2023年2月に米FDA(食品医薬品局)が承認した主な新薬と適応拡大をまとめました。
【新薬】地図状黄斑萎縮治療薬「Syfovre」や血友病A治療薬「Altuviiio」など
「Jesduvroq」英グラクソ・スミスクライン
経口HIF-PH阻害薬「Jesduvroq」(一般名・daprodustat)は、成人の腎性貧血治療薬。少なくとも4カ月にわたって人工透析を受けている患者が対象です。米国では同適応に対する30年以上ぶりの新薬で、HIF-PH阻害薬としては米国初の承認。日本では「ダーブロック」の製品名で2020年に承認され、小児適応での開発も進んでいます。欧州でも申請中です。
「Lamzede」イタリアChiesi
「Lamzede」(velmanase alfa)は、αマンノシドーシスに対する米国初の酵素補充療法。非中枢神経系症状に効果を発揮します。αマンノシドーシスは、α-マンノシダーゼという酵素の欠損によって起こるライソゾーム病。欧州では2018年に承認されています。
「Filspari」米Travere
原発性IgA腎症治療薬「Filspari」(sparsentan)は、デュアルエンドセリン・アンジオテンシン受容体拮抗薬。IgA腎症の進行に関わる2つの重要な経路を選択的にブロックする薬剤で、同疾患に対する非免疫抑制療法は米国初。尿タンパクの減少効果をもとに迅速承認を取得しました。欧州でも申請中です。
「Syfovre」米アペリス
「Syfovre」(pegcetacoplan)は、地図状黄斑萎縮を伴う加齢黄斑変性に対する米国初の治療薬。同薬はアペリスが創製した補体C3阻害薬で、同適応では欧州やカナダでも申請中です。一方、眼科以外の血液領域や腎領域などではスウェーデンのSwedish Orphan Biovitrum(Sobi)と共同開発を進めており、米国と欧州で発作性夜間ヘモグロビン尿症治療薬として2021年に承認を取得。日本ではSobiが同適応で申請中です。
「Skyclarys」米レアタ
Nrf2活性化薬「Skyclarys」(omaveloxolone)は、フリードライヒ運動失調症の適応で承認されました。フリードライヒ運動失調症は、ミトコンドリア内のフラタキシンの遺伝子変異で起こる進行性の遺伝性疾患で、歩行困難や筋力低下、言語障害などの症状を引き起こします。これまで承認された治療法はありませんでした。欧州でも申請中です。
「Altuviiio」仏サノフィ
血友病A治療薬「Altuviiio」(efanesoctocog alfa)は、週1回投与の血液凝固VIII因子製剤。フォン・ヴィレブランド因子(VWF)に依存しない薬理作用により半減期を延長しています。臨床試験では、従来製剤と比べて優れた出血抑制効果が確認されました。日本では昨年9月に申請。欧州でも23年後半に申請を行う予定です。
【適応拡大】「Eylea」の未熟児網膜症や「Kevzara」のリウマチ性多発筋痛症など
「Takhzyro」武田薬品工業
遺伝性血管性浮腫治療薬「Takhzyro」(landelumab)は、2歳以上12歳未満の小児に対象を拡大しました。2歳から6歳未満の患者にとっては初の発作抑制薬となります。同薬は抗血漿カリクレイン抗体で、米国や欧州で12歳以上を対象に2018年に承認を取得。欧州でも小児適応で申請済みです。
「Trodelvy」米ギリアド・サイエンシズ
抗TROP2抗体薬物複合体(ADC)「Trodelvy」(sacituzumab govitecan)は、新たに「切除不能な局所進行または転移性のホルモン受容体陽性/HER2陰性乳がん」の適応で承認を取得。内分泌療法と少なくとも2つの化学療法を受けた患者が対象です。P3試験では、化学療法に比べて無増悪生存期間と全生存期間を有意に延長しました。同適応では欧州でも申請中。日本ではトリプルネガティブ乳がんを対象にP3試験が行われています。
「Eylea」米リジェネロン
眼科用VEGF阻害薬「Eylea」(aflibercept)は、未熟児網膜症に適応拡大。網膜光凝固術を対照とする臨床試験の結果をもとに承認されました。日本と欧州では共同開発先のバイエル薬品が承認を取得しています。
「Cibinqo」米ファイザー
アトピー性皮膚炎治療薬の「Cibinqo」(abrocitinib)は、12歳以上18歳未満の小児に対象を拡大しました。既存の全身療法でコントロール不十分か、既存治療の使用が推奨されない中等症から重症の患者に使用されます。同薬は経口JAK阻害薬。成人を対象に米国で2022年、欧州で21年に承認されました。日本では12歳以上を対象に21年に承認を取得しています。
「Jemperli」英グラクソ・スミスクライン
抗PD-1抗体「Jemperli」(dostarlimab)は、「ミスマッチ修復機能欠損(dMMR)の再発・進行の子宮内膜がん」の適応で完全承認を取得しました。対象は、プラチナ化学療法で治療中または治療後に進行した、手術や放射線治療の適応でない患者です。Jemperliは2021年に同適応で迅速承認を取得。今回の完全承認の根拠となったのは進行中の固形がん対象のP1試験による追加データで、全奏効率45.4%を示しました。欧州でも子宮内膜がんの適応で21年に承認を取得。日本では非小細胞肺がんを対象に開発が進んでいます。
「Opdivo」米ブリストル
免疫チェックポイント阻害薬の抗PD-1抗体「Opdivo」(nivolumab)は、悪性黒色腫に関する2つの適応で12歳以上の小児に対象を拡大しました。1つは「リンパ節転移または転移性の悪性黒色腫の術後補助療法」に対する単剤療法で、もう1つは「切除不能または転移性の悪性黒色腫」に対する単剤療法と抗CTLA-4抗体「Yervoy」(ipilimumab)併用療法。「切除不能または転移性の悪性黒色腫」にはYervoy単剤療法がすでに小児適応を持っています。
「Kevzara」仏サノフィ
抗IL-6受容体抗体「Kevzara」(sarilumab)は、リウマチ性多発筋痛症に適応拡大。コルチコステロイドの効果が不十分な成人患者か、コルチコステロイドの漸減に耐えられない患者が対象です。臨床試験ではプラセボに比べて約3倍の患者が持続的寛解を達成しました。日本でも同じ適応拡大に向けたP3試験を進めています。