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Axcelead 創薬支援ビジネス、規模拡大への戦略は―山田伸彦新社長に聞く

更新日

前田雄樹

4月に経営体制を刷新し、「グローバルなCRDMO」に向けて規模拡大を目指す姿勢を鮮明にしたアクセリード。その中核的な事業会社として創薬支援を手掛けるAxcelead Drug Discovery Partnersの社長に就任した山田伸彦氏に、CRO事業の拡大に向けた戦略を聞きました。

 

欧米メガファーマとも取引

――5月にAxceleadの社長に就任しました。今後の話をうかがう前に、まず足元のビジネスの状況について教えてください。

2022年度は100億円弱の売り上げ計画を少し上回って着地しました。利益についても数億円の営業利益を達成しています。Axceleadは創薬プロジェクトを請け負う「創薬ビジネス」と薬物動態スクリーニングなど技術的な部分を請け負う「プラットフォームビジネス」の2本柱で事業を展開していますが、22年度は前者がぐっと伸びて、後者も安定的に推移しました。22年は特に海外で大きな契約ができるようになったのがポイントで、欧米のメガファーマともいくつか取引できるようになりました。

 

欧米メガファーマとの取引が増えた背景には、われわれが英語での情報発信を強化したこと、地域的リスクを踏まえて委託先を見直す流れの中でわれわれに注目してくれる企業が出てきたことが挙げられます。

 

売上高に占める海外の割合は2割ほどで、ベースはやはり国内です。国内では創薬にある程度投資している製薬企業はほぼ網羅していますが、大手といえども創薬プロジェクトを毎年複数進めるということはないので、中堅も含めて入れ替わりでプロジェクトを受託している状況です。われわれとしては日本発の新薬を増やしていくためにもAxceleadをもっと使って欲しいと思っていますし、国内の売り上げもまだ伸ばすことはできると思っていますが、一方で海外にも軸足を置いていかないと今後の成長は難しいだろうという感触も少しずつつかんできています。海外への販路拡大が課題ですね。

 

――持株会社アクセリードの池浦義典社長が4月の就任記者会見で「CRO(創薬支援)事業で1000億円、CDMO事業で300億円の売り上げをできるだけ早期に達成したい」との目標を示しました。アクセリードは将来的にグループの研究者を5000人まで増やすことも目指していますが、中核的な事業会社としてそれらの目標にどうコミットしていきますか。

私は持株会社の取締役としてグループ全体のCRO事業を統括する立場にもありますので、そういう意味でいうとグループ全体としてはオーガニックで拡大していく部分とインオーガニックで拡大していく部分があると思います。

 

オーガニックについては、Axceleadとして製薬企業での経験値の高い創薬研究者を、若い人も含めてどんどん採用していきます。グループ全体としてはCROビジネスを世界で存在感のあるものにしていくという方針なので、そこは帝人との合弁会社のような取り組みを行ったり、もう少し大胆なM&Aを行ったりするなどして人員の拡大を図っていくことになります。

 

採用の方針としては、マネジメントがある程度できる人とそうでない人をよく見極めて採用すること、グループ単位でどの機能を拡大していくのかということを考えて人員を増やしていくことの2点を重視しています。特に、リーダーシップをとれる人は製薬会社である程度の経験を持った人なので、そういう人は多少人員計画を上回っても良い人がいれば採用するよう言っています。

 

関連記事:アクセリード、成長へ踏み込むアクセル…規模拡大で「世界的CRDMOに」

 

山田伸彦(やまだ・のぶひこ)Axcelead Drug Discovery Partners代表取締役社長。1986年武田薬品工業入社。2013年同社医薬営業本部営業企画部長、15年同社R&D Transformation Office Japan Head。17年に池浦義典前社長(23年4月からアクセリード社長)とともにAxceleadの前身を立ち上げ、18年12月にAxcelead取締役COOに就任。23年5月から現職。

 

将来的には海外にも拠点

――売り上げ拡大に向けてはどんなことに取り組んでいきますか。

将来的には、持株会社がリードする形で米国や欧州にも拠点を設けていこうと考えています。

 

