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[ロイター]デンマーク・ノボノルディスクと米イーライリリーは、糖尿病や肥満症の治療薬として販売しているGLP-1受容体作動薬の驚異的な売れ行きが今後も続くと予想しているが、入手可能性が唯一その制約になるかもしれない。
両社は世界的な肥満症治療薬ブームを追い風に市場価値を急上昇させた。ヘルスケア業界だけでなく、甘いスナック菓子、栄養補助食品、加工食品の販売業者に対する期待も再構築している。
需要急増に供給追いつかず
11月2日に発表された直近の四半期決算によると、ノボの「ウゴービ」「オゼンピック」とリリーの「マンジャロ」は、いずれも予想を上回る売り上げを記録。両社は需要の急増に製造が追いついていないと述べた。
マンジャロは現在、2型糖尿病に対してのみ承認されているが、年内に米国で肥満症への使用が承認される見込みだ。同薬は減量目的での適応外使用が増えており、肥満症治療薬として承認されれば需給はさらにタイトになる可能性がある。
今年、仏高級ブランド大手モエヘネシー・ルイヴィトン(LVMH)を抜いて時価総額で欧州最大の企業となったノボは、23年第3四半期に過去最高の営業利益を記録。ウゴービの売上高は前四半期比28%増の13億6000万ドルに達した。BMOアナリストのエヴァン・セイガーマン氏は「現時点では、市場は供給主導だ」と指摘する。ノボは、同じセマグルチドを有効成分とするウゴービとオゼンピックについて、24年も2桁の売り上げ成長を見込んでいる。
リリーは現在、時価総額5260億ドルと世界で最も価値のあるヘルスケア企業となっている。マンジャロは今年第3四半期に14億1000万ドルを売り上げ、四半期ベースで初めて10億ドルを突破した。同社は23年末までに供給能力を昨年の2倍にすることを目指している。
リリーのアナト・アシュケナージ最高財務責任者(CFO)はインタビューで「われわれが行っているあらゆる投資と生産計画を考慮すれば、(マンジャロ)への需要はかなり大きくなると予想される。そのため、しばらくの間は逼迫した状況になる可能性がある」と述べた。
ノボは今年5月、米国でウゴービを使用する新規患者の数を制限した。CFOのカルステン・ムンク・クヌッセン氏はンタビューで「24年は今年に比べて供給量が大幅に増えるだろう」と語った。
「新患制限、解除はいつか」
ウゴービとマンジャロの成功によって両社の株価は買い狂いを引き起こし、今年に入ってノボの株価は47%、リリーは52%上昇した。両社は競合他社をはるかに上回る株価収益率(PER)を誇っており、ノボは46.5倍、リリーは77倍と非常に高い。LSEGのデータによると、ほとんどの大手製薬企業のPERは10~20倍だ。決算発表後、ノボの株価は3%、リリーは4%上昇した。
ノボ ノルディスク株を保有するソーンバーグ・インベストメント・マネジメントのポートフォリオマネジャー、ニコラス・アンダーソン氏は「投資家が最も気にしているのは、ウゴービの供給量がいつになったら増えるのか、新規患者の受け入れはいつになったら再開されるのかということだ」と指摘する。
ウゴービとマンジャロの急成長は、糖尿病や睡眠時無呼吸症候群など肥満に関連する疾患から利益を得てきたヘルスケア企業の株を売却するよう投資家らに促している。いくつかの食品会社や包装会社も肥満症治療薬によって影響を受ける可能性がある。
米ジョンソン・エンド・ジョンソンは先月、肥満症患者の多くが薬を使うようになったため、減量手術に使われる医療機器の販売が打撃を受けたと報告した。Iシェアーズ・メディカルデバイス上場投資信託は年初から12%下落し、インベスコ・フード・アンド・ビバレッジETFは8.3%下落している。
米小売最大手のウォルマートは10月初め、減量薬の成功によって食品消費が若干後退していると発表した。アナリストらは、ウゴービやマンジャロが入手しやすくなれば、食品会社が打撃を受ける可能性があると指摘している。
(Jacob Gronholt-Pedersen、Bhanvi Satija、Patrick Wingrove、Maggie Fick、David Gaffen/編集:Bill Berkrot/翻訳:AnswersNews)