(写真:ロイター)
[ロイター]WHO(世界保健機関)は、ノボノルディスク(デンマーク)の「オゼンピック」など減量作用のある糖尿病治療薬が昨年、世界的に品薄になったことに関連し、偽造品の報告が増えていると注意を呼びかけている。
WHOによると、GLP-1受容体作動薬と呼ばれるクラスに属するこの薬の偽造品は、SNSを含む無法状態のルートで販売または配布されることが多く、使用すれば深刻な健康リスクが生じる可能性がある。
WHOは「偽造医薬品は、効果がなかったり、毒性反応を引き起こしたりすることが知られている」と指摘。偽造品は無資格者によって不衛生な環境で製造され、細菌に汚染されている可能性があると付け加えた。
オゼンピックのほか、ノボの肥満症治療薬「ウゴービ」や米イーライリリーの同「ゼップバウンド」、糖尿病治療薬「マンジャロ」といったGLP-1受容体作動薬に対する需要は爆発的に増大しており、それが偽造品の世界市場の急成長を加速させている。
米国では昨年、偽造品と疑われるオゼンピックを使用した3人が、危険な低血糖で治療を受けた。オーストラリアやレバノンの保健当局も昨年、偽物のオゼンピックによって数人が低血糖を起こし、そのうち何人かが入院したと報告している。
GLP-1受容体作動薬はもともと、2型糖尿病の治療薬として開発されたが、満腹感を持続させることで食欲を抑制し、体重を減らす作用を持つ。臨床試験では15~20%の減量効果が示されている。
供給不足続く
2023年、米国ではノボやリリーのGLP-1受容体作動薬に対する需要に供給が追いつかない状況となった。両社は製造能力を強化しているが、この傾向は当面続くとみられている。
リリーのデイビッド・リックスCEO(最高経営責任者)は今月、今年のゼップバウンドの供給は需要を満たすのに十分ではない可能性があると述べた。ノボは昨年8月、ウゴービの供給制限は2024年まで延びる可能性が高いとの見通しを示している。
ウゴービは依然として、ほとんどの規格が米FDA(食品医薬品局)の不足品リストに含まれている。ゼップバウンドと有効成分を同じくするリリーのマンジャロも、一部規格が不足品リストに入っている。
WHOは、これらの医薬品の長期にわたる不足と偽造品の流通増加が、2型糖尿病患者に不均衡な影響を及ぼす可能性が高いと指摘している。WHOは、消費者に対して認可または規制された供給業者を通じて医薬品にアクセスするよう注意を呼びかけるとともに、医療専門家には適切な処方と流通慣行の遵守を求めている。
(取材:Patrick Wingrove、編集:Bill Berkrot、翻訳:AnswersNews)