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GSK、年平均8%成長で2031年に国内売り上げ4000億円…再参入のがん領域、成長に自信

更新日

穴迫励二

GSKのポール・リレット社長は日本での事業拡大に自信を示す

 

グラクソ・スミスクライン(GSK)が「2031年まで年平均成長率8%」という新たな日本事業の目標を掲げました。従来の6%から上方修正し、31年に4000億円規模の売り上げを目指すことになります。かつて売却によって手放したオンコロジー事業を再び主要領域に据え、ポール・リレット社長は事業拡大に自信を示しています。

 

 

オンコロジーを再び主要領域に

GSKは近年、日本での成長目標の上方修正を繰り返しています。リレット氏は22年7月の事業説明会で「26年まで年平均5%」の売り上げ成長を目指すと表明。今年2月には、帯状疱疹予防ワクチン「シングリックス」やCOPD・気管支喘息治療薬「テリルジー」など新製品の貢献を見込んで「26年まで年平均6%」へと見直しました。さらに、今月18日に開かれたメディア向けセミナーでは「31年まで年平均8%」に引き上げ、これを実現すると同年の国内売上高は3962億円に達する計算になります。

 

同社の業績はこの10年間、停滞しています。13年の売上高は2782億円で、外資系で5番手につけていましたが、21年には2158億円まで減少。前立腺肥大症治療薬「アボルブ」や抗アレルギー薬「ザイザル」といった主力品の特許切れが、新薬発売や既存品拡大による増収を打ち消す形で伸び悩みました。

 

22年は前年から40.3%の増収で初めて3000億円台に乗せましたが、これは新型コロナウイルス感染症治療薬「ゼビュディ」の政府購入によるもの。一時的な増収要因がなくなった23年は2140億円と以前の水準に戻っています。コロナ関連製品を除くと23年は前年比11%の増収だったといいますが、同年には抗アレルギー点鼻薬「アラミスト」にも後発品が参入しており、横ばいのトレンドに大きな変化はありません。

 

【GSKオンコロジー領域の新薬開発状況】〈研究開発の重点分野/開発品〉がん細胞を標的/●ベランタマブ マホドチン/★モメロチニブ/GSK2857914|合成致死を利用/(非開示)|免疫を標的/ドスタルリマブ/コボリマブ/ベルレストタグ/GSK'608/GSK'562|GSKの記者会見資料をもとに作成

 

「オムジャラ」で再参入

現在、同社が注力する領域は「ワクチン・感染症」「呼吸器・免疫」「オンコロジー」の3つ。来年以降30年までに発売が想定される新薬には、ワクチン・感染症では多剤耐性菌による尿路感染症に対する抗菌薬ゲポチダシンなど、呼吸器・免疫領域では難治性慢性咳嗽治療薬カムリピキサントなどがあります。成長目標引き上げの背景にあるオンコロジー領域では、今年8月に骨髄線維症治療薬「オムジャラ」(一般名・モメロチニブ)を発売。開発パイプラインも揃ってきました。

 

英GSKは15年にスイス・ノバルティスとの間で事業交換を行い、同社からワクチン事業を取得する一方で、がん領域の事業を譲渡しました。これによってがん領域の製品と後期開発品を手放すことになりましたが、研究開発は続けており、17年に再参入を表明。その後は、M&Aも含めて積極的な投資を行っています。日本では22年にオンコロジー事業部を立ち上げるなど体制を再構築しています。

 

30年までにPD-1やTIGITを市場投入

再参入の第1弾となったオムジャラは、骨髄繊維症では日本で10年ぶりとなる新薬。JAK1/2とアクチビンA受容体1型を阻害する新たな作用機序を持つ経口薬で、主な症状である貧血、全身症状、脾臓腫大を改善します。国内の年間罹患者数は推定380人程度と対象患者は極めて少なく、ピーク時売上高は41億円の予想です。

 

第2弾となる抗BCMA抗体薬物複合体(ADC)ベランタマブ マホドチン(一般名)は、再発・難治性の多発性骨髄腫治療薬として今年9月に承認申請。来年以降の業績貢献を見込んでいます。このほか、30年までに抗PD-1抗体ドスタルリマブ(同)と抗TIGIT抗体ベルレストタグ(同)の市場投入を想定。ドスタルリマブは非小細胞肺がんや子宮体がん、ベルレストタグは非小細胞肺がんの1次治療を対象に開発を進めています。

 

【GSKオンコロジー領域の新薬開発状況】〈研究開発の重点分野/開発品〉がん細胞を標的/●ベランタマブ マホドチン/★モメロチニブ/GSK2857914|合成致死を利用/(非開示)|免疫を標的/ドスタルリマブ/コボリマブ/ベルレストタグ/GSK'608/GSK'562|GSKの記者会見資料をもとに作成

 

がん免疫などに重点

新薬開発方針について向井陽美メディカル本部長は「グローバルに遅れることなく同時申請・同時承認を目指して取り組んでいる」と強調。腫瘍細胞やがん免疫などをターゲットとし、血液がんに加えて婦人科がんや肺がんといった固形がんでも治療薬の上市につなげたい考えです。開発の方向性としては「新しい作用機序と併用療法」がカギになるとしており、ベランタマブ マホドチンも「ポマリドミド+デキサメタゾン」「ボルテゾミブ+デキサメタゾン」との併用です。

 

国内売上高4000億円に向かう中でがん領域がどの程度の割合を占めていくかは、現時点では明らかではありません。リレット氏は「がん領域はまだ事業規模が小さいため成長率は高くなるが、現時点で正確な予想をすることは難しい」と話しました。すでに海外で発売されているオムジャラ、ベランタマブ マホドチン、ドスタルリマブなどは国内でも一定の市場が見込めそうです。

 

同社は今年3月、「キャリアサポートプログラム」と称して57歳以上を対象に早期退職者を募集し、数十人が応募したといわれます。一方で、がん領域への再参入によって専門知識のあるMRを常時募集。今後の新薬承認申請や上市のタイミングを計りながら、社内での育成も含めて営業体制を強化する考えを示しています。

 

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