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1年間「アドボカシー活動」をやってきて今思うこと|コラム:現場的にどうでしょう

更新日

黒坂宗久

今の会社に入り「アドボカシー活動」を仕事にするようになって、今月で1年がたちました。最初は右も左もわからず、「何とか1年やってこられたな」というのが今の偽らざる気持ちです。

 

私自身の変化

振り返ってみると、転職2カ月目の昨年7月、私はこのコラムでアドボカシーについてこのように書いていました。

 

「今の職場に入ってから、アドボカシーという言葉を自分のものにしたくて、社内のメンバーに『あなたにとってのアドボカシー活動を一言で表すとどうなりますか』と聞いて回りました。その中で私として1番しっくりきたのが『仲間を増やす活動』という答でした」

 

1年たってあらためて「アドボカシーとは何か」と自問してみると、「仲間を増やす活動」というのは間違っていないものの、それでは少し物足りないなと感じています。それは、「何のために」仲間を増やすのかが明らかでないからです。こんな風に思えるようになったのも、私の変化だと感じています。この1年、私は同僚たちとともに「目指すところは何なのか」を北極星にして活動してきましたし、それゆえに私自身が考えるアドボカシーを表現する言葉も変わってきました。

 

「『仲間を増やす』ことで私たちが考える社会課題の解決に向けた影響の輪を広げる『活動』」

 

アドボカシーとは何か、という問いに、今の私はこう答えます。1年前より語彙が増え、解像度が高まってきたように感じています。

 

思っていたのと違ったこと

正直に言うと舐めていたところもあり、特に入社して数カ月は非常に苦労しました。

 

私は当初、いろんな人と対話をして自分たちの思いを知ってもらうことがアドボカシー活動だと考えていました。でも、実はそうではないんです。そのことを理解するまでが苦労した時期だったなと今振り返って思います。

 

自分たちの思いを知ってもらうだけだと、自分の中の相手への問いがすぐになくなってしまうんですよね。問いの切れ目は縁の切れ目、です。そうではなく、「こんな未来になると素敵じゃないですか?そうなるためには今、何が課題になっていて、それに対して私たちには何ができるでしょうか?」といった具合に、同じ未来を思い描いた上で現実の問題を一緒に見つめていく姿勢が大切なんだということが、ようやくわかってきました。

 

これは単なる伝え方のスキルみたいな話ではなく、本当にその未来が素敵だと思っている自分が存在することも同時にすごく大切です。自分自身も登場人物の1人になって、なぜその未来が素敵だと思うのか、それはどんな体験や経験と結びついているのか、そうしたことを伝え、一緒に考えていくことが「『仲間を増やす』ことで私たちが考える社会課題の解決に向けた影響の輪を広げる『活動』」なんだと原稿を書きながらあらためて感じています。

 

「医薬品は人類を救う物凄く頼りになるものだということが、そろそろ多くの人に知られてもいいよね」

 

先日、前々職(クラリベイト・アナリティクス)時代の同僚と仕事で会う機会があり、こんなことを言われました。本当にその通りだと思います。着ている服、食べるもの、仕事で使うパソコン、生活になくてはならないスマホ…。こうしたものを作っている会社の名前はすぐに思い浮かびますが、薬はどうでしょうか。私たちはそういうことも考えていかないといけないよなと最近思うようになったところだったので、元同僚の言葉は胸に刺さりました。

 

2年目も相変わらず、いろいろな方とお話をしていくことになると思います。初めての方もいれば、ご無沙汰の方、よく会う方もいますが、皆さんからいただく言葉はいつも私を新しい世界に連れて行ってくれますし、自分にはない物の見方や考え方に触れる機会になっています。

 

そうした1つ1つのつながりが、この業界や社会をよい方向へと向かわせるきっかけになるかもしれません。

 

※コラムの内容は個人の見解であり、所属企業を代表するものではありません。

 

黒坂宗久(くろさか・むねひさ)Ph.D.。アステラス製薬ヘルスケアポリシー部所属。免疫学の分野で博士号を取得後、約10年間研究に従事(米国立がん研究所、産業技術総合研究所、国内製薬企業)した後、 Clarivate AnalyticsとEvaluateで約10年間、主に製薬企業に対して戦略策定や事業性評価に必要なビジネス分析(マーケット情報、売上予測、NPV、成功確率、開発コストなど)を提供。2023年6月から現職。SNSなどでも積極的に発信を行っている。
X:@munehisa_k
note:https://note.com/kurosakalibrary

 

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