ただし、創薬支援ビジネスを展開していく上で、どの機能をどこに置くかということについては、マーケットの特性も踏まえてAxceleadのほうでよく考えないといけない。Axceleadの強みはターゲット探索やライブラリ、ハイスループットスクリーニングですが、そういった機能はグローバルで集約して日本に置いておくべきだろうと思っています。

 

将来的に持株会社のIPO(新規株式公開)を起点にして、M&Aも含めて拠点を増やしていくことになるでしょう。

 

――国内はどうでしょうか。

先ほどお話した通り、国内で創薬にある程度投資している製薬企業はほぼ網羅できているので、あとはそれをどう深耕させていくかだと思っています。

 

ドラッグディスカバリーを外部を使って変動費化させていくところで言うと、今の各社のお金の使い方を見ていると、どこかで頭打ちになる時がくる。そこで帝人と進めている合弁会社のような形が広がっていくと、オープンイノベーションが進んでAxceleadの活用機会も増え、収益性も高まると考えています。

 

――今後、どんな創薬機能やモダリティを強化していきますか。

私は、モダリティはそれほど広げなくてもいいと考えています。低分子は“オワコン”ではないと私も本気で思っていますので。製薬企業は昨今、低分子以外のモダリティへの投資を強化していますが、逆に低分子への力を抜いてもらった方がわれわれとしては生き残っていけるという面もあります。

 

創薬機能については、私はやはりターゲットとヒット化合物が命だと思っていますので、そこはキャパシティも含めて投資をしていきます。Axceleadを日本のスクリーニングセンターにするとかですね。それをしようと思うとかなりやらないといけませんが、それを持っていると世界で使えるので、そこは日本である程度、強化していったほうがいいと思っています。

 

非サイエンティストであることをプラスに

――クライアントである製薬企業のニーズや意識に変化はありますか。

私としては大きな変化は感じません。国内の製薬企業の研究部門は機密重視で閉鎖的な文化のところもあり、「外部を積極的に使ってでもやっていこう」というところは少ないのが現状です。ただ、科研製薬のようにAxceleadを創薬エンジンといった形で積極的に使う会社もありますし、協和キリンとも協業して創薬技術開発に取り組んでいます。そういった意味では、自社を超えてアプローチする会社も少しずつ増えてきていると思っています。

 

日本の製薬企業は、研究にもっとフレキシビリティをもたせるべきだと思います。そのためにはコストを変動費化すべきだし、そうしていかないと日本の創薬力は上がっていかないのではないでしょうか。さまざまな部分でさまざまなサービスプロバイダーを使っていく必要があると思いますので、 Axceleadもそこで役に立ちたいです。

 

――個人的には、サイエンスの出身でない山田社長が研究者集団をどう率いていくのか、興味があります。

気負うところは何もありません。このビジネスで、純粋にサイエンスでジャッジをする場面って、実はあまりないんですね。逆にそのあたりは研究者にお任せしますと。「素人は口出しをしてはいけない」というのが私のポリシーです。

 

ただ、拡大路線をとり、(持株会社が)IPOをしていくという、会社としてステージが変わっていくところなので、社員の意識もそういう方向に向くようにしてはいきたいと思っています。

 

コミュニケーションは意識していて、研究者の中に混じって仕事をしたりもしています。研究者同士の関係性で池浦(前社長)には言いにくかったことも、私になら相談してくれるかもしれない。私自身、研究出身でないことをマイナスだとは思っていませんし、逆に違った面でのプラスは絶対にあるだろうと思っています。

 

――社長就任後、ADDPのYouTubeチャンネルで山田社長が研究者にインタビューする新コーナー「Axcelead解体新書」を始めましたね。

ストーリーは研究者たちが考えているんですが、Axceleadにはアピールしたくてたまらない研究者がたくさんいるんです。積極的に発信しようと皆が積極的に動いてくれるので、すごくいいなと思っています。

 

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