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ニュース解説

海外新薬承認情報(2022年11月分)

更新日

亀田真由

2022年11月に米FDA(食品医薬品局)が承認した主な新薬と適応拡大をまとめました。

 

【新薬】血友病Bの遺伝子治療「Hemgenix」や糞便微生物叢製品「Rebyota」など

【2022年11月に米FDAが承認した主な新薬 】(*=優先審査、★=ブレークスルーセラピー )製品名(一般名)/社名/適応 /Elahere(mirvetuximab soravtansine)* 米イミュノジェン/FRα陽性のプラチナ抵抗性の上皮性卵巣がん、卵管がん、原発性腹膜がん(1~3つの全身療法を受けた患者)/Sezaby(phenobarbital sodium)* 印サンファーマ/新生児けいれん /Tzield(teplizumab)*★ 米プロベンション・バイオ/1型糖尿病の発症遅延(8歳以上) /Hemgenix(etranacogene dezaparvovec)*★ 豪CSL/ 血友病B(成人) /Rebyota*★ スイス・フェリング/クロストリジオイデス・ディフィシル感染症の再発抑制(18歳以上)|米FDA(食品医薬品局)や各社の発表資料をもとに作成

 

「Elahere」米イミュノジェン

「Elahere」(一般名・mirvetuximab soravtansine)は、ファーストインクラスの抗葉酸受容体α(FRα)抗体薬物複合体(ADC)。「FRα陽性のプラチナ抵抗性の上皮性卵巣がん、卵管がん、原発性腹膜がん」の適応で迅速承認を取得しました。対象は、1~3つの全身療法による治療歴のある成人患者。FRαは細胞表面に発現するタンパク質で、卵巣がんでよく見られます。

 

「Sezaby」インド・サンファーマ

新生児けいれんの治療薬「Sezaby」は、phenobarbital sodiumの注射用粉末製剤。ベンジルアルコールやプロピレングリコールを含まない治療選択肢として期待されています。

 

「Tzield」米プロベンション・バイオ

抗CD3抗体「Tzield」(teplizumab)は、1型糖尿病の発症を遅らせる米国初の疾患修飾薬。インスリン産生細胞を攻撃する免疫細胞を不活性化することで効果を発揮すると考えられています。ステージ2(血糖異常が見られ始めた状態)の1型糖尿病の患者を対象に行われた臨床試験では、ステージ3(インスリン投与が必要な状態)の発症を中央値で約2年遅らせました。米国では仏サノフィと共同でプロモーションを行う予定で、グローバルの販売権に関する優先交渉権も同社に付与しています。

 

「Hemgenix」豪CSL

「Hemgenix」(etranacogene dezaparvovec)は、血友病Bに対する初の遺伝子治療。血液凝固第Ⅸ因子製剤による補充療法を受ける患者や、生命を脅かす出血を経験した患者、重篤な自然出血を繰り返す患者が対象です。血液凝固第Ⅸ因子の遺伝子を搭載したアデノ随伴ウイルスベクターベースの遺伝子治療で、遺伝子の発現により同因子の血中濃度を高め、出血を抑制します。臨床試験では出血率の低下が示されたほか、定期的な補充療法を回避できることが確認されました。

 

「Rebyota」スイス・フェリング

「Rebyota」は、「クロストリジオイデス・ディフィシル感染症(CDI)の再発抑制」に対する糞便細菌叢製品。対象は抗生物質による再発CDIの治療を終えた18歳以上の患者。健康な人の糞便から作られた懸濁液を直腸から投与し、腸内フローラの回復を促します。2018年に買収した米Rebiotixが開発した腸内細菌叢移植で、1000人以上が参加した5つの臨床試験で有効性と安全性が確認されました。

 

