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集積から連携へ…バイオコミュニティの目指すところ|連載:バイオコミュニティの萌芽(2)

更新日

前田雄樹

「世界最先端の研究開発機関とバイオ生産システム等の開発機能を有する機関や企業等との連携により、シーズを円滑に事業化」「世界のデータ・人材・投資・研究にアクセスする触媒としての機能を果たし、世界からバイオイノベーションハブの1つとして認知」――。

 

東京圏と関西圏で形成に向けた動きが本格化する「グローバルバイオコミュニティ」。国が2020年に策定した「バイオ戦略2020」では、その理想像をこう描いています。バイオ戦略では「2030年に世界最先端のバイオエコノミー社会を実現する」とし、30年に92.3兆円の市場規模創出(バイオ製造で53.3兆円、農業・林業などの一次産業で2.7兆円、健康・医療で36.3兆円)を目指しています。バイオコミュニティには、市場創出につながるイノベーションを生み、事業へと育てていく土壌としての役割が期待されています。

 

ヒト・モノ・カネが不足

東京と関西でグローバルバイオコミュニティとして想定される半径100キロメートルほどの地域には、すでに多くの研究機関や関連企業が立地していますが、ただ集積しているだけではイノベーションを絶え間なく生み出すエコシステムにはなり得ません。それは、世界からイノベーションの創出地として認知されるバイオコミュニティがまだ日本に存在しないことが何より証明しています。

 

【東西のバイオコミュニティ】▲東京圏/【つくば】研究学園都市・バイオリソースを 中核とした都市/【千葉】自治体主導でバイオ関連産業を振興する都市/【都内近郊】研究・事業化・投資の全国ハブ/【川崎】重工業からバイオ・環境へのシフトを目指す都市/【横浜】ライフサイエンスにも力を入れるビジネス都市/【湘南】巨大インキュベーション施設を中心とした都市/▼関西圏/【京都】京都大を中核とした研究・スタートアップ都市/【神戸】神戸医療産業都市を推進する都市/【大阪】製薬企業の集積と研究に強みのあるビジネス都市|※「バイオ戦略2020」をもとに作成

 

バイオ産業の振興・創出に向けた初の国家戦略「バイオテクノロジー戦略大綱」が策定されたのは02年。クラスター形成の重要性は当時から指摘されており、同大綱には「大学、公的研究機関などを核とし、関連研究機関、研究開発企業などが集積する研究開発能力の拠点(知的クラスター)の創成を目指す」と書かれ、続く08年策定の「ドリームBTジャパン」にも「国内外クラスター間の連携強化、クラスター形成活動への継続的支援を行う」ことが盛り込まれました。

 

それから10年あまり、ドリームBTジャパン以来の国家戦略として策定された「バイオ戦略2019」では、過去の拠点形成施策について「単独都市・研究機関を核とした『研究』の拠点形成を目的としており、『事業化』を促進するための国際拠点としては、規模・機能・分野の幅広さが根本的に不足」していたと総括。「創業に必要なヒト・モノ・カネが不足」しているとし、▽投資サイドに目利き人材が不足しており、長期間にわたるシーズの育成や出口戦略の構築が不十分▽研究開発用のウェット施設が高額▽国内に生産システムを整備しなければ収益を得るのが困難▽海外資金の活用が不可欠――といった課題を指摘しています。

 

6つのアクション

課題が山積する中、どうやって世界に伍するバイオコミュニティを作り上げていくのか。東京圏でネットワーク機関としてグローバルバイオコミュニティ形成の牽引役を担う「Greater Tokyo Biocommunity(GTB)協議会」(会長=永山治・バイオインダストリー協会理事長)は「6つのアクション」を想定しています。

 

具体的には▽域内の実力の数値化と海外への発信▽マスタープランの策定▽バイオ分野と異分野の融合の促進▽産学でのバイオ研究開発・実証事業の推進▽バイオ生産人材・DX(デジタルトランスフォーメーション)人材の育成▽技術シーズの社会実装を促す機能・拠点の拡充――で、永山氏はこれらを通じて「プレイヤーをシームレスにつなげ、有意的に連動させる活動を展開していく」と話します。産学官の連携によってイノベーションを事業化に結びつけやすい環境をつくるとともに、コミュニティとしてのポテンシャルを発信することで、世界から人材や投資を呼び込む考えです。

 

GTB協議会には、昨年10月の発足時点で地方自治体、大学・研究機関、業界団体、産業支援団体、金融・投資機関の計42団体が参加。昨年7月に発足した関西圏のネットワーク機関「バイオコミュニティ関西(BiocK)」(委員長=澤田拓子・関西経済連合会ベンチャー・エコシステム委員会委員長)にも、自治体、地元経済団体、関西に拠点を置く大学や研究機関、業界団体などが参加し、▽国内外への発信力強化▽オープンイノベーションや産学連携事業の推進とスタートアップ支援▽研究拠点感の連携強化や異分野との融合促進――を具体的アクションに掲げて活動を展開しています。

 

【グローバルバイオコミュニティのあるべき姿と実現に必要な機能】①/バーチャルな事業創出拠点として世界最先端の研究開発機関をはじめ国際競争力を有する大学・研究機関・企業群の機動的な連携により、戦略的なバリューチェーンを構築し、研究開発から事業化までを円滑に推進/②世界のデータ・人材・投資・研究にアクセスする触媒としての機能を果たすことで、世界からバイオイノベーションハブの1つとして認知/③基盤的な市場領域であるバイオ生産システムやバイオ関連分析・測定・実験システムに関する世界最先端の開発拠点が存在し、その他複数の市場領域を発展させ、国内外の市場を拡大←①研究開発成果の事業化・創業を推進するための拠点機能の充実/②国内外の投資家や企業などが投資・事業化の機会を見出すための研究者との交流機会の創出/③市民を含む多様な主体との共創による研究開発・事業化を促すための科学技術コミュニケーション活動の実践/④社会全体のデジタル化や世界的なオープンサイエンスの潮流を捉えた産学官による戦略的なデータの共有・利活用/⑤外資系企業や外国人研究者らを引きつける環境の整備/⑥国の各種施策の効果的な活用|※内閣府の資料をもとに作成

 

コミュニティを集積から連携へと発展させていくには、とりわけネットワーク機関の役割が重要です。海外の有力バイオコミュニティには、多様なプレイヤーを結びつけるとともにコミュニティの魅力を外に発信するネットワーク機関が存在しています。GTB協議会の永山会長は「コミュニティとしては人材育成に相当力を入れていきたいし、海外のコミュニティではインキュベーションセンターやレンタルラボといった社会実装を促す機能や拠点が充実しているので、そういったものも日本に持ち込む必要がある」と指摘。投資の呼び込みについても「いろんなプロジェクトやベンチャーのオポチュニティが客観的に見えて、それを評価して資金を継続的に供給してもらえるような方向にもっていきたい」と話します。

 

技術革新が進み、世界の主要国がバイオエコノミーによる新市場の形成を国家戦略に位置付ける中、バイオ分野の国際競争は激しさを増しています。日本が遅れを取り戻すには多くの課題がありますが、それらを乗り越え、イノベーションを生み育む環境が根付くことを期待したいと思います。

 

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