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ニュース解説

治療薬の開発成功でアルツハイマー病ワクチンへの関心が再燃

更新日

ロイター通信

(写真:ロイター)

 

[シカゴ ロイター]最近の治療薬開発の成功により、アルツハイマー病に対するワクチンへの関心が再燃している。研究者や開発企業幹部によると、多くの人に安価で投与しやすい選択肢を提供できる可能性があるという。

 

米国の臨床試験データベースClinicalTrials.govを調べたところ、少なくとも7つのアルツハイマー病ワクチンの臨床試験が進行あるいは終了していることがわかった。研究段階ではさらに多くのプロジェクトが進行中だ。

 

有望視されたアルツハイマー病ワクチンに関する最初の試みは20年以上前にさかのぼる。このときは、研究に参加したボランティアの6%が髄膜脳炎を発症し、中止を余儀なくされた。研究者らはその後、より安全性の高いアプローチを模索し、高度に標的を絞った人工抗体を投与することで免疫機構を回避する方法に方向転換した。

 

エーザイと米バイオジェンが実用化した「レケンビ」(一般名・レカネマブ)と、現在米国などで規制当局の審査を受けている米イーライリリーのドナネマブは、アミロイドの除去が初期のアルツハイマー病に有効であることを示した。これらの成功は、アミロイド仮説に疑問符をつけた長年の失敗に続いて訪れた。

 

Vaxxinity(米)、AC Immune(スイス)、Prothena(アイルランド)といった製薬企業の研究者らは、最初のワクチン候補の失敗を踏まえ、過剰な炎症を回避しつつ免疫反応を引き起こすことを目指して開発を進めている。米FDA(食品医薬品局)は2つのアルツハイマー病ワクチン候補にファストトラックのステータスを与えている。申請されれば迅速に審査が行われるはずだ。

 

米ボストンの研究機関マス・ジェネラル・ブリガムのアルツハイマー病研究者、レイサ・スパーリング博士は、アルツハイマー病への注目が高まる中、ワクチンが重要な役割を果たすと指摘。「そこが私たちの進むべきところだと強く思っている」と話す。

 

スパーリング博士は、脳内にアルツハイマー病のタンパク質を持つ認知機能が正常な人を対象とした治験を主導している。彼女は、血中にアルツハイマー病のタンパク質が存在するものの、脳スキャンに記録されるほどではない無症状の人を対象とした次の研究も検討している。

 

アルツハイマー病ワクチンの研究開発はまだ初期の段階であり、効果を証明するには数年に及ぶ大規模な臨床試験を行う必要がある。

 

ワクチンが実用化されば、3カ月あるいは半年ごとの投与によって高額な月2回の点滴から患者を解放し、世界に3900万人いると推定されるアルツハイマー病患者にアクセスを開く可能性がある。米国立衛生研究所の神経疾患部門責任者、ウォルター・コロッシェッツ博士は「ワクチンはそれほど高価なものではなく、世界中で普及する可能性がある」と話す。

 

「門は開かれた」

Vaxxinityは、アルツハイマー病ワクチン候補「UB-311」の臨床第2相(P2)試験を完了しており、世界で最も開発が進んでいる可能性がある。CEO(最高経営責任者)のメイメイ・フー氏は、レケンビの成功によって長らく疑問視されていたアミロイド仮説が検証されたと指摘。「特定の悪い形態のアミロイドをノックアウトすれば臨床転帰に効果が得られることがわかった。これは驚くべきことだ」と語る。

 

同社は8月、台湾で43人を対象に行ったP2a試験のデータを発表した。それによると、投与後78週間の忍容性が確認され、ほぼすべての被験者で抗体反応が見られた。脳の腫れはなかったが、14%(6)人が脳出血を発症した。

 

同社は、より大規模な検証試験に資金提供してくれるパートナーを探している。フー氏によると、ここ数年は「極寒だった」が、「(レケンビの)承認よって門は開かれた。より多くの熱意と投資がこの分野に向くようになっている」という。

 

20年以上前に研究された最初のアルツハイマー病ワクチンは、有効性の兆しを示したものの、制御不能なT細胞の反応も引き起こした。

 

現在、研究されている新たなワクチン候補は、抗体を産生する免疫細胞であるB細胞を標的としている。米南カリフォルニア大のマイケル・ラフィー博士によると、AC ImmuneのワクチンはB細胞だけを活性化する。ラフィー氏が主導したP1試験では、同社のワクチンは髄膜脳炎を引き起こさかなったものの、免疫反応を示した被験者は一部にとどまった。同社は現在、改良版のテストを進めている。

 

AC Immuneはタウを標的としたワクチンについて米ジョンソン・エンド・ジョンソンと協力している。10年前にスピンアウトによって誕生したProthenaは、アミロイドβとタウの両方を標的とするワクチンの治験を来年開始したい考えだ。同社はアミロイドβ抗体と抗タウ抗体も持っている。前者はP1試験を行っており、後者は米ブリストル・マイヤーズスクイブにライセンスを供与している。

 

Prothenaのジーン・キニーCEOは、未発症の人にとってはワクチンが理想的だと指摘。「求められているのは発症を防ぐことだ」と話した。

 

(Julie Steenhuysen/編集:Caroline Humer、Bill Berkrot/翻訳:AnswersNews)

 

AnswersNews編集部が製薬企業をレポート

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