機運が高まる後発医薬品業界の再編で、投資ファンドのジェイ・ウィル・パートナーズ(JWP)と医薬品卸のメディパルホールディングス(HD)の連合が存在感を示しています。武田テバは今月6日、両社が共同出資する新会社の傘下に入ると発表。JWP・メディパルHD連合が後発品メーカーを傘下に収めるのは、日医工、共和薬品工業に続いて3社目です。
メディパルHD「安定供給体制をより発展」
「業界再編を後押しする機運が高まる中、武田テバへの出資を通じてこれまでの出資先との取り組みをさらに前進させ、必要な患者に品質の確保された後発品を安定的に届けられる体制をより発展させることを目指す」
メディパルHDは12月6日、JWPが武田テバ買収のために設立した新会社ジェイ・ケイ・アイ(JKI)への出資を発表したプレスリリースで、後発品業界再編への関与についてこう意気込みました。メディパルHDはJKIに20%を出資する予定です。
武田テバは、イスラエルのテバファーマスーティカル・インダストリーズと武田薬品工業の合弁会社として2016年4月に設立。株式の51%をテバが、49%を武田薬品が保有し、後発品と武田薬品から承継した長期収載品を取り扱っています。
今回、テバは武田薬品が保有する武田テバの株式をすべて買い取り、自社の保有分とあわせた全株式を来年4月1日までにJKIに売却。テバは売却総額を明らかにしていませんが、武田薬品は自社保有分の譲渡に伴って約550億円をテバから受け取る見込みだとしています。
テバは今年5月の決算会見で、武田テバ事業の売却を検討していることを明らかにしていました。同社は「売却は成長への転換戦略に沿ったもの。日本で革新的な医薬品事業に注力できるようになる」とコメント。武田薬品は「持続的成長を見据えた事業戦略を慎重に検討した結果」としています。
日医工、共和薬品に続き
JWPとメディパルHDは2023年、当時、品質問題や米国事業の不振で経営危機に陥っていた日医工を、共同出資するジェイ・エス・ディーを通じて傘下に収めました。さらに今年3月には、同じく共同出資するジェイ・イー・エイチが共和薬品工業の全株式を取得して子会社化。今回の武田テバを加え、JWP・メディパルHD連合は3つの後発品メーカーを傘下に置くことになります。
メディパルHDは先に出資した日医工と共和薬品について「品質システムの継続的な改善を行い、計画生産などの取り組みを通じて、安定的かつ効率的に後発品を患者に届けるための生産流通モデルを構築してきた」と強調。2社は将来的な再編も視野に製造などで協業し、品目の集約などを進めていく方針とされ、そうした動きに武田テバも加わることになります。
武田テバによると、売却後も全従業員の雇用は継続し、武田薬品が流通を担っている製品は今後も同社の流通を通じて供給します。武田テバは「売却の移行期間中も新体制下でも、確かな品質の医薬品の安定した供給に尽力する」としています。
厚生労働省の「後発医薬品の安定供給等の実現に向けた産業構造のあり方に関する検討会」は今年5月、5年程度の集中改革期間を設定した上で企業間の連携・協力や統合を検討すべきなどとする報告書を公表。7月には当時の武見敬三厚生労働相が「1成分あたり(の後発品供給社数は)5社程度が理想」と発言するなど、再編への圧力が高まっています。
MeijiSeikaファルマは7月の事業説明会で「コンソーシアム構想」を提唱しましたが、その後、表立った動きはまだ見えません。サワイグループHDも6月の中期経営計画説明会で、自社工場を活用して他社から生産を請け負う考えを表明。しかし、11月の決算説明会では、具体的に検討した結果、引き受けられる品目がなかったとして検討を中断していると明かしました。
再編への動きが必ずしも活発とは言えない状況の中、JWP・メディパル連合と傘下の3社がどんな動きを見せてくるのか注目されます。