【適応拡大】「Imjudo」「Imfinzi」併用療法の非小細胞肺がんなど

【2022年11月に米FDAが承認した主な適応拡大】製品名(一般名)/社名/適応/Libtayo(cemiplimab)米リジェネロン/進行非小細胞肺がん(+プラチナベースの化学療法、1stライン、成人)/Adcetris(brentuximab vedotin)/米シージェン/古典的ホジキンリンパ腫(2歳以上の小児、未治療の高リスク患者)/Imjudo(tremelimumab)+Imfinzi(durvalumab)/英アストラゼネカ/転移性非小細胞肺がん(+化学療法、成人)/Trulicity(dulaglutide)/米イーライリリー/2型糖尿病(10歳以上の小児)/Brexafemme(ibrexafungerp)/米サイネクシス/カンジダ症の再発の減少/Blenrep(belantamab mafodotin)/英GSK/【承認取り下げ】再発・難治性の多発性骨髄腫(5thライン以降、成人)/Zejula(niraparib)英GSK/【添付文書改訂】上皮性卵巣がん、卵管がん、原発性腹膜がん(2ndライン維持療法、BRCA遺伝子変異のある成人患者のみ)|米FDA(食品医薬品局)や各社の発表資料をもとに作成

 

「Libtayo」米リジェネロン

抗PD-1抗体「Libtayo」(cemiplimab)は、「進行非小細胞肺がんの1次治療」に対するプラチナ化学療法との併用療法が新たに承認されました。非小細胞肺がんの1次治療では、PD-L1高発現患者に対する単剤療法が今年2月に承認されましたが、化学療法との併用療法はPD-L1の発現にかかわらず使用できます。466人の患者を対象に行った臨床第3相(P3)試験では、化学療法単独に比べて全生存期間を有意に延長しました。日本では近く子宮頸がん治療薬として承認される見通しで、非小細胞肺がんの適応ではP1試験が進行中です。

 

「Adcetris」米シージェン

抗CD30 ADC「Adcetris」(brentuximab vedotin)は、2歳以上の小児の未治療・高リスクの古典的ホジキンリンパ腫に適応拡大。抗がん剤のdoxorubicinとvincristine、etoposide、cyclophosphamide、免疫抑制剤のprednisoneと併用します。日本では武田薬品工業が販売しており、今年2月に未治療の小児CD30陽性ホジキンリンパ腫に対するADV(doxorubicin、vincristine、dacarbazine)併用療法への適応拡大が承認されています。

 

「Imjudo」+「Imfinzi」英アストラゼネカ

抗CTLA-4抗体「Imjudo」(tremelimumab)と抗PD-L1抗体「Imfinzi」(durvalumab)の併用療法は、転移性非小細胞肺がんに対するプラチナ化学療法との併用が承認。臨床試験では、化学療法単独群と比較して死亡リスクを23%低減させました。2剤の併用療法は今年10月、肝細胞がんを対象に米国で承認を取得。日本と欧州でも肝細胞がんと非小細胞肺がんの適応で申請中です。

 

「Brexafemme」米サイネクシス

カンジダ症治療薬「Brexafemme」(ibrexafungerp)は、新たに「カンジダ症の再発の低減」に適応拡大。承認の根拠となった臨床試験では、プラセボに対する再発抑制効果が確認されました。同薬は経口抗真菌薬で、2021年に最初の承認を取得しています。

 

【承認取り下げ】「Blenrep」英GSK

英グラクソ・スミスクラインは、抗BCMA ADC「Blenrep」(belantamab mafodotin)の米国での承認を取り下げる手続きを開始しました。同薬は「再発・難治性の多発性骨髄腫(5次治療以降)」の適応で2020年に迅速承認を取得しましたが、検証的P3試験で主要評価項目を達成できませんでした。日本ではP3試験の段階にあります。

 

【添付文書改訂】「Zejula」英GSK

GSKは、PARP阻害薬「Zejula」(niraparib)の「上皮性卵巣がん、卵管がん、原発性腹膜がんのセカンドライン維持療法」の適応で、BRCA遺伝子変異を有する(または疑いのある)患者に使用を限定する添付文書の改訂を行うと発表しました。改訂は、P3試験の最終的な全生存期間解析に関するFDAの審査に基づくもの。ファーストラインの維持療法に関する記載には変更はありません。

 

AnswersNews編集部が製薬企業をレポート

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