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【グラレコ解説】医薬品開発を効率化、海外で活用が進む「MIDD」とは?

更新日

亀田真由

蓄積データから構築した数学的モデルを使って医薬品開発を効率化する「モデルを活かした医薬品開発(MIDD)」。欧米ではすでに開発に欠かせない手法となっており、日本でも徐々に活用されつつあります。MIDDを使った創薬コンサルティングを手掛けるサターラ(本社・米国)が先月開いたセミナーの内容をもとに、国内の活用事例と普及に向けた課題を解説します。

 

「普及の遅れはドラッグ・ロスを加速するおそれがある」

MIDD(Model-informed Drug Development)とは、医薬品開発戦略の検討や意思決定にM&Sを活かす手法(M&Sは臨床試験データなどをもとに数学的モデルを構築し、開発品の性能評価や臨床試験結果予測を行うこと)|サターラの長谷川真裕美氏によれば、活用のゴールは成功確率向上、開発期間短縮、コスト低減|海外で2000年代初頭から導入。米メルクでは、3年間で5億ドル超のコスト削減|Q.日本では? 2014年以降、徐々にM&Sが普及。活用比率は6~8割まで伸びたが、多くは世界同時申請を目指す外資系企業|ノウハウや人材の不足で活用は不十分|長谷川氏「普及の遅れはドラッグ・ラグ/ロスを加速するおそれ」|国内製薬のMIDD活用事例|第一三共の新型コロナワクチン→投与量や投与間隔などを変えたシミュレーションで最適用量を検討→P1/2試験デザインを最適化|ノーベルファーマ「ラパリムス」→1.小児/成人の血中濃度データを複数の臨床試験から収集し解析 2.血中濃度に影響する患者因子を特定→患者ごとに投与量を提案可能に(臨床で医師が使うアプリも共同開発)|課題は「人材不足」|専門的な教育機関が少ない|取り組みを理解し、実施できる人材が少ない|M&Sを使いこなせる人材の確保が急務|大分大医学部臨床薬理学講座上村 尚人教授『アカデミアでは「薬をつくれる人をつくる」教育を進めたい』|サターラ(本社・米国)|国内では承認申請用データ解析ソフトウェア「Phoenix WinNoiln」で10年来活動|米国では新薬申請の9割でサターラ製品が活用|サターラ日本法人モンタルト ジェームス社長「国内でも事例を積み認知度を高めたい」

 

「モデリング&シミュレーション(M&S)」は、蓄積データを用いて薬物動態や生体反応を説明する数学的モデルを構築し、開発品の性能評価や臨床試験結果の予測を行う技術。M&Sをもとに開発戦略を決める手法を「モデルを活かした医薬品開発(MIDD)」と呼びます。欧米を中心に活用が進んでおり、米国ではほぼすべての申請にM&S手法が活用されているといいます。国内でも徐々に広がりつつありますが、ノウハウや人材の不足がボトルネックとなり、活用は欧米ほど進んではいません。

 

創薬コンサルティングを手掛けるサターラの長谷川真裕美氏(Integrated Drug Development部門シニア・ディレクター)は、「MIDDの普及や理解の遅れはドラッグ・ラグやドラッグ・ロスを加速させるおそれがある」と指摘します。臨床薬理学を専門とする大分大医学部の上村尚人教授も、「(国内の医薬品開発の)意思決定は依然として経験則に基づくものが多いが、データを使った定量的な意思決定が重要だ」と強調。「M&Sを使いこなせる人材の確保が急務」と話します。

 

セミナーでは長谷川氏が、第一三共の新型コロナウイルスワクチンや、ノーベルファーマの難治性リンパ管疾患治療薬「ラパリムス」で、M&Sによって開発の最適化を行った事例を紹介。長谷川氏によると、M&Sは新薬開発だけでなく、発売後に治療レジメンを最適化するのにも活用が期待できるといいます。同社では、事例を積み重ねながら認知度を向上させ、MIDDの普及を目指す考えです。

 

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