2023年10月時点のコントラクトMRの稼働人数は4089人で、国内の全MRに対する比率(アウトソーシング率)は8.2%と過去最高だったことが、日本CSO協会の調査でわかりました。協会は11年の発足時から「欧米並みのアウトソーシング率10%」を目標に掲げており、悲願達成がいよいよ視界に入ってきました。
コントラクトMR、9年ぶり4000人超え
稼働コントラクトMR数が4000人を超えたのは、過去最高の4148人を記録した14年以来、9年ぶり。3年連続の増加で、23年度は前年から12.4%(452人)増えました。アウトソーシング率は前年から1.2ポイント上昇し、初めて8%を突破。こちらも3年連続の上昇となりました。
国内のコントラクトMR数は、09年度から14年度にかけて年平均16.2%増加しましたが、全MR数が同年度をピークに減少に転じたのに呼応する形で縮小傾向に。人員の調整弁的な役割もあり、14~18年度で年平均6.9%減少しました。その後も全MR数は減少が続いていますが、一方でコントラクトMRは18年度から23年度にかけて年平均5.6%増加しており、成長路線を取り戻しています。
CSO協会は23年度のコントラクトMR数の増加について「近年のコマーシャルモデルの見直しに伴うより戦略的なアウトソーシングの動きと、新興バイオファーマや医療機器などでの新たな需要が複合的に組み合わさったことで活用企業が拡大した」と分析。新型コロナウイルス感染症治療薬・ワクチンも需要拡大を後押ししました。
小規模企業でCSOの活用拡大
CSO活用する企業の数は185社(前年度比30社増)と過去最高を更新。特にMRが100人未満の小規模な企業が大きく伸びており、23年度は21社増えて105社と全体の約6割を占めました。
コントラクトMRの活用数を内資・外資に分けて見てみると、内資製薬企業では前年度から30.9%(473人)増の2002人となった一方、外資製薬企業は1788人で3.4%(63人)減少しました。内資でも早期退職が増え、流動性が高まっていることがうかがえます。
旺盛な需要を背景に、CSO各社はコントラクトMRの採用を強化しています。25年度の採用人数は前年度比44.6%(341人)増の1105人で、過去3番目の多さとなりました。
アウトソーシング率10%超「3年後にも」その先は…
CSO協会は11年の設立当初から「欧米並みのアウトソーシング率」を目指してきました。協会の昌原清植会長(MIフォース社長)は6月28日に開いた記者会見で「いよいよ欧米の10%超に近づいてきた。昨今の状況やCSOへの期待を考えると、5年後10年後ということではなく3年後くらいには十分達成する可能性がある」と話しまた。
CSO各社は製薬企業側のニーズを踏まえてサービスの多様化を図っており、アウトソーシングはマーケティングやメディカルなどにも拡大。コントラクトMRも、新製品発売時など一時的・集中的な活用から、リソースの一定割合を継続的にまかなうような形へと、活用の幅が広がっているといいます。
業界がベンチマークとしてきた米国のアウトソーシング率は11.9%(22年時点)。米国では2010年以降、総MR数が減少する一方でコントラクトMR数は増加し、アウトソーシング率は一時15%を超えましたが、その後低下し、17年以降はおおむね11%台で推移しています。昌原氏は「欧米のマーケットを見ていると、コントラクトMRは安定的な数になってきており、私たちもそういう方向になると思っている。急激に減るとか、急激に増えるということはなく、クライアント企業が一定程度、フレキシビリティのあるリソースを活用する流れが定着していく」と話し、アウトソーシング率10%あたりを目安として安定期に入っていくとの見通しを示しました。
「業務委託型」増やす
CSO各社は今後、従来の派遣型のサービスだけでなく、特定の製品や疾患領域、エリアなどを包括的に受託する「業務委託型」のサービスを増やしていきたい考え。記者会見では、CSO活用による製薬企業のコスト削減効果は派遣型(年間削減率16%)より業務委託型(23%)が勝るとのシミュレーションも紹介しました。
米国では、コントラクトMR数は頭打ちとなっている一方、業務委託型が主流となっており、MR以外のコマーシャル関連のアウトソーシングサービスも拡大していると言います。
CSO各社はサービスや人材をさらに充実・多様化させることでニーズを取り込んでいきたい考えで、昌原氏は「医薬品業界が変化していく中で、私たちも変化を続け、製薬企業のさまざまなニーズに応えたい」と話しました。