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ニュース解説

MR「5万人割れ」が浮き彫りにする現状

更新日

穴迫励二

MR認定センターが、2023年版の「MR白書」を発表しました。22年度(23年3月末)のMR数は4万9682人(前年同期比2166人減)と5万人を割り込み、減少傾向に歯止めがかかりません。白書からは、市場環境が変化する中でMRの置かれた現状が浮かび上がってきます。

 

 

続く早期退職、減少に歯止めなし

MR数が減少するのは9年連続で、その直接的な要因の1つが製薬企業で相次ぐ早期退職にあることは明白です。この1年間を見てみても、外資系を中心に複数の企業が早期退職を実施。ファイザーは営業部門を対象に470人の退職者を募集し、1300人いたMRが半減したと言われています。バイエル薬品も480人の退職者を募っており、同社のMR数も大きく減少しそうです。グローバルの方針を受けたノバルティスファーマは19年から4年連続で行っており、業績好調な中で「ポジションクローズ」の形をとったヤンセンファーマは300人以上が退職したと伝えられています。

 

こうした流れはしばらく続くとみられ、今年4月には中外製薬が募集人数を定めず早期退職者を募集。その結果、347人が応募し、このうち150人をMRが占めました。同社は22年12月期まで6期連続で過去最高業績を更新。従業員の平均年収も業界トップクラスの水準まで上昇しています。にもかかわらず、150人ものMRが早期退職に手を挙げるという現実に、MRという職種の将来に対する不安感を垣間見ることができます。

 

塩野義製薬も今月10日、一部の幹部職層やマネージャーを除く社員を対象に早期退職プログラムを実施すると発表。募集人数は約200人です。大正製薬ホールディングスも詳細は明らかにしていないものの早期退職者の募集を行っており、両社でもMRの減少が予想されます。早期退職では会社が想定する人数を上回る応募があることも珍しくなく、募集開始当日に会社が示した募集人数を超えたケースもあります。MR数の下げ止まりはまだ見えてきません。

 

1人あたり生産性は向上

一方で、MR1人あたりの生産性(国内医療用医薬品の売上高をMR数で割って算出)は17年度以降、上昇を続けています。21年度は薬価ベースで2.06億円と初めて2兆円を突破しましたが、22年度はさらに2.21億円まで伸びました。国内医療用医薬品市場が2.6%増加した一方、MR数は4.2%減少したためで、生産性は6年連続で過去最高を更新。10年前の12年度と比べると生産性は5割ほど上昇しています。

 

【国内医療用医薬品市場とMR数・生産性の推移】<年度/MR数(万人、左軸)/国内市場(兆円、左軸)/生産性(億円、右軸)>12/6.3846/9.5601/1.5|13/6.5752/10.0165/1.52|14/6.4657/9.9587/1.54|15/6.4135/10.8378/1.69|16/6.3185/10.4307/1.65|17/6.2433/10.5155/1.68|18/5.9900/10.3293/1.72|19/5.7158/10.6294/1.86|20/5.3586/10.3476/1.93|21/5.1848/10.6887/2.06|22/4.9682/10.9688/2.21|※MR認定センター「MR白書」とIQVIA国内医薬品市場統計をもとに作成/生産性は編集部算出

 

関連記事:2億円突破したMRの生産性…市場停滞で削減はどこまで進むのか

 

MR数の推移を内資系・外資系に分けてみると、10年前との比較では内資が22.5%(8239人)、外資が28.9%(6831人)減少しています。いち早く人員の適正化に着手したのは外資で、ほとんどの大手はこの10年年間で早期退職者の募集を複数回行ってきましたが、この5年間は内資の減少が目立ちます。

 

【内資/外資別MR数の推移】|※MR認定センター「MR白書」をもとに作成<年度/内資系(万人)/外資系(万人)>12/3.6604/2.366213/3.7085/2.4047|14/3.7485/2.2960|15/3.7493/2.2552|16/3.6844/2.2217|17/3.6721/2.1973|18/3.5455/2.0763|19/3.3463/1.9711|20/3.1501/1.8101|21/3.0322/1.7512|22/2.8365/1.6831|※MR認定センター「MR白書」をもとに作成

 

新卒のMR採用となると、内資と外資の差はより明確になります。内資で23年度の新卒MRを採用した企業は全体の46%だったのに対し、外資は17%にとどまりました。新薬開発パイプラインとの兼ね合いもありますが、外資のほうが日本市場の将来に対してより慎重に構えているようにも見えます。

 

【MR新卒採用を行った企業の割合】内資/採用した/46/採用しなかった/54/外資/ 採用した/17/採用しなかった/83|※MR認定センター「MR白書」をもとに作成

 

「Web・電話のみで活動するMR」は微増にとどまる

薬剤師資格を持つMRの数も減少傾向にあります。22年度は4311人で全体の8.7%と過去最低の水準まで減少しました。要因は明確ではありませんが、MR認定センターは薬学教育が6年制になったこととある程度、関連があると見ています。薬学教育が薬剤師の養成に舵を切ったことで、製薬企業への就職がかなり減ったイメージがあると言います。

 

新薬が高度化・専門化する中、薬剤師資格を持つMRを増やすことで医療への貢献度は高まるはずです。しかし、現実は逆の方向に進んでおり、今後、課題になってくるかもしれません。

 

【薬剤師資格を持つMR数の推移】<薬剤師資格を持つMR数(人、左軸)/全MRに占める割合(%、右軸)>12/6459/10.1|13/6253/9.5|14/6066/9.4|15/6244/9.7|16/6446/10.2|17/5825/9.3|18/5153/8.8|19/4997/8.9|20/5276/10.1|21/4862/9.4|22/4311/8.7|※MR認定センター「MR白書」をもとに作成

 

一方、コントラクトMRの数は前年度比462人増の4409人で、過去最高になりました。日本CSO協会は6月1日に市場規模調査の結果を発表し、コントラクトMRが増加した要因として製薬企業のMRが想定以上に早期退職に手を挙げたことや、新興バイオファーマの日本進出を挙げています。ただし、19~21年度は横ばいで推移しており、このまま増加傾向が続くかは不透明なところです。

 

「2~3割増」の予想に反し

やや意外だったのは「Webまたは電話のみで活動するMR」が、あまり増えていないことです。このカテゴリは22年版(22年3月末時点の調査)からの集計ですが、人数は398人から412人へと14人(3.5%)の増加にとどまりました。増加分は薬剤師資格保有者がまかなっています。

 

直接医療機関を訪問しないデジタル専任のMRは、数年前から「オンラインMR」「e-MR」といった呼称で各社が導入。コロナ禍で情報提供活動のあり方が変化する中、増加が予想されていました。

 

MR認定センターも「2~3割は増えていると思っていた」としていますが、実際は予想に反して微増にとどまり、MR全体に占める割合も1%に満たないのが現状です。アステラス製薬のオンラインMRのように、21年6月に11人でスタートして現在は30人まで増員したケースもありますが、全体的には足踏み状態です。拡大に向けて、何らかのボトルネックが存在しているのかもしれません。

 

【Web/電話の活動のみを行うMR】<21年度/22年度/増減>全体/398人/412人/14人増|うち薬剤師/28人/43人/15人増|※MR認定センター「MR白書」をもとに作成

 

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