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ニュース解説

新薬も手掛けるサンファーマが指し示す 後発品メーカーが歩む道

更新日

前田雄樹

サンファーマ日本法人の中道淳一社長(同社提供)

 

既存の後発医薬品ビジネスが限界を迎え、事業の再構築を迫られている国内の後発品メーカー。各社が新規事業を模索する中、一足先に欧米市場に進出し、新薬開発を成功させたインドの後発品大手サンファーマの日本法人社長、中道淳一氏に話を聞きました。

 

 

領域特化し新薬開発

――世界有数の後発品企業でありながら新薬開発を手掛け、日本でも昨年、乾癬治療薬の抗体医薬「イルミア」を発売しました。サンファーマが新薬開発に乗り出した背景を教えてください。

ジェネリック医薬品ビジネスをベースに、さらなる成長を実現するには、新薬も含めて製品の厚みを増していく必要があると判断したからです。

 

サンファーマは1983年に創業し、当初はインド国内でビジネスを行っていましたが、90年代になると米国に進出し、地理的な展開を拡大しました。米国では価格競争力を背景にビジネスを伸ばしてきましたが、2000年代に入った頃から、「皮膚科」「がん」「眼科」の3領域で新薬と後発品を組み合わせたハイブリッドな事業を展開していこうという動きを加速させています。

 

サンファーマは後発品企業なので、当初は新薬を自社開発するインフラに乏しかった。そこで、はじめのうちはM&Aやライセンスを通じて新薬の品揃えを強化し、時間を稼ぎながら自社創薬能力の構築を進めてきました。昨年、日本で発売したイルミアは米メルクからの導入品ですが、今年1月には自社創薬した経口の乾癬治療薬が臨床第2相(P2)試験に進んだことを発表しています。新薬開発に進もうと大きな方針転換を行ったのが2000年頃ですから、20年ほどたってやっと芽が出てきたという段階です。

 

後発品メーカーが新薬開発を行うのはまだ珍しいですが、サンファーマの中にいると実はあまりそう思わないんです。というのも、サンファーマは社内で「コンプレックス・ジェネリック」と呼ぶ開発・製造が難しい後発品を多く手掛けていますので、後発品と新薬の間の垣根は、同業他社から見えるほど高くはないのかなと思っています。

 

――将来的には、後発品と新薬のどちらに力点を置いていく方針ですか?

土台となる後発品のビジネスはこれからも進めていきますが、今後成長を期待しているのは、社内で「スペシャリティ領域」と呼んでいる皮膚科、がん、眼科の3領域です。これらは、もともとジェネリックビジネスでサンファーマが基盤を持っていた領域で、ここに対して日本を含むグローバルで投資を強化していきます。サンファーマにとってのスペシャリティ医薬品ビジネスとは、領域に特化してハイブリッドな品揃えで展開していく事業を指しており、そこには新薬もあれば後発品もあるし、長期収載品もある。新薬開発には費用がかさむので、そこに集中的に投資し、スペシャリティ領域にどんどんフォーカスしていくのがグローバルの方針です。

 

――後発品と新薬、必要となるケイパビリティにはどのような違いがありますか。

大きく異なるのが、開発と情報提供だと思います。

 

特に大きいのが開発です。大規模な臨床試験を含めさまざまな試験が必要ですし、途中で失敗してしまうリスクも高い。それは、後発品企業にとってだけではなく、新薬メーカーにとってもそうなんですが、そこでの経験を蓄積している新薬メーカーと未経験の後発品メーカーでは、壁の高さは全く違って見えると思います。

 

新薬開発に参入しようと思っても、既存のビジネスが健全でなければ新薬に再投資することはできません。サンファーマが新薬を開発できているのは、そうした資金的な裏付けを持つ力を持っていたためだとも言えると思います。

 

