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ニュース解説

データとデジタルの活用に焦点…2年目迎えた武田の学生インターン、その狙いは

更新日

穴迫励二

武田薬品工業が、グローバル人材育成の一環として学生を対象としたインターンシッププログラムを展開しています。データとデジタルを活用してビジネス課題の解決策を立案するなど実践的な内容で、2回目となる今年は5月の大型連休明けから動き始めています。

 

 

ビジネス・チャレンジを勝ち抜いた6人が参加

武田が2022年から行っているこの取り組みは、「タケダ・デジタル・アクセラレータープログラム」と呼ばれています。全体の流れは、(1)学生を対象に説明会を開き、参加希望者を募集、(2)書類や面接による選考で選ばれた12人が実際の事業活動で生じる課題の解決(ビジネス・チャレンジ)に挑戦し、武田の役員を相手にプレゼンテーションを実施、(3)ビジネス・チャレンジを勝ち抜いた6人が有給のインターンシッププログラムへの参加資格を得る――というものです。

 

【2023年度のアクセラレータープログラム】3月15日/説明会(英語)|3月17日/説明会(日本語)/応募締め切り/面接で12人を選出|5月24日/ビジネス・チャレンジ開始/最終選考で6人を選出|8月中旬/インターンシッププログラム開始/1月末/終了|※武田薬品提供の資料をもとに作成

 

今年は3月15、17日に日本語と英語で説明会を実施。学業と並行してハードなプログラムをこなさなければならない点でハードルが高く、応募したのは50人程度でした。応募者の専攻は工学や経済学のほか、データサイエンスやリベラルアーツ関連など多種多様。武田によると、今年は昨年と比べてデータサイエンスを志向する学生の応募が増えたといいます。

 

役員相手にプレゼン

そこから選ばれた12人が参加するビジネス・チャレンジは、7週間の日程で5月24日にスタートしました。ビジネス・チャレンジは、ファイナンスやデータ&デジタルの専門性、英語力、発想力・企画力、多様性のあるグループで力を発揮する協調性やリーダーシップなど総合的な力を問うもので、3人ずつ4つのグループに分かれて同じテーマを議論。あわせて、ロボティクス・プロセス・オートメーション(RPA)を活用するためのワークショップや、データ分析ツールの習得やプレゼン力向上のためのトレーニングなど、ビジネスに必要なスキルを身につけられる機会も提供します。

 

最終的には、実際のビジネスケースに対してどのようなソリューションを提供すれば業務改善できるかを提案してもらいます。昨年は6月末に具体的な成果物が出来上がり、コスタ・サルウコスCFO(最高財務責任者)を相手にプレゼンを行いました。

 

昨年の「ビジネス・チャレンジ」の様子。3人1組で業務改善策を検討し、役員を相手にプレゼンを行った(武田薬品提供)

 

ビジネス・チェレンジを経て最終的にインターンシッププログラムに進む6人は、それぞれのキャリア志向を確認した上で、「管理」「テクノロジー」「国内事業」といた社内の各部署に配属。たとえば債権管理や請求・支払いといった実際の業務に触れながら社員をサポートするなど、より実践的な内容に取り組みが開始されます。

 

「質の高さは申し分ない」

「質の高さは申し分のないレベルで、当社から見ても刺激的」。ビジネス・チャレンジに進んだ12人の学生について、アクセラレータ・プログラムを展開するタケダ・ビジネス・ソリューションズ(TBS)の図師康剛ジャパンヘッドはこう話します。

 

インターンシッププログラムは8月の盆明けに始まり、期間は原則的に翌年1月までの6カ月間。学業や就職活動との両立を考慮し、週20時間を上限に3カ月を1単位としています。学業と並行して長期間、多くの時間を割くことに負担を感じる学生もいる一方、昨年の参加者6人のうち2人は12カ月間を希望して現在もインターンシップを続けています。

 

武田薬品がアクセラレータ・プログラムを導入した背景には、事業環境が大きく変化する中、日本発のグローバル製薬企業としての責任を果たすことがパーパス(存在価値)だという認識があり、そのために多様な人材を取り込んで新たな組織体制を構築する必要があるといいます。

 

ビジネス・チャレンジやインターンシッププログラムに進んだ学生には、指導役(メンター)として20人の社員を配置しており、会社としてはこれらの社員に次世代の人材をけん引するリーダに育ってほしいと期待しています。参加する学生のポテンシャルが高いだけに、メンター側の緊張感も高まります。

 

メンターの社員(右)による指導の様子(武田薬品提供)

 

入社には直結せず

ビジネス・チャレンジに進んだ12人は、多くが武田への入社を希望しているようです。ただ、それを確約することはできないため、通常の新卒採用に応募してもらい面接を経て判断します。武田への入社が目的ではなく、コンサルティング業務の経験を望む学生もいて、こうしたケースでは他社で一定のキャリアを積んだ後の入社も見据えるなど、長期的な視点で構えています。

 

学生は一連の流れをどう評価しているのでしょうか。TBSの塚本享ディレクターは、学生の意見は大きく3つに集約されると言います。1つは国際的なコミュニケーションの違いを超えてソリューションにたどりつける道筋が学べたこと。もう1つはメンターによるアドバイスで足りない部分が自覚できたこと。最後は、チームで実現することで充実感を得られたことだと説明します。

 

【アクセラレータープログラム/参加する学生のベネフィット】メンター/ビジネス・チャレンジを通じてメンターが助言・指導|プレゼンテーション/分析したデータを用いて提案したデジタルソリューションをプレゼンテーション|グループワーク/チームワーク力を身につけ、ビジネスリーダーとして活躍|継続的改善/ビジネスケースを解決する中で方法論を習得|Lean/Six/Sigmaのホワイトベルトを獲得|ソフトウェアトレーニング/PowerBi、UiPath、StudioXなどのトレーニングを実施|認定証・インターンシップ/チャレンジ完了後、認定証を入手/選抜された学生は6カ月間のインターンシップに参加|※武田薬品提供の資料をもとに作成

 

武田薬品は「データ&デジタルによってイノベーションを起こす」ことを企業理念に掲げています。近年重視されている人的資本の充実に向け、データとデジタルの力を底上げする人材戦略の展開が進んでいるようです。

 

AnswersNews編集部が製薬企業をレポート

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