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「一言で言えば失敗です」サワイGHDの澤井会長兼社長、米国撤退を語る

更新日

前田雄樹

「一言で言えば失敗です」。子会社を売却して米国事業から撤退することを決めたサワイグループホールディングス(GHD)。2月14日の決算会見で、澤井光郎会長兼社長が撤退について語りました。

 

 

誤算だった特許係争の長期化

サワイGHDが米国の後発医薬品メーカー、アップシャー・スミス・ラボラトリーズ(USL)を1155億円で買収したのは2017年。当時、国内の後発品市場は高成長を続けていましたが、使用割合が政府目標の80%に近づいていたことや、薬価の引き下げ圧力が強まっていたことから減速が見え始めていた時期でもあり、日本以外に成長の柱を求めての米国進出でした。

 

しかし、価格競争の激しい市場でUSLの業績は低迷し、22年3月期には米国事業で688億円の減損損失を計上。HD全体で283億円の最終赤字に沈みました。その後はコスト削減や開発戦略の見直しで収益の改善を図りましたが、23年10月、子会社・沢井製薬の九州工場(福岡県)で品質不正が明らかになり、万事休す。国内事業の立て直しを優先するため、今年1月、USLの売却を発表しました。

 

米国事業をどう総括するのか。2月14日の会見で問われた澤井氏は「一言で言えば失敗です。失敗というか、見込み違いをしてしまった。大きな反省を得た米国進出だった」と語りました。

 

パラグラフIVのピタバスタチン「当初予定では2~3年前に」

サワイは、強みとする特許調査力・分析力を生かして「パラグラフIV」にチャレンジし、独占販売することで収益を確保することを目論んでいました。パラグラフIVは、先発品の特許が無効・法的強制力がない、または後発品の製造・使用、販売によって侵害されることはないことを主張する宣言書。これを添付することで後発品メーカーは先発品の特許切れ前に後発品の申請を行うことができ、承認されれば180日間の独占販売権が与えられます。

 

澤井氏が語ったところによると、誤算だったのは先発品メーカーとの特許係争がサワイ側の思うように進まなかったこと。「もっとスピーディーに裁判が進み、われわれの目論んだ通りの上市ができると考えていたが、それが思うように進まなかった」(澤井氏)。USLは昨年11月、パラグラフIVで初めて承認を取得した高脂血症治療薬ピタバスタチンの発売にこぎつけましたが、澤井氏は「当初の予定では2~3年前には上市しているつもりだった」と振り返りました。

 

収益源として期待した新製品の発売が遅れる一方で、卸・薬局の統合によって誕生した購買グループがバイイング・パワーを強め、コスト競争力に勝るインド勢の参入もあって価格競争が激化。「(USLの製品の売り上げが)落ちることはある程度、見込んでいた。それをパラグラフIV品でカバーして成長させる計画だったが、(投入が)遅れたことで価格競争の影響だけが先に生じてきた」(澤井氏)。米国市場で生き残るにはさらなる投資が避けられず、国内の品質問題と需要増への対応を求められる中、日本事業への投資を優先する判断をしたと説明しました。

 

行政処分 業績への影響は

米国事業を手放したことで、サワイは日本事業に「全集中する」(澤井氏)ことになります。「国内で安定供給ができておらず、品質への信頼も回復していない。この2つのポイントをしっかり足場固めすることが最優先課題。ここに集中的に投資していく」(同)考えです。

 

沢井製薬の品質不正をめぐっては昨年12月、大阪府と福岡県が業務改善命令を出し、厚生労働省からは総括製造販売責任者の変更を命じられました。

 

2023年4~12月期の国内事業の業績は、売上収益1361億円(前年同期比10.4%増)、営業利益173億円(17.7%増)と増収増益を確保。現時点で業績に大きな影響が出ているわけではありませんが、沢井製薬の木村元彦社長(サワイGHD専務執行役員)は「MRは通常の営業活動というよりも信頼回復に向けた取り組みを行っている状況。新規採用の面で影響が出ているという報告もあり、今後そうした影響が出てくるかもしれない」とし、「再発防止策をしっかりやることで(影響を)最小限にとどめていきたい」と話しました。

 

国内市場が小さくなるわけではない

米国撤退を受け、サワイGHDは2030年度までの長期ビジョンで掲げた数値目標を見直し、新たな中期経営計画とともに6月に公表する予定。長期ビジョンでは30年度に売上収益を4000億円まで伸ばし、このうち600億円を米国で稼ぐとしていました。

 

次期中計では国内後発品事業中心の成長を描くことになります。澤井氏は「国内のジェネリックマーケットが小さくなるわけではない。高齢者の人口は減らないし、そういう意味では薬の量は変わらない。まだまだ低分子薬の特許切れも控えている」と指摘。国内事業のみで成長を確保していくことは可能だと強調しました。

 

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