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医薬品・医療機器開発の専門人材「スポット活用」に注目…副業・シニアが活躍、xCARE・福永代表「人材の流動性向上で開発加速」

更新日

前田雄樹

医薬品・医療機器を開発するベンチャー企業などで、専門的な知識・スキルを持つ人材の「スポット活用」に対するニーズが拡大しています。専門人材と企業・アカデミアのマッチングを手掛けるxCARE(クロスケア、東京都渋谷区)は、創業から2年あまりで60を超えるベンチャーやアカデミアの人材確保を支援。副業を解禁する企業が増え、シニアの労働参加が広がる中、人材側の関心も高まっているといいます。同社の福永将・代表取締役に話を聞きました。

 

「必要な人を必要な時に必要な形で」

――2022年にxCAREを創業し、医薬品・医療機器の開発・事業化の専門人材とベンチャー企業などをマッチングする事業を手掛けています。このような事業を始めた理由を教えてください。

福永将・xCARE代表取締役(以下同):私は大日本住友製薬(現住友ファーマ)で4年間MRとして働いたあと、メディカル産業に特化したリクルーターやヘッドハンターを計3年間経験し、2022年1月、29歳でxCAREを創業しました。

 

起業の1つのきっかけは、人材紹介の仕事をしていたときに感じた業界の課題です。医薬品・医療機器産業にとって研究開発は最も重要な機能であり、その仕事には高い専門性が求められますが、一過性のものがたくさんあります。開発の主体がベンチャー企業に移っていく中で、これがネックとなって必要な人材を確保できずプロジェクトが進められないとか、採用したものの1年後には仕事がなくなるので辞めてもらわないといけない、あるいはその人の専門性とは違う仕事をしてもらわないといけない、といったケースをたくさん見てきました。

 

だったら、もっと流動的に必要な人が必要な時に必要な形でベンチャー企業のプロジェクトに関われるような仕組みを作れないかと考えたのが起業の大きな背景です。

 

もう1つのきっかけは父の存在です。私の父は医療機器のエキスパートですが、役職定年を迎えて活躍の幅が限られてしまっていた。スキルや経験はあるのに、もったいないなと思ったんです。一方で、そういう人に必要な時に必要な形で関わってもらいたいと思っているベンチャー企業はたくさんある。フルタイムで採用するのは違うとしても、ある専門性を持った人材がこの瞬間すごく必要という場面は多いんです。実際、そうしたところをマッチングすることでプロジェクトが上手く回るようになったという経験もしました。

 

定年退職後の人生は長いですし、副業も広がってきています。現役世代は副業を通して自分自身を成長させ、シニア世代は定年後もフリーランスのような形で自分の専門性を生かして働ける。高齢化で労働人口が減少していく中、そうした社会をつくっていくことが必要なのではないかと考えています。

 

――xCAREのプラットフォームにはどのような方が専門人材として登録されているのですか。

現在、約300人の登録エキスパートがいますが、およそ半分がシニア人材で、残りの半分が副業の方です。シニアは60歳代~70歳代前半、副業の方は30~50歳代が中心です。すでに登録しているエキスパートからの紹介、LinledInでのスカウト、SNSでの声掛け、自社セミナーなどを通じて専門人材を増やしています。

 

xCAREは医薬品・医療機器の開発・事業化フェーズの人材確保にフォーカスしていますので、メインは非臨床試験、CMC開発、臨床開発、薬事、マーケティング、市場調査、事業計画立案といった領域のエキスパートです。海外のエキスパートもいます。グローバルで開発していきたいと考える企業は多い一方、開発のオペレーション、規制対応、ローンチ戦略の立案などを担ってくれる現地の専門人材を探すのはなかなか難しい。そうした点で、海外のエキスパートを活用したいというニーズはすごく大きいです。

 

xCAREの福永将代表取締役

 

流動性高め企業と人材がウィンウィンに

――製薬業界でも近年、相次ぐリストラや副業の解禁で人材の流動性が高まっているように感じます。

流動性は高まってきていますが、海外に比べるとまだまだでしょう。xCAREの登録エキスパートも、日本より海外のほうが集まりやすいです。欧米をはじめ海外では「自分のキャリアは自分で」という意識が高いですし、会社もそれを認めている。日本ももっと業界全体で流動性を高めていくべきで、それがベンチャーやアカデミアによる製品開発の加速、イノベーションの促進につながっていくと考えています。

 

これから人口もさらに減ってくるので、1人の人がいろんな形で活躍できるようにしていくことが社会にとっても必要不可欠です。この業界でも、自分の経験を生かして社会貢献したいというシニアの方は多いですし、現役世代は副業を通してスキルや経験値のアップを求めています。一方でベンチャーは専門人材をフレキシブルに活用できるとすごく助かる。流動性を高めていくことで双方がウィンウィンになれると思っています。

 

――今後どのような事業展開を計画していますか。

xCAREはグローバルで医薬品・医療機器業界の研究開発のインフラになることを目指しています。世界のベンチャーやアカデミア、さらには大企業がxCAREを活用するのが当たり前になり、それを通じて開発がアクセラレートされ、少しでも多くのプロダクトが世の中に出ていく。そんな未来を描いています。

 

今のところ2029年のIPOを目指していますが、そのタイミングではグローバルで数万人、できれば10万人くらいの専門人材をしっかりと抱えていたい。さらには、登録エキスパートの得手不得手や特長など整理して質・量ともに充実したデータベースを構築し、将来的にはプロジェクトとのマッチングをAIで自動化していきたいと考えています。

 

医薬品・医療機器開発を行う上で「人」はすごく大事です。企業からのニーズは今後もどんどん出てくるでしょうし、専門人材にとっても自身のキャリア開発・キャリアデザインのインフラとして活用してもらえるような存在になりたいです。

 

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