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新たながん免疫療法 抗TIGIT抗体に暗雲?ロシュのチラゴルマブ 2つの治験でPFS延長せず

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ロイター通信

[ロンドン ロイター]注目を集めるがん免疫療法の分野で、スイス・ロシュが希望に新たな打撃を与えた。臨床試験のネガティブな結果は、製薬大手がひしめく開発レースにも影を落とすが、アナリストは直近の後退は終わりを示すものではないと指摘している。

 

ロシュは5月11日、新薬候補チラゴルマブの非小細胞肺がん(NSCLC)患者を対象とした臨床試験の中間解析で、同薬と承認済みのがん免疫療法薬「テセントリク」(一般名・アテゾリズマブ)を併用しても、テセントリク単剤治療に対して無増悪生存期間(PFS)を有意に延長しないことが示されたと発表した。ロシュは、チラゴルマブとテセントリクの併用療法が患者の延命につながるかを引き続き評価する。

 

ロシュは3月にも、進展型小細胞肺がん(ED-SCLC)を対象としたチラゴルマブの臨床試験で、同薬とテセントリク、化学療法の併用療法が、テセントリクと化学療法の併用療法と比較してPFSを延長しなかったと発表している。今回の中間解析結果は、これに続くネガティブなニュースとなった。

 

アナリストたちは当初、NSCLCの臨床試験はテセントリクが標的とするPD-L1のレベルが高い患者を対象としているため、ED-SCLCよりも成功の可能性が高いと考えていた。

 

「セクター全般にとって好ましくない」

チラゴルマブを含む抗TIGIT抗体の開発には、米ギリアド・サイエンシズ、米メルク、英グラクソ・スミスクラインなどが参入し、研究開発投資とディールの活発化を引き起こしている。がんに対する免疫応答を抑制するこのタンパク質に注目し、有望視されるがん免疫療法市場の一部を手中に収めようとしている。

 

関連記事:第3の免疫チェックポイント分子「LAG-3」に抗体薬承認…ICI 市場競争の展望は

 

トゥルーイスト・セキュリティーズのアナリスト、ロビン・カルナウスカス氏は、試験の最終的なデータはまだ出ていないと断りつつ「われわれは、この失敗がセクター全般にとって好ましくないと考えている」とレポートに書いた。一方、多くの腫瘍免疫学研究では、結果の違いの多くは病状の進行を示すPFSではなく、全体的な生存期間のベネフィットに見られるとも指摘している。

 

プレセデンス・リサーチの推計によると、世界の抗がん剤市場は2020年の1326億ドルから30年には2720億ドルに膨れ上がる見込みだ。

 

メルクのトップセラーである「キイトルーダ」(ペムブロリズマブ)などのPD-1/PD-L1阻害薬では、化学療法やその他の分子標的薬との併用療法が広がっている。新たな期待は、TIGITとPD-1/PD-L1のように、2つの免疫チェックポイント分子を標的とすることで、より多くの患者により高い治療効果をもたらすことだ。

 

「TIGITが失敗だとは思わない」

RBCキャピタル・マーケットのアナリスト、ブライアン・アブラハムス氏は、TIGIT阻害薬の併用は効果が現れるまで時間がかかる可能性があり、これはがん免疫療法では珍しいことではないと述べている。彼は、チラゴルマブの試験結果が期待外れだったためTIGIT阻害薬の有効性に疑問符がつく可能性もあるが、別の薬剤であれば明確な効果が示されるかもしれないと付け加えている。

 

アナリストは、今回の失敗はロシュの統計計画の立て方に関係している可能性があり、最終的に良い結果を示す余地はまだあると示唆している。エバーコアISIのアナリストは5月11日、「TIGITが失敗したとは思わない」との見出しのレポートを出した。

 

(Natalie Grover、翻訳:AnswersNews)

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