(写真:ロイター)
[ロイター]アクティビスト(物言う株主)のヘッジファンド、スターボード・バリューとの対立が公になっている米ファイザーが10月29日、2024年7~9月期決算を発表した。新型コロナウイルス感染症治療薬パクスロビドの好調に支えられて利益は予想を上回り、アルバート・ブーラCEO(最高経営責任者)は「業績回復は成功している」と主張した。
同社は、パクスロビドの売り上げが予想以上に伸びたのは、感染の拡大と強力な商業的実行によるものだと説明。年間の利益と売り上げの見通しを引き上げた。それでも投資家は、同社が見通しを改善できることを示すにはまだ取り組むべきことがあると指摘する。好調な決算にもかかわらず、株価は軟調に推移している。
ブーラ氏は同日の電話会見で、スターボードによる経営陣への批判について初めて公の場でコメントした。ファイザーはしばらく前からコスト削減策に取り組んでおり、商業部門のトップマネジメント変更や新たな最高戦略責任者の任命など組織変更を行ったと強調。研究開発部門についても、近く新しい責任者を任命する予定だと語った。
スターボードは、ファイザーの取締役会は経営陣に業績不振の責任を負わせる必要があると主張。特に、社内の研究開発や買収を通じた高収益の新薬の開発実績に疑問を呈している。スターボードは決算へのコメントを控えた。
ブーラ氏は、最近の買収に関するインタビューで「株主総利回りがもっと良くなったはずだという点についてはスターボードに同意するし、われわれも満足しているわけではない。しかし、事業開発に無駄な金を費やしたとする彼らの主張に対しては、まったく異なる見解を持っている。経営陣と取締役会は、それらのディールが変革をもたらすと考えている」と述べた。
ブーラ氏は、自身はファイザーに献身しており、株主から圧力を受けてもすぐに退任するつもりはないと語った。430億ドルを投じた昨年のシージェン買収で獲得した多くの抗がん剤候補は、世界の公衆衛生に非常に有意義な変化をもたらす可能性があると考えていると強調した。
ファイザーは新型コロナワクチン・治療薬の売り上げ急減に苦戦しており、コスト削減プログラムを立ち上げ、事業強化に向けたM&Aに力を入れてきた。
ファイザーの株価はパンデミック時に記録した最高値の半分ほどで取り引きされている。投資家らは、コスト削減による収益性の向上と、最近の買収による収益の拡大を求めている。
「まだやるべきことがたくさんある」
ファイザーは、今年は少なくとも40億ドルのコスト削減が見込まれるとしている。同社株を約26万株保有するアプタス・キャピタル・アドバイザーズのポートフォリオ・マネージャー、デイブ・ワグナー氏は「これは彼らにとってマラソンのスタートラインから最初の一歩を踏み出したに過ぎない」と指摘する。
ワグナー氏はポートフォリオの合理化とサプライチェーンのコスト削減を求め、「スターボードからの圧力が弱まることはないだろう。まだやるべきことがたくさんあるからだ」と語った。
パクスロビドの四半期売上高は27億ドルで、アナリスト予想の4億5640万ドルを大きく上回った。米国では夏の終わりに感染者が急増した。新型コロナワクチン「コミナティ」も四半期売上高14億2000万ドルと予想の8億7000万ドルを大きく上回った。
第3四半期決算を受けて、ファイザーは両製品の年間売上高予想を従来の85億ドルから105億ドルに引き上げた。年間の1株あたり純利益予想も30セント上方修正し、2.75~2.95ドルを見込む。
第3四半期の1株あたり純利益は1.06ドルで、アナリストの予想を44セント上回った。売上高は117億ドルで、149億6000万ドルの予想をクリアした。
ファイザーは昨今、肥満症治療薬候補の期待外れのデータ、RSウイルスワクチンの販売不振、臨床試験での死亡例による鎌状赤血球症治療薬オクスブリタの撤退などに悩まされている。同社は肥満症治療薬について、大型市場でのシェアを狙って2つの新薬候補の開発を進めているとした。
(取材:Manas Mishra/Bhanvi Satija/Michael Erman/ Svea Herbst-Bayliss、編集: Sriraj Kalluvila/Bill Berkrot、翻訳:AnswersNews)