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2028年に特許切れ「キイトルーダ」収益維持へカギ握る皮下注製剤

更新日

ロイター通信

(写真:ロイター)

 

[ロイター]米メルクは、年間200億ドルを売り上げるがん免疫療法薬「キイトルーダ」の皮下注製剤を開発しており、早ければ2028年にも予想されるバイオシミラーとの競争からベストセラー薬を守ろうとしている。

 

メルクは現在、成長の多くの部分をキイトルーダに頼っている。14年に承認されたこの薬剤は、体内の免疫システムを利用してがんを攻撃する作用で劇的な成果を上げている。例えば進行した肺がんの場合、かつて5年生存率は5%にとどまっていたが、同薬の投与を受けた患者では4人に1人が5年間生存するようになった。

 

ただ、キイトルーダの主要な特許は28年に期限切れを迎える見込みで、バイオシミラーの参入に道が開かれる。

 

メルクは現在、キイトルーダについて、皮下注射が可能な2種類の製剤を臨床試験でテストしている。これは現在の承認されている投与方法(3週間または6週間ごとに医療機関で点滴静注する方法)にかわる迅速な投与方法だ。同社は昨年、そのうちの1つの試験について初期のデータを発表した。

 

メルクは、キイトルーダの皮下注製剤を開発していることをすでに公表しているが、それに対する期待についてはこれまで言及してこなかった。

 

「第2のヒュミラ」

メルクの幹部はロイターに対し「開発に成功すれば数年以内に皮下注製剤の販売を開始できるだろう」と話し、早期がんでの承認取得に伴って皮下注製剤がキイトルーダの成長を後押しするとの期待を示した。キイトルーダは現在、メルクの売上高全体の3分の1以上を稼いでいる。同社のキャロライン・リッチフィールドCFO(最高財務責任者)はインタビューで「皮下注製剤には新規性、非自明性、有用性があり、新しい特許を取得できる可能性が高いと信じている」と語った。

 

同社のエリアフ・バーCMO(最高医学責任者)はロイターに対し「化学療法を含むほかの静注製剤と併用される場合など、静注製剤が選ばれる患者も一部いるだろうが、大半の患者にとって皮下注製剤は静注製剤にとってかわることができる」と指摘。「理論的には、現在キイトルーダが使われているすべての場面で代替可能だ」と述べた。

 

米国の法律では、医薬品の特許は取得後20年間の独占期間が保証されているが、企業が特許を追加してその期間を延長できる場合もある。

 

たとえば、米アッヴィの自己免疫疾患治療薬「ヒュミラ」の場合、主要な特許は16年に失効したが、同社が同薬を保護する130以上の特許を取得したこともあり、米国では23年までバイオシミラーとの競争に直面することはない。

 

医薬品特許の監視団体Initiative for Medicines, Access & Knowledge(I-MAK)の共同創始者であるタヒア・アミン氏によると、キイトルーダの皮下注製剤の特許は、少なくとも2040年までその処方を保護することができる可能性があるという。アミン氏は「製薬企業はこのシステムを利用して可能な限り多くのスペースを確保し、他社が参入できないようにしている」とし、「キイトルーダは第2のヒュミラになる」と指摘する。

 

医療上の必要性より特許の問題が皮下注製剤開発の動機になっているか、との質問に対し、メルクは製剤を改良してより多くの患者に届けることに継続的に注力していると答えた。

 

メルクは、薬剤の使用方法、製剤、投与量や投与スケジュール、ほかの薬剤との組み合わせなど、革新的な技術について特許を申請する可能性があるとし、「これらの特許が認められた場合、28年以降も保護が受けられる可能性がある」とした一方、「バイオシミラー参入の時期としては28年後半が最も可能性が高いと考えられる」との見通しを示した。

 

アナリストらは、バイオシミラーとの競争が始まる前に皮下注製剤を浸透させることができれば収益を維持することができるかもしれないが、それも確実ではないと指摘する。リフィニティブのデータによると、アナリストらはキイトルーダの売り上げが26年に300億ドルを突破し、28年には350億ドルに達すると予想している。

 

患者は皮下注を好む?

みずほのアナリスト、マーラ・ゴールドスタイン氏は「理論的には市場のすべてを皮下注製剤にシフトすることは可能だが、それはメルクがどれだけ早く市場に投入できるかによる」と話す。

 

一方、BMOキャピタルのエバン・セイガーマン氏は、米国の民間保険は高価な先行品への支払いを渋り、点滴静注製剤のバイオシミラーを好むかもしれないと指摘する。一方で同氏は、それでも皮下注製剤によってメルクは2030年代までキイトルーダの収益の20%程度を維持できる可能性があるとみている。

 

ロイターの取材に応じた2人の医師は、メルクが新たな特許を取得することで生じ得る追加の医療費を正当化できるほど、皮下注製剤が臨床的に大きな改善をもたらすとは確信していないと話している。シアトルのフレッドハッチンソンがんセンターのシャイレンドラ・バティア博士は「有効性や安全性が向上するとは思えない」と指摘する。

 

メルクのバーCMOは、利便性の高い皮下注製剤はスケジュールに沿って投与し続けることで患者の健康を助け、高リスクのがん患者がほかの病気にさらされかねない入院環境で長期間過ごさずに済むようになる可能性があるとしている。バー氏は「QOLや患者の視点から見ると(皮下注製剤は)確実に役に立つだろう」と言う。

 

この見解は、点滴静注よりも皮下注のほうが患者に好まれるという臨床研究によって裏付けられている。

 

病院や医師がこの投与方法をどの程度受け入れるかは、点滴静注からのシフトが費用面でどのような影響を与えるかによるかもしれない。病院では通常、長時間の点滴より注射のほうが費用は安い。ニューヨークのノースウェル・ヘルス病院の薬局責任者リサ・マロイ氏によると、医師が投与する薬剤には一定割合の手数料がかかるため、薬剤の価格が高くなればいくらか相殺される可能性があるという。

 

メルクは、パイプラインにある開発品の価格について推測することはないとしている。キイトルーダの点滴静注製剤の米国価格は年間18万5000ドルだが、実際の費用は割引によって安くなる可能性もあるという。

 

ノースウェルのマロイ氏によると、皮下注製剤に患者を移行させることで、点滴を必要とする別の患者を受け入れられるようになるメリットもあると指摘した。

 

(Michael Erman、編集:Caroline Humer/Claudia Parsons、翻訳:AnswersNews)

 

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