ファイザーとビオンテックの新型コロナワクチン(ロイター)
[ロイター]米ファイザーが13日に発表した2023年12月期業績の下方修正は、新型コロナウイルス感染症ワクチン・治療薬の将来市場に対する新たな懸念を呼び起こし、提携先の独ビオンテックやライバルである米モデルナの株価を下げた。
ワクチンメーカーは需要の多くを米国市場に依存している。ほかの国では、接種の取り組みが米国に比べて限定的だからだ。ビオンテックとモデルナ、そして米ノババックスにとっては、コロナワクチンが唯一つの承認された製品だ。
ファイザー 35億ドルのコスト削減打ち出す
ファイザーの発表を受け、ビオンテックの株価は16日のフランクフルト市場で7.2%下落した。ニューヨーク市場ではモデルナ株が5%下げ、ノババックス株も7%下落した。
一方、ファイザーの株価は5%近く上昇した。コロナワクチン・治療薬の売上高予想の下方修正と同時に発表した35億ドル(約5200億円)のコスト削減計画が好感された。
ファイザーは13日、コロナ向け抗ウイルス薬パクスロビドの23年の売上高予想を70億ドル下方修正し、ビオンテックと共同開発したコロナワクチンの売上高予想を20億ドル引き下げた。
同社のアルバート・ブーラCEO(最高経営責任者)は16日早朝に開いたアナリストとの電話会議で、今秋冬の米国の接種率は前年並みの17%程度になるものの、21年春に始まった最初の接種キャンペーンをはるかに下回ると予想していると語った。ファイザーは今秋冬の需要が今後の市場のベースになると見ており、接種動向を注視しているが、ブーラ氏は「米国は『コロナ疲れ』の真っただ中にあり、誰もがこの病気のことを忘れたがっている」と話した。
モデルナは据え置きも達成には懐疑的な見方
一方、モデルナは16日、今年のコロナワクチンの売上高予想について、従来の60~80億ドルに据え置くと発表した。
モデルナを「アンダーパフォーム」と格付けしている米投資銀行リーリンク・パートナーズのアナリスト、マニ・フォルーハー氏は、現在のワクチン接種のペースを踏まえると実際の売上高はモデルナの予想には届かないとの見方を示した。米国の今秋冬の接種回数は、これまでのところ700万回にとどまっている。
同氏はモデルナの支出率を懸念しており、バランスシート上の現金が今期末に100億ドルを切る可能性があると述べ、コスト削減を強化する必要があるかもしれないと付け加えた。モデルナからのコメントは得られていない。
在庫評価損計上へ
収益の多くをファイザーからの利益分配金に依存しているビオンテックは、コロナワクチン関連で最大9億ユーロ(約9億4700万ドル)の在庫評価損が発生すると発表した。ファイザーも13日に同規模の評価損計上を発表している。ビオンテックは、ファイザーからは償却のほとんどは原材料や最新版ではない従来のワクチンに関連するものだと聞いているとした。
ファイザーは13日の発表で、23年第3四半期(7~9月期)決算に、現金支出を伴わない帳簿上の費用として55億ドルを計上する方針だが、ここにはパクスロビドの在庫評価損46億ドルが含まれている。
ビオンテックの広報担当者は16日、同社の23年通期業績予想についてコメントを避けた。同社は11月6日に第3四半期決算の発表を予定している。
LSEGのデータによると、今年37%下落しているファイザー株は12カ月予想利益の9.8倍で取引されているのに対し、ビオンテックは26.7倍で取引されている。
(Ludwig Burger、Rachel More、Michael Erman、Bhanvi Satija、Manas Mishra/編集:Jonathan Oatis、Caroline Humer、Bill Berkrot/翻訳:AnswersNews)