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ニュース解説

イーライリリーのアルツハイマー病薬「Kisunla」など3新薬承認|米FDAが2024年7月に承認した新薬

更新日

亀田真由

(写真:ロイター)

2024年7月に米FDA(食品医薬品局)が承認した主な新薬と適応拡大を、領域別にまとめました。

 

 

【新薬】重症円形脱毛症治療薬「Leqselvi」など

【2024年7月に米FDAが承認した主な新薬】〈製品名/一般名/社名/適応/国内の開発状況〉▽中枢神経/Kisunla*★/donanemab /米イーライリリー/早期アルツハイマー病/申請|▽免疫/Leqselvi/Deuruxolitinib/インド・サンファーマ/重症円形脱毛症(成人)/-|▽その他/Femlyv/norethindrone acetat/ethinyl estradiol/米ミリセント/避妊(OD錠)/-|米FDA(食品医薬品局)や各社の発表資料をもとに作成。国内開発状況は各社のパイプライン情報などを参照。

 

中枢神経

Kisunla|米イーライリリー

「Kisunla」(一般名・donanemab)は、早期アルツハイマー病治療薬。N3pGAβ(N末端第3残基でピログルタミル化されたアミロイドβ)に対する抗体で、対象となるのは軽度認知障害(MCI)または軽度認知症の段階でアミロイドβ病理を示唆する所見が見られた成人患者。月1回、静注で投与します。アミロイドプラークの除去が確認された時点で投与をやめることができるのが特徴で、臨床第3相(P3)試験では参加者の半数近くが1年以内に投与を終了。タウタンパクのレベルが軽度~中等度の被験者では、プラセボと比較して認知機能の低下を35%抑制しました。日本や欧州でも申請中です。

 

免疫

Leqselvi|印サンファーマ

JAK阻害薬「Leqselvi」(deuruxolitinib)は、重症円形脱毛症治療薬として承認されました。1223人の患者を対象としたP3試験では、投与24週時点で3割の患者が毛髪被覆率80%となりました。

 

その他

Femlyv|米ミリセント

避妊薬「Femlyv」は、norethindrone acetateとethinyl estradiolを配合したOD錠。2剤の配合避妊薬は以前から使用されていますが、OD錠は米国初です。

 

【適応拡大】多発性骨髄腫治療薬「Darzalex FASPRO」の4剤併用療法など

【2024年7月に米FDAが承認した主な適応拡大】〈製品名/一般名/社名/適応/国内の開発状況〉▽腎・代謝/Velphoro/sucroferric oxyhydroxide/スイス・ビフォー/慢性腎臓病患者の血清リン濃度の管理(9歳以上の小児)/|Brineura /cerliponase alfa/米バイオマリン/セロイドリポフスチン症2型(3歳未満の小児)/承認|●Livmarli/maralixibat /米ミラム/進行性家族性肝内胆汁うっ滞症に伴う胆汁性そう痒(生後12カ月~5歳未満の小児)/申請※対象年齢は非公開|▽がん/Darzalex FASPRO/daratumumab/ hyaluronidase/米ヤンセン/新規診断の多発性骨髄腫(移植適格、+bortezomib+lenalidomide+dexamethasone) /-|▽皮膚/●Zoryve /roflumilast/米アーキュティス/軽症から中等症のアトピー性皮膚炎(6歳以上)/-|▽消化器/Voquezna vonoprazan fumarate/米Phathom/非びらん性胃食道逆流症に伴う胸焼けの緩和(成人)/-|▽アレルギー/●Palforzia/スイス/Stallergenes/ピーナッツアレルギー(1~3歳の小児)/-|※米FDA(食品医薬品局)や各社の発表資料をもとに作成。国内開発状況は各社のパイプライン情報などを参照。

 

