市場拡大が著しく、開発競争も熾烈ながん領域。国内外の製薬大手の後期開発パイプラインを、2022年3月時点で各社が公表している情報をもとにまとめました。(全5記事。全記事まとめはこちら)
情報は2022年3月の調査時点で各社がホームページで公表していた情報に基づく。いつ時点の情報かは会社によって異なるため、承認・申請など直近のイベントが反映されていない場合もある。 |
米メルク
【新規有効成分】がん免疫療法 キイトルーダ併用で開発進む
新規有効成分では、免疫チェックポイント阻害薬の抗PD-1抗体ペムブロリズマブ(製品名・キイトルーダ)との併用で、▽抗CTLA-4抗体quavonlimab(開発コード・MK-1308)▽抗CD27抗体(MK-5890)▽抗TIGIT抗体vibostolimab(MK-7684)▽抗LAG3抗体favezelimab(MK-4280)――の4つの免疫チェックポイント阻害薬を開発しています。
がん免疫療法ではこのほか、20年の米VelosBio買収で獲得した抗ROR1 抗体薬物複合体(ADC) zilovertamab vedotin(MK-2140)や、米シーゲンと共同開発する抗LIV-1 ADC ladiratuzumab vedotin(MK-6440)が臨床第2相(P2)試験段階。zilovertamab vedotinは血液がんと固形がんの両方への適応が期待されています。
【適応拡大など】HIF-2α阻害薬belzutifan 腎細胞がんなどでP3
キイトルーダは、悪性黒色腫のアジュバント療法(欧)や早期トリプルネガティブ乳がん(日欧)、腎細胞がんのアジュバント療法(日)など複数の適応拡大を申請中。早期がんでは約20件の開発が進んでおり、非小細胞肺がんで申請準備中です。
キイトルーダは、エーザイと共同開発するマルチキナーゼ阻害薬レンバチニブ(レンビマ)との併用に加え、米ペロトン・セラピューティクスから獲得した低酸素誘導因子(HIF)-2α阻害薬belzutifan(Welireg)などとの併用療法もパイプラインに並びます。belzutifan は21年にフォン・ヒッペルリンドウ(VHL)病関連のがんに対する治療薬として米国で承認されており、腎細胞がんなどでP3試験を進行中です。
仏サノフィ
【新規有効成分】amcenestrant パルボシクリブ併用に期待
注力する選択的エストロゲン受容体分解薬(SERD)amcenestrant(開発コード・SAR439859)は、ER陽性/HER2陰性の転移性乳がんを対象に行っていたピボタル試験で主要評価項目である無増悪生存期間の延長を達成できなかったことが今年3月に発表され、当初予定していた2022年中の申請は厳しくなりました。パルボシクリブ併用のP3試験や、早期乳がん(アジュバント療法)のP2試験は計画通りに進めており、サノフィは24年を見込むパルボシクリブ併用のP3試験の結果に期待をかけています。
20年1月の米Synthorx買収で獲得した非αIL-2製剤「SAR444245」は、皮膚がんや非小細胞肺がん、頭頸部がんでP2試験を実施中。自社の抗PD-1抗体cemiplimab(製品名・Libtayo)や米メルクの同ペムブロリズマブとの併用療法が検討されています。
日本では21年11月末、多発性骨髄腫治療薬の抗CD38抗体イサツキシマブ(サークリサ)が、従来のポマリドミド・デキサメタゾン併用療法に加えて▽カルフィルゾミブ・デキサメタゾン併用療法▽単剤療法▽デキサメタゾン併用療法――に適応拡大。22年3月には子宮頸がんを対象にcemiplimabを申請しました。
英グラクソ・スミスクライン(GSK)
【新規有効成分】NY-ESO TCR-T細胞療法がピボタル試験
新規有効成分としては、滑膜肉腫、粘液性/円形細胞脂肪肉腫を対象にNY-ESO TCR-T細胞療法letetresgene autoleucel(開発コード・GSK3377794)のピボタル試験を行っています。提携先の英アダプトイミューンから導入したもので、同社とはNY-ESO以外の標的に対する治療薬も開発しています。がん免疫療法ではこのほか、非小細胞肺がんに対する抗TIM-3抗体cobolimab(GSK4069889)がP2試験段階です。
【適応拡大など】Blenrepは国内P3
抗BCMA ADCのbelantamab mafodotin(製品名・Blenrep)は、22年後半に多発性骨髄腫に対する3次治療への適応拡大申請を控えており、日本では新規有効成分としての承認申請に向けたP3試験を実施中です。米テサロ買収で獲得した抗PD-1抗体dostarlimab(Jemperli)は、21年に米欧でミスマッチ修復機構欠損(dMMR)の再発・進行子宮内膜がんで承認。1次治療への適応拡大を目指したP3試験が進んでいます。
米ジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J)
【新規有効成分】抗BCMA/CD3二重特異性抗体teclistamabを申請中
多発性骨髄腫治療薬として抗BCMA/CD3二重特異性抗体teclistamabと抗GPRC5D/CD3二重特異性抗体talquetamabを開発中。いずれも、抗CD38抗体ダラツムマブ(製品名・ダラザレックス)の開発で提携するデンマーク・ジェンマブの技術を使ったもので、teclistamabは米国で申請中です。欧州でも年内の申請を見込んでいます。
【適応拡大など】FGFR阻害薬erdafitinibは日欧で開発中
米国と欧州で承認を取得している非小細胞肺がん治療薬の抗EGFR/cMet二重特異性抗体amivantamab(Rybrevant)は、韓国Yuhanから導入したEGFR阻害薬lazertinib(開発コード・JNJ-73841937)との併用療法でP3試験を行っています。
米アッヴィ傘下のファーマサイクリックスと共同開発しているBTK阻害薬イブルチニブ(イムブルビカ)は、慢性骨髄性白血病のフロントラインでベネトクラクスとの併用療法を申請中。年内には移植未実施のマントル細胞リンパ腫への適応拡大を申請する予定です。
FGFR阻害薬erdafitinib(Balversa)は、尿路上皮がんを対象に米国で19年承認されており、欧州と日本でも新規有効成分として開発が進行中。臓器横断型の適応取得を目指した開発も進んでいます。日本ではこのほか、amivantamabやBCMA CAR-T細胞療法ciltacabtagene autoleucel(Caryvkti)の開発が行われています。