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欧米製薬大手、M&Aに積極姿勢…決算発表で幹部が相次ぎ言及

更新日

ロイター通信

(写真:ロイター)

 

[ロイター]米メルク、同アッヴィ、英アストラゼネカといった欧米の大手製薬企業が、M&Aに積極的な姿勢を示している。将来に向けて新たな収益源を探す中、各社の研究開発費は増加している。

 

メルクCEO「あらゆる分野でディール行う」

アッヴィの主力品「ヒュミラ」など各社の収益を支えるいくつかの大型製品は、すでに後発医薬品やバイオシミラーとの競争に直面していたり、向こう数年の間に特許切れを控えていたりする。そうした製品を抱える企業にとって買収は、売り上げの減少に対処するための近道となり得る。

 

メルクは最近、米バイオ医薬品企業プロメテウス・バイオサイエンスを108億ドルで買収すると発表した。

 

メルクのCEO、ロバート・デイビスは「われわれは、短期的・長期的なパイプラインの構築に重きを置いており、あらゆる分野でディールを行う」と強調。プロメテウス買収によって事業開発戦略が変わることはないとの考えを示している。

 

メルクのがん免疫療法薬「キイトルーダ」は、2028年から保護期間の満了を迎え始める。同薬の今年第1四半期(1~3月)の売上高は58億ドルに達した。アナリストの予想を上回り、キイトルーダは今や世界で最も売れている処方薬となっている。

 

グッゲンハイムのアナリスト、シェイマス・フェルナンデスは、現在、各社の収益を支えている医薬品の特許切れは26年から32年にかけて加速する。そのほとんどは生物学的製剤で、バイオシミラーとの競争に直面することになる。

 

米国の中小バイオテックの評価額は、パンデミック時に記録した最高値から下落しており、買収の魅力は増している。シリコンバレー銀行(SVB)の破綻は、こうした企業の資金不足を招いているとみられる。アッヴィの幹部は4月27日、今年第1四半期の決算を説明する電話会議で「バイオテクノロジー企業の資金調達が難しくなっているのは確かだ」と指摘した。

 

アストラゼネカCEO、中国で「間違いなく買収」

アッヴィが同日発表した決算では、ヒュミラを含むほとんどの製品の売上高が予想を下回った。これを受け、同社の株価は8%下落した。米国市場では、米アムジェンが同薬の初のバイオシミラーとして発売した「アムジェピタ」との競争に直面しており、第1四半期の売上高は前年同期比26.1%減の29億5000万ドルとなった。アッヴィは、第2四半期により急激なシェア低下を予想している。

 

今年1月にアムジェピタを発売したアムジェンは、今年通期の売上高予想を従来の260億ドルから272億ドルへと引き上げた。この予想は、今年上半期中の完了を見込むホライゾン・セラピューティクス(アイルランド)買収の影響を含んでいない。アムジェンはホライゾン買収に278億ドルを投じており、期待は大きい。

 

メルクと同様に、アストラゼネカも特許で保護されたがん治療薬が収益を支えている。

 

同社の今年第1四半期決算は、COVID-19ワクチン・治療薬の販売減少が打撃となったものの、がん免疫療法薬「イミフィンジ」の販売拡大と中国での旺盛な需要によってその影響を緩和し、収益は予想を上回った。

 

アストラゼネカは中国市場に重点を置いている。パスカル・ソリオCEOは、ここ数カ月で中国企業と3つのライセンス契約を締結したことを明らかにするとともに、「間違いなく買収の機会がある。これには何の制限もない」と述べ、さらに大きな動きを検討していることを示唆した。

 

研究開発費が増加

4月下旬に発表された製薬各社の第1四半期決算は、ほとんどの企業がウォール街の予想を上回った。

 

ただ、米イーライリリーは主にコストの増加を要因として予想を下回った。BMOキャピタル・マーケッツのアナリスト、エヴァン・セイガーマン氏はリリーの業績について「金を使うのは、金を稼ぐためだ」と指摘している。

 

ほかの医薬品メーカーでも研究開発費は増加している。

 

メルクは第1四半期に研究開発費が前年同期比で6%増加したと報告した。アストラゼネカは22%の増加だ。アムジェンも12%増加した。米ギリアド・サイエンシズは、後期臨床試験の費用がかさんだことで研究開発費が25%増加し、通年でも前年比で2桁台前半の増加を見込んでいる。

 

ギリアドの最高財務責任者アンドリュー・ディッキンソン氏は「魅力的な機会と持続的成長を目指す、幅広い後期段階の臨床ポートフォリオを持つ企業には、より適切な投資水準があると考えている」と述べている。

 

(Bhanvi Satija/Leroy Leo/Raghav Mahobe/Natalie Grover/Michael Erman/Patrick Wingrove/Manas Mishra、編集:Caroline Humer/Bill Berkrot、翻訳:AnswersNews)

 

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