MR認定センターが、製薬企業などに所属するMRの教育研修や認定制度について定めた「MR認定要綱」の改正案を公表しました。現在の4章構成に「生涯学習」を加えた5章立てに変更し、これまで企業主導だった教育研修について個々のMRの主体的・継続的な学習を強化する方向に見直します。MR認定制度は2026年度から新制度に移行することになっており、MRをとりまく環境が大きく変化する中、個々のMRに自覚と責任を促します。
INDEX
自覚と責任を
センターが認定制度を見直す背景にあるのが、ビジネス環境の急激な変化です。新薬開発が専門性の高い領域にシフトし、情報提供がデジタル化する中、MRの立ち位置や存在意義も変わってきました。現行の認定要綱が制定されたのは2021年。環境変化を踏まえ、現行制度が適正使用の推進など医療関係者の期待に応えるものとなっているかとの認識から、改正が行われることになりました。
センターの近澤洋平専務理事は8月23日に開いた改正案の説明会で、リストラなど将来への不安に理解を示しながらも「自覚と責任を持ってほしい」と述べ、医療関係者や社会から信頼される存在になるよう訴えました。
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改正の大きなポイントは、教育研修体系の見直しです。現行の要綱では第2章の「教育研修」で企業がMRに対して行う教育について定めていますが、改正案では第3章として「生涯学習」を新設しました。ここでは生涯学習について「医療関係者から信頼されるパートナーとなることを目的にMRが主体的に実施する」と明記。企業主導で管理してきたMR教育の「過去の流れを断ち切り」(近澤氏)、個人に自律的な学習を求めます。
基礎教育「個人が行う学習」
現在の要綱ではMR教育を、新卒者に対する「導入教育」とすでにMRとして活動している人に対する「継続教育」に分け、それぞれ「基礎教育」と「実務教育」を行うとしていますが、新要綱では導入教育と継続教育の区分を撤廃。基礎教育は「基礎知識を自ら学び、習得・維持することを目的に個人が行う学習」と位置付け、これを土台に企業が実務教育を行う2階建て方式に見直します。
基礎教育の科目は「医薬品情報」「疾病と治療」「MR総論」のうちMR総論を「医薬品産業と倫理・法規・制度」に変更。MRに特化したものではなく、医薬品産業に従事する人全員が理解しておくべき内容に改めます。企業がMR以外の職種でも活用できるようにすることも可能にするためです。
新試験、受験資格撤廃
MR活動に必要なMR認定証を取得するための試験は、2026年度から新たな制度に移行する予定。要綱の改正案では第4章で試験の概要を規定しています。
現在「MR認定試験」としている試験の名称は「MR基礎試験」に変更し、現行の「導入教育修了認定者」の受験資格は撤廃。希望すれば誰でも受験できるようになります。基礎試験に合格し、企業が実施する実務教育の終了認定を得れば、MR認定証が交付される仕組み。認定証を受け取るために必要な「MR経験6カ月」の要件は廃止します。
受験の機会も広げます。現在は毎年12月に東京と大阪の2会場でマークシート方式の筆記試験を行っていますが、新制度ではCBT(Computer Based Testing)を採用し、6~7月と11月の年2回、それぞれ9日間の受験期間を設け、全国約280カ所で行います。
現行では最長5年間で3科目に合格することが試験合格の条件ですが、新試験では「連続する4回の試験で全科目合格」に変更されます。「4回の試験」は受験しなかった回を含む開催回数です。合格基準スコアはこれまで試験後に明らかにしてきましたが、新試験では事前に公表する形に変更。個人の成績も、現在は合否のみ通知されていますが、全員にスコアが通知されることになります。第1回の新試験の要領は来年12月に公表される予定です。
認定証、個人学習で5年ごとに更新
認定証は、所定の個人学習を毎年行うことで5年ごとに更新することが可能です。MRとして働いていなくても意志さえあれば保有し続けることができる一方、企業に所属している人も含めて学習や更新の届け出は個人で管理するのが原則。認定センターの小日向強・教育研修部長は「認定証や制度の持つ意味を再認識してもらいたい」と話しています。
新要綱はMR個人に自覚と責務を求める形となりましたが、小日向氏は企業対して「これまで以上に認定制度にコミットしてほしい」と要請しています。MRが適正使用の推進と市販後を含めた情報収集・提供という本来の役割を果たすには、企業の責任も大きいことは言うまでもありません。
認定センターは、新たな要綱と認定制度を来年7月に公布し、26年度から施行することにしています。