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ある製薬企業のCMをきっかけに始まった父娘の会話|コラム:現場的にどうでしょう

更新日

黒坂宗久

8月中旬のある日のこと。夕方、在宅勤務を早めに切り上げ、ソファに座って小学生の娘とテレビを見ていると、とある製薬企業のCMが流れてきました。何やら真剣に見ている様子の娘。CMが終わると私にこう言いました。「お父さんの会社のCMはないの?」

 

弊社は現在テレビCMはやっていません。そこでネットを探してみると、見つかりました。薬が主人公となって、自分のことや患者・家族のことを語るCMが(10年以上前に放映された「僕は、アステラスのくすり」というセリフで始まる、臓器移植や過活動膀胱を扱ったアニメーションCMを覚えている方もいるかもしれません)。

 

興味を持ってくれたようだったので、さらに他の製薬企業のCMも探して一緒に見てみました。娘はなんだか感激したらしく、一通り見終わると興奮気味にいろんなことを聞いてきました。

 

「移植って何?」

「なんで移植するの?」

「なんで移植して薬を飲まないといけないの?」

「抗体って何?」

「お父さんの会社も抗体を作ってるの?」

 

思わぬ質問攻めに驚きつつ、子どもの疑問に1つ1つ丁寧に答えていきました。すると娘はこう言いました。「お薬を作っている会社って大切なんだね」

 

不覚にも少しうるっときてしまいました。まさか子どもからこんな言葉を聞けるなんて思ってもいませんでした。「お父さんもお薬を作るのは大切な仕事の1つだと思っているよ」と胸を張って応じました。とても誇らしかったです。

 

身近な人に仕事を語る

アドボカシーを仕事にしている私は、「医薬品のこと、製薬企業のこと、製薬業界のことを世の中にもっと知ってもらうにはどうしたらいいんだろうか」といつも考えています。製薬企業のCMに興味を持ってくれる人がいて、そこから会話が広がり、理解につながっていくという場面に立ち会えたのは、とても良い経験になりました。いわば「家庭内アドボカシー活動」を体験したわけですが、こうしたことが普段の会話で話題に上るようにするにはどうしたらいいのかとか、10万人を超える製薬業界で働く人が家庭内アドボカシー活動をしたら世の中の業界に対する視線も少しずつ変わっていくかもしれないとか、色々とを考えるきっかけになりました。

 

私がアステラスに入って最初の上司が以前、「北風と太陽」を引き合いにこんな話をしてくれました。「旅人のコートを脱がせることができたのは太陽。アドボカシーも、北風のように強引に説き伏せるのではなく、太陽のように暖かく話しかけることが大切だ」。今回の私の体験にも通じるところがあるような気がします。

 

実は私、普段から社内で「まずは身近な人に自分の仕事について話してみませんか」と伝えたりもしています。読者の皆さんも、機会があれば家族や友人など身近な人に、自分の仕事やそれに対する思いを伝えてみてはいかがでしょうか。製薬業界を応援してくれる人が増え、やがて業界が盛り上がっていくことにつながるかもしれません。何より、身近な人が自分の仕事に興味を持ってくれたり、理解を示してくれたりするのは嬉しいものです。

 

※コラムの内容は個人の見解であり、所属企業を代表するものではありません。

 

黒坂宗久(くろさか・むねひさ)Ph.D.。アステラス製薬アドボカシー部所属。免疫学の分野で博士号を取得後、約10年間研究に従事(米国立がん研究所、産業技術総合研究所、国内製薬企業)した後、 Clarivate AnalyticsとEvaluateで約10年間、主に製薬企業に対して戦略策定や事業性評価に必要なビジネス分析(マーケット情報、売上予測、NPV、成功確率、開発コストなど)を提供。2023年6月から現職。SNSなどでも積極的に発信を行っている。
X:@munehisa_k
note:https://note.com/kurosakalibrary

 

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