(写真はいずれもロイター)
[ロイター]肥満症治療薬を開発・販売する米イーライリリーとデンマーク・ノボノルディスクの株価が急騰し、一部の高成長ハイテク株並みになっている。肥満症治療薬の市場は将来的に1000億ドルを超えるとも言われる。投資家はGLP-1受容体作動薬への爆発的な需要に賭け、昨年以降、この2銘柄に群がっている。
両社の株価は過去最高値付近で推移している。その企業価値はヘルスケア関連の同業に比べてかなり高くなっており、急騰しているテクノロジー株や成長株に匹敵する。
LSEGのデータによると、リリーの株式は向こう12カ月間の利益予想の56.17倍で取引されている。ノボの株価収益率(PER)は35.84倍だ。一方、S&P500ヘルスケアセクターのPERは18.7倍。人気の成長株であるテスラは57.78倍、エヌビディアは33.89倍となっている(いずれも2月20日時点)。
CIルーズベルトのシニアポートフォリオマネジャー、ジェイソン・ベノウィッツ氏は「リリーやノボが属する大型医薬品分野は一般的にはバリュー株だが、両社についてはグロース株と呼ぶのが適切だ」と話す。
リリーは先月、時価総額でテスラを抜き、米国9位の企業となった。ノボは昨年、仏高級ブランドのLVMHを一時的に欧州で最も価値ある企業の座から追いやった。
GIP/GLP-1受容体作動薬「マンジャロ」「ゼップバウンド」を製造販売するリリーの時価総額は、先週木曜日の終値時点で7190億ドル。LSEGのデータによると、GLP-1受容体作動薬「オゼンピック」「ウゴービ」を手掛けるノボの時価総額は、非上場分も含めて約5500億ドルとなっている。
LSEGのデータによると、リリーの売上高は今後3年間で76%増の603億9000万ドルに達すると予想されている。ノボの売上高は同期間に68%増の3億9000万デンマーククローネまで拡大する予想だ。
ウォール街のセルサイドアナリストの予測を平均すると、リリーの時価総額は向こう12カ月で7.4%膨らむ一方、ノボは3%下落する見通しだという。
CFRAリサーチのセル・ハーディ氏は、リリーの相次ぐ買収による多角化、研究開発への投資、抗がん剤の売り上げ増加が好感のポイントだと指摘する。同氏は「昨年以降、GLP-1ブームに押されて両社への関心が高まっているが、リリーはGLP-1の文脈にとどまらないと考えている」と話した。
株価上昇は、肥満症治療薬の成功と、ほかのポートフォリオを成長させる能力にかかっている。期待を裏切れば株価は反転する可能性がある。
B・ライリー・ウェルスのチーフマーケットストラテジスト、アート・ホーガー氏は「ほかの大ヒット薬と同様に、今後数年間で市場がどの程度になるか適切に見積もるのは難しい」と話す。AJベルのアナリスト、ダン・コーツワース氏は「生産能力拡大に伴うコスト上昇や、製品価格が急落する可能性を示す兆候」がリスクとして挙げられると指摘した。
(取材:Medha Singh/Manas Mishra、編集:Sweta Singh/Anil D’Silva、翻訳:AnswersNews)