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IQVIA「ドラッグ・ロス解消」「日本企業の海外進出」支援強化…新組織「RADDS」日本でも始動

更新日

前田雄樹

IQVIAが、ドラッグ・ロスの解消と国内バイオベンチャーの海外進出支援を強化します。グローバルで先行していた「RADDS」(Regulatory Affairs & Drug Development Solutions)と呼ばれる新組織を今年、日本でも始動。顧客のニーズに応じて薬事対応、開発戦略立案、臨床開発などのサービスを一体的に提供する体制を構築しました。グローバルとも連携して海外の新興バイオファーマ(EBP)を日本に呼び込むとともに、日本のバイオベンチャーの海外開発・申請をサポートします。

 

 

「最も重要なのはアクセシビリティ」

IQVIAがRADDS Japanを設立したのは今年1月。グローバルでは、開発早期から市販後までの規制対応や戦略立案に関連するサービスのハブ機能として2022年初頭に発足しました。RADDS Japanのトップには、独バイエルや武田薬品工業で国内外の臨床開発を率いた経験を持つ新美満洋氏を招聘。機能横断的なチームを構成し、社外の専門家や海外拠点とも連携してワンストップでサービスを提供する体制を整えました。

 

IQVIAジャパンの松田秀康・臨床開発事業本部長は「われわれが最も重要だと考えているのは医薬品へのアクセシビリティだ。海外の薬が日本に入ってこないということは日本の患者が新薬にアクセスできないということだし、逆に日本で良い薬が開発されたなら世界中の人々が享受できるようにすべき。グローバルCROとして、世界で同時に新薬が利用可能となるようなサポートができたら」と話します。

 

IQVIAジャパンの松田秀康・臨床開発事業本部長

 

RADDS Japanが提供するサービスは、(1)日本企業の海外進出支援、(2)日本での事業開始・維持に必要な薬事対応の支援、(3)海外企業の日本参入支援――の3つです。

 

日本企業の海外進出支援では、海外での新薬開発・承認取得を目指す顧客に対し、RADDSグローバルと連携して開発戦略の立案や規制対応、臨床開発支援といったサービスを提供します。RADDS JapanはRADDSグローバルとの橋渡し役で、顧客からニーズを聞き取った上で支援戦略を策定。これを受けてグローバルが支援体制を構築し、サービス開始後も日本の担当者が顧客とRADDSグローバルの間のコミュニケーションをサポートします。

 

一方、海外企業の日本進出支援については、IQVIAはこれまでも国内外の企業に対してPMDA相談や戦略立案といった薬事サービスを提供しており、2010年~23年9月に180件以上の提供実績があります。RADDS Japanではこうした従来のサービスに加え、より早い段階の戦略立案や(2)を通じた事業の開始・維持に必要な規制対応なども含めて一気通貫でサービスを提供し、海外新興企業の呼び込みにつなげたい考えです。

 

「まずドラッグ・ラグ解消に貢献」

国内では近年、ドラッグ・ロスが問題化し、日本企業による創薬力の低下も叫ばれています。欧米で承認されているものの国内で開発されていない新薬は昨年3月時点で86品目に上り、世界の売り上げ上位300品目に占める日本企業の創製品目数は1991年の53から21年に24に半減しました。

 

こうした状況を受けて政府は今年7月、▽ドラッグ・ラグが生じている86品目のうち対象疾患に既存薬がないものなどについて26年度までに国内開発に着手▽21年に100件だった国際共同治験の初回治験計画届を28年に150件に▽創薬スタートアップに対する民間投資を28年度までの5年間で倍増▽企業価値100億円以上の創薬スタートアップを新たに10社以上輩出――などの目標を定め、達成に向けた工程表を策定。治験をめぐっても、規制緩和や環境改善に向けた動きが活発化しています。

 

松田氏は「RADDS Japanaがまずやらないといけないのはドラッグ・ロスの解消。未承認薬の国内導入に貢献したい」と強調。IQVIAは、昨年の米国臨床腫瘍学会(ASCO)でEBP関係者を招いて日本の治験環境をアピールするイベントを開いたり、説明資料を作成して欧米の営業担当者を通じてEBPにアプローチしたりといった取り組みも行っており、「EBPに日本を知ってもらう、日本に関心を持ってもらうことも重要だ。これからもアクションをどんどんとっていく」と言います。

 

IQVIAが2023年のASCOで開いた日本の治験環境をアピールするイベント。日本のKOLが登壇し、約70人のEBP関係者が参加した

 

IQVIAインスティテュートが7月に公表したレポートによると、日本の治験環境の整備度は米国とドイツに次ぐ世界3位と高い評価を得ましたが、実際に行われている試験の数は環境の整備度から本来実施可能と考えられる試験の数を大きく下回っています。一方、米国は実施可能と考えられる試験数を大幅に上回る試験が行われており、「過剰に活用されている」と指摘されました。松田氏は「日本にはもっと臨床試験ができる環境がある。第2、第3の国として日本を入れませんかというアピールをもっとしていくことが大事だ」と言います。

 

関連記事:日本の治験環境整備度、世界3位の高評価も…実施呼び込めず機会損失大きく

 

IQVIAは、EBPの参入支援で得た知見を、日本の治験環境の改善にも役立てたい考え。松田氏は「EBPはある意味『このプロダクトに命を懸けている』という人たちなので、リクアイアメントも高い。彼らが日本のどんなところをおかしいと思っているのか、変えてほしいと思っているのか、RADDS Japanはフィードバックをつぶさに聞くことができる。そうしたニーズをもとに環境改善を働きかけられたら」と話しました。

 

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