モニターに映し出された心臓の3次元画像(独ハイデルベルグ大学病院のクラウス・ツィラ総合計算心臓学研究所で2018年8月撮影、ロイター)
[ロイター]米ブリッジバイオが開発したトランスサイレチン型心アミロイドーシス(ATTR-CM)治療薬が米国で承認された。米ファイザーのヒット薬「ビンダケル/ビンマック(海外製品名・Vyndaqel/Vyndamax)」が独占する市場に新たな治療薬が登場する。
ブリッジバイオが11月22日に承認を取得したATTR-CM治療薬「Attruby」(一般名・アコラミジス)は、成人患者が対象。ATTR-CMは、異常なトランスサイレチンタンパク質がアミロイドとなって心臓に蓄積する疾患で、臓器不全にいたることもある。
ブリッジバイオは、この薬の価格を28日分で1万8759.12ドル(約284万円)とする計画だ。ファイザーのビンダケルは推奨用量で定価は年間約26万8000ドル(約4060万円)となっている。
ATTR-CMは、心臓から血液を送り出すのを困難にし、治療せずに放置すると心不全を引き起こす。非営利研究機関Institute for Clinical and Economic Reviewによると、この疾患は米国の成人12万人以上に影響を与えている。
ビンダケル/ビンマックとして販売されているタファミジスカプセルは、米国で2019年に承認され、2023年には世界で33億2000万ドル(約5033億円)を売り上げた。
Attrubyの承認は、患者632人を対象に行った後期段階の試験データに基づいている。試験では、30カ月の治療後に生存率が大幅に改善し、心臓病関連の入院頻度が減少した。しかし、副次的評価項目の30カ月時点での死亡数では、プラセボとの有意差は示されなかった。
タファミジスとアコラミジスは、原因タンパク質の生成そのものを抑える米アルナイラム・ファーマシューティカルズの薬とは異なり、異常なトランスサイレチンタンパク質を安定化させるよう設計されている。アルナイラムのブトリシラン(一般名)は、この疾患に関連する神経損傷の治療薬として承認されている。
日本ではアレクシオンが開発
アコラミジスは欧州でも承認審査中で、ブリッジバイオは販売に向けて独バイエルと提携している。日本では英アストラゼネカ傘下のアレクシオンと提携している。
BMOキャピタルのアナリスト、コスタス・ビリオリス氏は、アコラミジスは「非常に確立された薬に対抗するもの」と指摘。ファイザーのカプセルが1日1回投与なのに対し、アコラミジスは2回服用する必要があるため、普及は限定的と予想する。同氏は、アコラミジスの売り上げは2035年までにピークを迎え、世界で25億ドルに達すると予測。タファミジスの23年の世界売上高にも届かないとみている。
スコシアバンクのアナリスト、グレッグ・ハリソン氏は、アコラミジスは少なくとも発売当初は新規に診断される患者の間で最もよく使われるだろうと指摘。ラベルに死亡率に関する記載が加われば、より競争力を高められると語った。
ハリソン氏は「選択肢が増えることは患者コミュニティにとって良いことだ。認知度が高まり、診断率も向上する」と話した。
(取材: Chandni Shah/Mariam Sunny/Bhanvi Satija、編集:Shilpi Majumdar/Sandra Maler/Diane Craft/William Mallard、翻訳:AnswersNews)