1. Answers>
  2. AnswersNews>
  3. ニュース解説>
  4. 「FDA解体」「肥満症薬批判」「ワクチンに疑問」…米保健福祉省長官に指名のケネディ氏は何を主張しているのか
ニュース解説

「FDA解体」「肥満症薬批判」「ワクチンに疑問」…米保健福祉省長官に指名のケネディ氏は何を主張しているのか

更新日

ロイター通信

大統領選に向けたイベントでトランプ氏とあいさつするロバート・F・ケネディ・ジュニア氏(ロイター)

 

[ニューヨーク ロイター]米共和党のドナルド・トランプ次期大統領は11月14日、保健福祉省(HHS)長官に反ワクチン活動で知られる環境活動家ロバート・F・ケネディ・ジュニア氏を選んだと発表した。

 

ケネディ氏はXへの投稿で、慢性疾患の撲滅、汚職の撲滅、情報に基づいた決定を下すのに必要なデータの提供に尽力するとし、「米国を再び健康にする」ために働くとトランプ氏に誓った。

 

ケネディ氏は今年の大統領選に無所属で出馬したが、8月に撤退。共和党政権での役割と引き換えにトランプ氏の支持に回った。民主党の名門一族出身のケネディ氏は、肥満、糖尿病、自閉症といった「慢性疾患の蔓延」への取り組みや、食品に含まれる化学物質の削減についてこれまで頻繁に語ってきた。

 

「すべての米国人の安全と健康は、どの政権にとっても最も重要な役割だ。HHSは、この国で圧倒的な健康危機の一因となっている有害化学物質、汚染物質、農薬、医薬品、食品添加物からすべての人を保護する上で大きな役割を果たすだろう」。トランプ氏はSNSにこう書き込んだ。HHSは、医薬品規制当局、疾病対策センター(CDC)といった公衆衛生機関、公的医療保険のメディケア・メディケイドを監督している。

 

肥満症薬「製薬会社幹部の財布を喜ばせている」

調査会社KFFのドリュー・アルトマン社長は、ケネディ氏のHHS長官起用を歴史的と表現。「HHS長官はこれまで、ナショナルヘルスケアの分野で実務経験と地位のある人物が務めてきたが、ケネディ氏は明らかにそうではない。主流から外れた見解を持っており、反逆的な指名だ」と語った。ケネディ氏はこれまで、米国の医療予算の大半を占めるメディケア・メディケイドのようなプログラムについてあまり語っておらず、実際にHHS長官として何をするかはまだわからないとも指摘した。

 

ケネディ氏のHHS長官起用は数週間前から取り沙汰されており、米国人の健康にマイナスの影響を与えかねないとの懸念を引き起こした。民主党は今回のトランプ氏の決定を非難している。一方、一部の経済団体や政治家はこの指名を支持し、たとえば全米コミュニティ薬剤師協会(National Community Pharmacists Association)は、ケネディ氏の企業に対峙する姿勢に勇気づけられたと述べた。

 

ケネディ氏は、1万8000人の職員を抱える食品医薬品局(FDA)を解体し、国立衛生研究所(NIH)の職員数百人を交代させることを示唆している。同氏は10月下旬、「FDAの公衆衛生に対する戦争は間もなく終わる」とXに投稿。「戦争」には、幻覚剤、ペプチド、幹細胞、生乳、日光などに対する「積極的な抑制」を含むと付け加え、「あなたがもしFDAで働いていて、この腐敗したシステムの一部であるなら、2つのメッセージがある。1.記録を保存。2.荷物をまとめる」と書いた。

 

今月初旬には、フッ化物が骨折やがんに関連しているとの虚偽の主張をし、公共水道からフッ化物を除去することを推奨するとXで発言。9月にニューヨーク・タイムズ紙に掲載された意見記事ではノボノルディスクの肥満症治療薬を批判し、「食糧システムを改善して肥満の根本に対処する代わりに、薬に焦点を当てて遠く離れた大手製薬会社の幹部の財布を喜ばせている」と述べた。

 

ホワイトハウスで新型コロナウイルス対応コーディネーターを務めた経験を持つ、ブラウン大公衆衛生学部長のアシシュ・ジャー氏は「多くの人は、影響がフッ化物やワクチンにとどまらないことに気付いていない。HHS長官はメディケアを監督している。長官に任命された人物が、米国民が使える薬を決めるのだ」と話す。

 

一方、ジョージ・W・ブッシュ政権でホワイトハウスのスタッフを務めたアメリカン・エンタープライズ研究所の上級研究員、ジェームズ・カプレッタ氏は「省庁レベルでの政策立案には、長官でさえ多くの制約がある」と指摘。ケネディ氏がどのような影響を与えるかは不明だが、すぐに影響が出ることはないだろうとの見方を示す。

 

「反ワクチン」には異議

ファイザーやモデルナといったワクチンメーカーの株価は、ケネディ氏指名のニュースを受けて下落し、時間外取引で最大2%下げた。

 

ケネディ氏は、ワクチンが自閉症に関係しているといった医学的に虚偽の主張をしているとして批判されてきた。同氏は新型コロナのパンデミックで州や国が課した規制に反対し、ウイルスに関する誤った情報を広めたことでも非難を受けた。

 

ケネディ氏は反ワクチン派という自身への見方に異議を唱え、ワクチンについてはより厳格なテストを求めているとしている。しかし同氏は、反ワクチンを唱える非営利団体「Children’s Health Defense」の会長を務めている。

 

ケネディ氏は大統領選に立候補していた今年3月のインタビューで、自身が大統領に当選したとしても、自分や子どものためにワクチンを希望する国民は引き続き接種を受けられると語っている。一方で、麻疹ワクチンの有効性には疑問があるとも述べた。

 

麻疹は最も感染力の強いヒトウイルスの1つだが、ワクチン接種でほぼ完全に予防できる。集団内での流行を防ぐには95%の接種率が必要だが、CDCは今月、幼児の接種率はこの水準を下回っていると発表した。

 

(取材:Stephanie Kelly/Ahmed Aboulenein/Jasper Ward/Julie Steenhuysen、編集: Heather Timmons/Eric Beech/Jonathan Oatis/Caroline Humer/Deepa Babington/Daniel Wallis、翻訳:AnswersNews)

 

あわせて読みたい

メールでニュースを受け取る

  • 新着記事が届く
  • 業界ニュースがコンパクトにわかる

オススメの記事

人気記事

メールでニュースを受け取る

メールでニュースを受け取る

  • 新着記事が届く
  • 業界ニュースがコンパクトにわかる