日本では売り上げの8割が先発品

――自社創薬の能力構築に取り組んでいるのはなぜなのでしょうか?イルミアのように、ライセンスでラインアップを広げていく道もあると思いますが。

イノベーションはある意味、確率論ですので、アカデミアにある非常にアーリーなステージのシーズや、他社が持つある程度進んだシーズなど外部にも目配せをしつつ、同時に社内でも探索を行っていく。100%外部の力に依存するのではなく、社内も含めて複数足場を持っておきたいというのが基本的な方針です。

 

日本法人としても、イルミアのようなサンファーマグローバルの製品を日本で上市していくという役割とともに、日本にあるイノベーションをサンファーマグローバルにつないでいくという役割も期待されています。

 

――日本市場には、2016年にノバルティスの長期収載品を承継して本格的に参入しました。

サンファーマは、必ずしもグローバルで同じビジネスモデルを追求することを求めていません。米国では幅広い品揃えで後発品を中心に事業展開していますが、欧州では入院医療で使用される薬剤に特化しています。

 

一方、日本市場では、グローバルで土台となっている後発品事業はやっていません。日本法人を設立したのは12年で、先行していた国内メーカーと同じことを後追いでやっても、顧客や市場に対するインパクトは非常に限定的になると判断したからです。16年にノバルティスから長期収載品を承継したのに続き、20年にはポーラファルマを統合し、先発品を中心に皮膚科領域の品揃えを強化しました。売り上げの構成を見ると、グローバルは8対2で後発品が多いのに対し、日本は先発品が8割を占めています。

 

――16年のノバルティスからの長期収載品の承継、20年のポーラファルマ統合、同年のイルミア発売と日本市場で事業を展開してきましたが、手応えをどう感じていますか。

ノバルティスからの承継は、とにかく日本でビジネスの基盤を作ろうという目的で行いました。その頃、サンファーマの社員数は40人強で、開発中だったイルミアをどう自販していくのかということが大きな課題だったんですが、20年1月にポーラファルマを統合し、同年9月のイルミア発売までに何とか体制を整えることができた。イルミアは医師の間で一定の評価を受けており、患者に貢献できる薬剤として育成していくフェーズに入ってきています。皮膚科領域では、おおむね想定していた通りに展開できていると自分たちでは評価しています。

 

第2の柱としてがん領域に参入

――がん領域での展開は。

皮膚科に続く第2の柱として今年、大鵬薬品工業から抗がん剤の後発品2製品を承継し、抗がん剤の領域に参入しました。自社開発した抗がん剤の後発品1製品も今年8月に承認されていて、12月に薬価収載予定です。来年以降は、サンファーマのグローバルのポートフォリオを毎年、日本市場に投入していきたいと考えています。

 

サンファーマは、先発品と同じ剤形の単純な後発品に加え、特殊な剤形を開発し、生産する能力を持っています。例えば、調製の手間を省き、曝露を防ぐ液剤やバッグ製剤、プレフィルドシリンジなどです。そうした、サンファーマの強みを生かせるような製品を日本市場に投入し、抗がん剤のフランチャイズを日本で立ち上げていけば、第2の柱にできるのではないかと考えています。

 

グローバルで第3の柱としている眼科では、米国で3年前にドライアイの新薬を発売しています。これを日本でどう立ち上げていくのかということが、第3のフランチャイズの中核となっていきます。

 

――日本市場は薬価の毎年改定などで厳しい面もありますが、グローバルの本社は日本市場をどのように見ていますか。

3つの領域だけでもたくさんの種があり、それらが同時並行で進んでいます。そうしたものをどう日本の医療従者や患者に届けていこうかということを考えると、本社も日本法人も大変エキサイトしています。日本市場のポテンシャルは高いし、サンファーマのポートフォリオを見ても、日本の患者に貢献できることがたくさんある。新薬、先発品、後発品を組み合わせて、フォーカスしている3つの領域を確かに立ち上げ、より強く、より大きくしていきたいと思っています。

 

確かに日本の薬価制度は厳しいです。ただ、われわれが今後、日本市場に投入するサンファーマグローバルのポートフォリオは、そのほとんどを原薬から自社で製造しており、コスト構造の側面からも、品質管理の側面からも強みになると考えています。

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