(写真:ロイター)
[ロイター]米FDA(食品医薬品局)は7月2日、米イーライリリーの早期アルツハイマー病治療薬を承認した。アルツハイマー病の新興を遅らせる治療法の承認は、エーザイのレカネマブ(製品名・レケンビ)に次いで2例目だ。
効果確認で治療中止が可能
「Kisunla」の製品名で販売されるドナネマブの承認は、FDAの諮問委員会の勧告に沿ったものだ。諮問委の専門家らは、早期アルツハイマー病患者に対する同薬の投与はベネフィットがリスクを上回るとし、承認を満場一致で支持した。
アルツハイマー病協会のジョアン・バイク氏は「複数の治療選択肢があることは、この困難で壊滅的な病気に悩まされる私たち全員が待ち望んでいた進歩だ」と喜んだ。
ドナネマブは、エーザイと米バイオジェンが販売する競合薬レケンビ(1年前に承認)と同様に、疾患の関連するタンパク質アミロイドβを脳から除去するよう設計されている。ドナネマブは、脳スキャンでアミロイドプラークの除去が確認された場合、投与をやめることができる。この点が両剤の大きな違いだ。
リリーはドナネマブの価格を1バイアルあたり695.65ドルに設定。年間で約3万2000ドル(約517万円)かかる計算だ。レカネマブは年間2万6500ドルで、ドナネマブのほうが高い。
BMOのアナリスト、エヴァン・セイガーマン氏は、この価格はアミロイドプラークの除去が確認された時点で治療をやめることができることを反映していると指摘した。
ワシントン大バーンズ・ジューイッシュ病院の神経科医、エリック・ムジーク博士は「臨床現場でどのように機能するかはまだ不明だが、費用を節約でき、患者もそれを喜ぶだろう」と指摘。「月1回という投与頻度と相まって、魅力的な選択肢になると思う」と話した。
リリーが行った大規模な後期臨床試験では、ドナネマブはプラセボと比較して病気の進行を29%遅らせた。患者の4人に1人に脳腫脹、3人に1人に脳出血が起こったが、ほとんどは軽度だった。
「市場シェアは拮抗」予想も
FDAは、レケンビと同様にドナネマブのラベルにも最も強い「囲み」安全警告をつけ、潜在的に危険な脳腫脹と脳出血のリスクを警告している。
ドナネマブは副作用の確認のために5回のMRIスキャンが必要だが、レカネマブは4回で済む。RBCキャピタルのアナリスト、ブライアン・エイブラハムズ氏は、設備が不足している施設ではレカネマブが有利になる可能性があると指摘した。
エーザイとバイオジェンは、週1回の皮下注射に加え、月1回の維持投与についてもFDAに申請している。
ドナネマブは主に、65歳以上の高齢者を対象とする公的医療保険メディケアに加入している患者が使用すると見込まれている。メディケアは昨年、FDAの正式承認を受けたアルツハイマー病治療薬をカバーし始めた。
モーニングスターのアナリスト、ダミアン・コノーバー氏は、ドナネマブのピーク時売上高は50億ドルを超え、「レケンビとほぼ均等に市場を分け合う」と予想している。
アルツハイマー病協会によると、米国では600万人以上がアルツハイマー病を患っている。
(取材:Julie Steenhuysen、Deena Beasley、Bhanvi Satija、Mariam Sunny/編集:Bill Berkrot/翻訳:AnswersNews)