

ブリストル・マイヤーズスクイブは、2032年に日本の売上高を23年比で2倍にすることを目指しています。がん免疫療法薬「オプジーボ」や抗凝固薬「エリキュース」といった主力の大型製品が特許切れを控えるものの、新製品の投入で高成長を実現したい考え。今年1月に就任した勝間英仁社長は「今後5年で15以上の承認取得を見込んでいる。32年には売り上げの80%を新製品で構成したい」と話します。

 

 

成長目標「絵空事ではない」

「2023年から32年の10年間で売り上げを2倍にする。絵空事ではなく、非常に明確かつ具体的な長期戦略だ」。3月19日、就任後初の会見を開いたブリストルの勝間社長は日本事業の今後の成長についてこう語りました。同社の23年の日本の売上高は2066億円で、32年には4000億円を超える規模を目指すことになります。

 

現在、ブリストルの収益を支えているのは、抗凝固薬「エリキュース」、がん免疫療法薬「オプジーボ」「ヤーボイ」といった製品。グローバルではこれら3製品が売り上げの52%を占めます。

 

ただ、これらの製品は特許切れが近付いており、日本では最短でエリキュースが26年、オプジーボが31年に独占期間の満了を迎える見込み。グローバル全体の24年の売上高は483億ドル(約7.2兆円)で前年比7%増と好調でしたが、勝間氏は「ブロックバスターのエリキュースやオプジーボの独占期間満了を控えており、今後は同じように成長が見込めるわけではない。ブリストルはグローバル全体で次のステージに向かうための大きな局面を迎えている」と話しました。

 

5年で15以上の承認取得見込む

そうした中で掲げた高い成長目標の裏には、開発パイプラインへの自信があります。同社は昨年、▽骨髄異形成症候群に伴う貧血の治療薬「レブロジル」(一般名・ルスパテルセプト)▽肺がん治療薬「オータイロ」(レボトレクチニブ)▽潰瘍性大腸炎治療薬「ゼポジア」(オザニモド)――の3つの新薬の承認を取得。今後5年間で新たに15以上の承認取得を見込んでいるといい、32年には売り上げの8割を新製品で稼ぐ考えです。

 

同社は昨年7月に閉塞性肥大型心筋症治療薬マバカムテンを申請。臨床第3相(P3)試験の段階には、多発性骨髄腫治療薬のiberdomideやmezigdomide、リンパ腫治療薬のgolcadomideといった新薬候補が控えています。昨年米国で承認を取得した新規作用機序の統合失調症治療薬xanomeline-trospium(米国製品名・Cobenfy)も国内でP3試験を進めており、近い将来、中枢神経系領域にも進出していくことになります。

 

【ブリストル 国内の主な開発パイプライン(P3以降)】〈開発コード・一般名/対象疾患/開発段階〉BMS-986427・mavacamten/閉塞性肥大型心筋症/申請mavacamten/非閉塞性肥大型心筋症/P3|BMS-986213・relatlimab/nivolumab/結腸・直腸がん/P3/非扁平上皮非小細胞肺がん/P3|CC-220・iberdomide/多発性骨髄腫/P3/CC-92480/多発性骨髄腫/P3|BMS-986369・golcadomide/大細胞型B細胞リンパ腫/P3|BMS-986278/―/進行性肺線維症/P3|特発性肺線維症/P3|CC-93538/好酸球性食道炎/P3/センダキマブ/好酸球性胃腸炎/P3|―/xanomeline-trospium/統合失調症/P3/アルツハイマー病に伴う精神病/P3|※ブリストル・マイヤーズスクイブのホームページをもとに作成

 

日本に100億円の追加投資

既存製品の販売拡大にも力を入れます。注力するのは、▽CAR-T細胞療法「ブレヤンジ」(21年5月発売)▽レブロジル(24年5月発売)▽乾癬治療薬「ソーティクツ」(22年11月発売)▽オプジーボとヤーボイをはじめとするがん領域――。勝間氏は「ソーティクツは発売から1年半というスピードで乾癬治療でリーディングポジションを確立した」とし、ブレヤンジは全国で投与できる環境を整えたと話しました。

 

特許切れが近づくオプジーボについては「今年も適応追加を予定しているし、長期成長戦略の柱の1つと考えている」と強調。「屋台骨としての側面と成長ドライバーとしての側面のバランスをとっていく必要がある。標準治療として医師に理解されている適応もあり、そうしたところではわれわれの役割は大きくはない」とし、オプジーボという1つの製品の中でもリソースの配分が重要になってくるとの考えを示しました。

 

今年1月に就任したブリストル日本法人の勝間英仁社長。イーライリリー日本法人のオンコロジー事業本部長や人事本部長、米リリー台湾法人のゼネラルマネージャーなどを歴任し、24年9月にブリストルに入社した

 

注力製品や新製品の売り上げ拡大に向けては、24年にコマーシャル組織の体制を変更。ブランドリード(ブランド責任者)の配下にマーケティング、デジタル、データ分析、薬価、渉外といったチームを間接的に配置し、部門横断的に製品をマネジメントする仕組みを構築しました。外部環境や顧客志向の変化に機動的・効率的に対応するのが狙いだといいます。

 

米ブリストルは今年1月、日本と中国を含むアジア太平洋(APAC)地域の組織を新設。「グローバルの長期戦略で重要になるのが、米国以外での成長の加速。日本には高い期待が寄せられている」(勝間氏)といいます。勝間氏は、米国本社が昨年、日本に約100億円の追加投資を行ったことを明らかにし、「高い成長目標を達成して継続的な投資を呼び込みたい」と話しました。

 

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