製薬業界 2024年上半期の転職市場トレンド予測―MR・研究・製造で求人件数増える見込み

2024年上半期（1～6月）の製薬業界の転職市場のトレンドを、業界専門の転職支援サービス「Answers」「MRBiZ」（運営元：株式会社クイック）の専任コンサルタントが展望します。

転職市場は全体として堅調に推移

製薬業界の転職市場は、今年6月にかけて堅調に推移する見通しです。

前年比で求人件数の増加が見込まれるのは、MR、研究、製造。開発とマーケティング・メディカルは前年並みの求人件数になると予測しています。

過去2年間の製薬業界の転職市場を振り返ってみると、求人件数は全体として2年前（22年1月）を上回る水準で推移。特にMRや研究は昨年後半から企業の活発な採用活動が続いており、今年上半期もこの傾向は続きそうです。一方、開発の求人件数は昨年春以降、22年1月を下回って推移していて、マーケットは落ち着いていることがわかります。

それでは、ここから今年上半期の転職市場予測について、職種別に詳しく見ていきましょう。

【研究】求人件数はやや増加

研究職の採用トレンドは転換点にあると言えるでしょう。顕著なのは、ここ数カ月、内資系メーカーで募集が増えていることです。

日本企業の創薬力の低下が指摘される中、各社が研究戦略を再構築しており、それに伴って外部からの人材の採用が活発化。生え抜き重視の傾向に変化が出てきています。

企業が特に欲しがっているのは、バイオ医薬品や核酸医薬といった新規モダリティに強みを持つ人材や、オープンイノベーション、海外との共同研究をリードできる人材など。急激に求人が増えることは考えにくいものの、採用ニーズは継続的に伸びていきそうです。

【開発】求人件数は横ばい

開発職は昨年の市況感が続きそうです。CROではここ数年、医療系有資格者をターゲットに未経験モニター（CRA）の募集が活発ですが、今年上半期も高水準で推移する見通し。一方で、モニターの内製化を進めるメーカーからの募集も見込まれます。

全体としては堅調ですが、直近ではPV（ファーマコビジランス）のマーケットの動きが鈍くなってきている印象です。一部の業務を海外に切り出す企業が出てきているためで、新規求人でも求められる能力や役割に変化が見られます。今は過渡期ですが、マーケット全体のトレンドがどうなっていくか注視する必要がありそうです。

【製造】求人件数はやや増加

製造職の求人件数はやや増加しそうです。ほかの職種に比べて1求人あたりの採用枠が大きいため、求人件数以上に市場は活況となるでしょう。昨年は100人規模で採用を行った新薬メーカーもありました。明確な強みを持っている人にとっては転職を考えやすい市況感といえそうです。

採用トレンドを見てみると、新薬メーカーでは海外製造・生産に関わる査察対応・品質管理ができる人材や、新規モダリティ技術を持った人材にニーズが集中。一方、後発医薬品メーカーでは安定供給体制構築に向けた採用が続くでしょう。

【MR】求人件数は増加

2024年上半期のMRの転職市場は、活況だった昨年を上回る水準で推移する見込みです。組織立ち上げに伴う中～大型の採用が複数行われるとみられています。求人件数にどう表れるかはわかりませんが、募集人数は増加していきそう。CSOも堅調に推移する見込みです。

求人件数の増加を背景に転職を希望する人も増えてきており、マーケット全体としては買い手市場です。領域経験や年齢によっては応募できる求人が限られてしまうことも少なくありません。経験が足りなければ勤務地を幅広く検討するなど、戦略的に活動を進めることが必要となってきます。

【マーケティング・メディカル】求人件数は横ばい

マーケティング・メディカルは、昨年に引き続いて経験者優位のマーケットが続く見込みです。

MA・MSLは、昨年になってようやく、マーケットの土台が固まってきたと感じています。各社がメディカル職に求める役割やミッションを確立し、職務内容に即したポジションで募集が行われるようになりました。メーカーの採用は経験者が有利で、CSOがメディカルに参入しきていることもあり、未経験者採用には落ち着きがみられます。今年の上半期もこうした市況感が続くでしょう。

新規参入を見逃さずに

今年上半期は、MR、製造、研究を中心に中途採用のニーズが拡大していく見通しです。ここ数年は、毎年海外から日本に新規参入してくる企業があり、今年も各職種で日本法人立ち上げに伴う募集が出てくるかもしれません。応募のタイミングを逃さないよう、アンテナを高く張っておくことが重要です。

また、特にメーカーでは即戦力人材を求めるところが増えていますが、その分、企業側も情報をオープンにするようになってきていると感じています。人事はもちろん、部門側の担当者とカジュアルに話す機会が設けられることも珍しくはありません。

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（コンサルタント　永田雅実／吉田絃起）