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[ロイター]米モデルナが、新型コロナウイルスワクチンからの製品の多角化に苦戦している。同社は9月12日、複数の新製品候補で開発スケジュールを延長し、2025年の売上高が従来の想定を下回ると発表した。損益均衡の達成時期も2年先送りし、株価は4年ぶりの安値に迫った。
同日の発表では、25年12月期の売上高予想を25~35億ドルとした。LSEGのデータによると、アナリスト予想は37億4000万ドルで、今回の予想はこれを下回っている。モデルナは従来、25年の売上高として30~35億ドルを見込んでいた。
新型コロナウイルスワクチンからの転換に苦戦しているモデルナは、ニューヨークで開いた投資家会議で、インフルエンザワクチンやがんワクチンの規制プロセスは同社がこれまでに示していたよりも時間がかかりそうだと明かした。
モデルナは今年末までに60億ドルの現金を手元に残せると予測しているが、ジェフリーズのアナリスト、マイケル・イー氏によると、これは同社がかつて見込んでいた60~70億ドルの下限だ。
研究開発費11億ドル削減
同社はコスト削減として26~27年に研究開発費を11億ドル削減する。そのほとんどは27年に行われる。同社はこれまで営業キャッシュコストベースの損益均衡を26年としていたが、28年に2年先送りした。
最高財務責任者(CFO)のジェームズ・モック氏はインタビューで、25年の予想は米国のコロナワクチンとRSウイルスワクチンの市場の不確実性を反映していると述べた。同社のRSウイルスワクチンの採用は想定より遅いという。
モデルナは27年までに10製品の承認取得を見込んでいる。モック氏は「25年もいくつかの新製品の承認を想定しているが、そこから得られる収益は25年はそれほど大きくないと想定している」と語った。25年の予測は、新製品の売り上げが承認翌年にならないと大きな収益にならないことを前提としているという。同社は、新製品の投入によって26~28年に収益は年平均25%増加するとしている。
がんワクチン、迅速承認へ協議
モデルナは今年5月、米国でRSウイルスワクチン「mRESVIA」の承認を取得。先行する英グラクソ・スミスクライン、米ファイザーとシェアを争っている。対象は60歳以上の成人だが、年内に60歳未満の高リスクの成人に対象を拡大するための申請を行う方針だ。実施中の臨床第3相(P3)試験では、18~59歳の高リスク成人に対する免疫原性が確認され、忍容性も良好だったとしているが、データの詳細は明かさなかった。
ファイザーは今年8月、昨年60歳以上を対象に承認されたRSウイルスワクチン「アブリスボ」について、18歳以上の高リスク成人でも有効性が確認されたと発表した。GSKの同「アレックスビー」は今年6月、50~59歳の成人に対象を広げている。米疾病予防管理センターは、75歳以上のすべての成人と、高リスクの60~74歳にRSウイルスワクチンの接種を推奨している。
同社は、mRNAベースのインフルエンザ単独ワクチンについて米国での迅速承認申請を中止したことも明らかにした。年内を予定する新型コロナとインフルエンザの混合ワクチンの申請にリソースを集中させる方針だ。
米メルクと共同開発しているがんワクチンでは、P2試験の結果をもとに米FDA(食品医薬品局)と申請に関する協議を進めている。最初のフィードバックでは、FDAは現時点でのデータに基づく迅速承認を支持しなかったという。
(取材:Patrick Wingrove、Sneha S K/編集:Bill Berkrot, Maju Samuel、Arun Koyyur/翻訳:AnswersNews)