腎・代謝

Velphoro|スイス・ビフォー

慢性腎臓病患者の血清リン濃度管理に使用する「Velphoro」(sucroferric oxyhydroxide)は、9歳以上の小児に対象を拡大しました。同薬は2013年に米国で成人を対象に承認。欧州でも2歳以上の小児を対象に承認されています。日本ではキッセイ薬品工業が「ピートル」の製品名で成人を対象に販売しています。

 

Brineura|米バイオマリン

セロイドリポフスチン症2型(CLN2)治療薬「Brineura」(cerliponase alfa)は、3歳未満の小児に対象を拡大。CLN2はライソゾームのセリンプロテアーゼであるTPP1の欠損によって起こる遺伝性疾患。同薬はTTP1酵素の補充療法に使用します。米国では従来、3歳以上の小児が対象でした。日本と欧州でも出生以降の小児を対象に承認されています。

 

Livmarli|米ミラム

IBAT阻害薬「Livmarli」(maralixibat)は、「進行性家族性肝内胆汁うっ滞症(PFIC)に伴う胆汁性そう痒」の適応で生後12カ月以上5歳未満の小児に対象を広げました。同薬はアラジール症候群治療薬として米欧で承認されており、今年7月に欧州で生後3カ月以上のPFIC治療薬として承認。日本では今年6月、導出先の武田薬品工業が両適応で申請を行いました。

 

がん

Darzalex FASPRO|米ヤンセン

皮下投与の多発性骨髄腫治療薬「Darzalex FASPRO」(daratumumab/hyaluronidase)は、新規診断の移植適格患者に対するbortezomib、lenalidomide、dexamethasoneとの4剤併用療法が承認されました。承認の根拠となったP3試験では、主要評価項目の無増悪生存期間を延長するとともに、病勢進行や死亡のリスクを60%低減。欧州でも4剤併用療法を申請中です。

 

皮膚

Zoryve|米アーキュティス

PDE4阻害薬roflumilast「Zoryve」は、クリーム製剤が軽症から中等症のアトピー性皮膚炎に適応拡大。対象は6歳以上の小児と成人で、1日1回患部に塗布します。同薬は22年にクリーム製剤が尋常性乾癬で、昨年12月にフォーム製剤が脂漏性皮膚炎を対象に承認。日本では今年4月に佐藤製薬がライセンスを取得し、脂漏性皮膚炎、アトピー性皮膚炎、尋常性乾癬などで開発を進める方針です。

 

消化器

Voquezna|米Phathom

プロントポンプ阻害薬「Voquezna」(vonoprazan fumarate、国内製品名・タケキャブ)は、新たに「非びらん性胃食道逆流症に伴う胸焼けの緩和」に使用できるようになりました。Voqueznaは昨年11月にびらん性胃食道逆流症の適応で承認。米国の胃食道逆流症患者の大部分は非びらん性といいます。今回、776人の患者を対象に行った臨床試験の結果をもとに承認されました。

 

アレルギー

Palforzia|スイスStallergenes

ピーナッツアレルギー治療薬「Palforzia」は1~3歳の小児に使用できるようになりました。同薬は20年、ピーナッツへの偶発的な暴露によって起こるアナフィラキシーなどのアレルギー反応を抑える治療薬として4歳以上の小児を対象に承認されていました。欧州でも対象拡大に向けた申請を行っています。

 

【バイオシミラー】韓国サムスンバイオのeculizumab

【2024年7月に米FDAが承認したバイオシミラー】〈製品名/一般名/社名/適応〉Epysqli/Eculizuma/韓国/発作性夜間ヘモグロビン尿症、非典型溶血性尿毒症症候群|※米FDA(食品医薬品局)や各社の発表資料をもとに作成

 

Epysqli|韓国サムスンバイオ

「Epysqli」は、抗補体(C5)抗体「Soliris」(eculizumab)のバイオシミラー。Solirisのバイオシミラーは米国で2剤目です。欧州でも承認されています。

 

AnswersNews編集部が製薬企業をレポート

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