2022年1月に米FDA(食品医薬品局)が承認した主な新薬と適応拡大をまとめました。
【新薬】アトピー性皮膚炎治療薬「Cibinqo」やブドウ膜黒色腫治療薬「Kimmtrak」など
「Quviviq」スイス・イドルシア
デュアルオレキシン受容体拮抗薬「Quviviq」(一般名・daridorexant)は不眠症治療薬。成人1854人を対象とした臨床第3相(P3)試験では、プラセボに比べて入眠や睡眠持続、患者報告による睡眠時間を有意に改善しました。国内ではイドルシアの日本法人と持田製薬が共同でP3試験を行っています。
「Ryaltris」印グレンマーク
「Ryaltris」は、ステロイド薬mometasoneと抗ヒスタミン薬olopatadineを配合した経鼻スプレー製剤。12歳以上のアレルギー性鼻炎患者が対象です。オーストラリアや英国などでもすでに承認されています。
「Cibinqo」米ファイザー
1日1回投与の経口JAK阻害薬「Cibinqo」(abrocitinib)は、アトピー性皮膚炎治療薬です。対象は、既存の全身療法でコントロール不十分な中等症から重症の患者。承認の根拠となった5つのP3試験では、プラセボと比べて有意なかゆみの改善や疾患コントロールが確認されました。日本と欧州では昨年承認を取得しています。
「Kimmtrak」英イミュノコア
「Kimmtrak」(tebentafusp)は、T細胞受容体(TCR)と抗CD3免疫エフェクター機構を融合させた二重特異性融合タンパク。イミュノコアのTCR技術によって作られたもので、メラノサイトや悪性黒色腫に発現するgp100を標的としています。米国初の「HLA-A*02:01陽性の切除不能・転移性のブドウ膜黒色腫」の治療薬として承認されました。欧州やカナダでも申請中です。
「Vabysmo」米ジェネンテック
「Vabysmo」(faricimab)は、滲出型加齢黄斑変性と糖尿病黄斑浮腫の治療薬。眼科領域では初のバイスペシフィック抗体で、眼内のVEGF-AとAng-2に選択的に結合します。臨床試験では、約半数の被験者で投与間隔を4カ月まで延長し、2カ月間隔投与のafliberceptに対する非劣性が確認されました。日本と欧州でも申請中です。
「Spikevax」米モデルナ
「Spikevax」は、米モデルナの新型コロナウイルスに対するmRNAワクチン。米国では2020年12月に緊急使用許可を受けていましたが、今回、18歳以上を対象に正式承認されました。
【適応拡大】「Rinvoq」のアトピー性皮膚炎、「Cabenuva」の2カ月に1回投与など
「Rinvoq」米アッヴィ
1日1回投与の経口JAK阻害薬「Rinvoq」(upadacitinib)は、中等症から重症のアトピー性皮膚炎に適応拡大。既存治療で十分に反応しない、またはコントロールできない12歳以上の患者が対象です。2500人を対象としたP3試験では、単剤と局所ステロイド剤併用の両方で主要評価項目を達成しました。
「Veklury」米ギリアド
新型コロナウイルスに対する抗ウイルス薬「Veklury」(remdesivir)は、新たに重症化リスクの高い12歳以上の非入院患者への使用が正式に承認されました。入院中の患者に対しては20年10月に正式承認を取得済み。疾患の進行リスクが高い12歳未満の非入院小児患者に対しても緊急使用許可が出されました。
「Skyrizi」米アッヴィ
抗IL-23抗体「Skyrizi」(risankizumab)は、活動性の乾癬性関節炎に適応拡大しました。TNF阻害薬で効果不十分または不耐容の患者が対象。活動性の乾癬性関節炎は、乾癬患者の約3割に見られる全身性の炎症性疾患です。Skyriziは米国で乾癬治療薬として19年に承認されており、今回は2つ目の適応となります。
「Pifeltro」「Delstrigo」米メルク
HIV感染症治療薬「Pifeltro」(doravirine)と「Delstrigo」(doravirine/lamivudine/tenofovir)は、体重35kg以上の小児に適応拡大。日本ではdoravirine単剤が20年に承認されていますが、小児での開発は行われていません。
「Cabenuva」英ヴィーブヘルスケア
HIV感染症治療薬「Cabenuva」(cabotegravir/rilpivirine)は、2カ月に1回投与の維持療法が新たに承認されました。同薬は長時間作用型注射レジメンで、昨年1月に1カ月に1回投与のレジメンとして承認。欧州ではすでに1カ月に1回投与と2 カ月に1回投与の両方で承認されています。日本ではグラクソ・スミスクラインがP3試験を実施中です。