2021年9月に米FDA(食品医薬品局)が承認した主な新薬と適応拡大をまとめました。
【新薬】エクソン20挿入変異肺がん治療薬「Exkivity」や胆汁うっ滞性そう痒治療薬「Livmarli」など
「Trudhesa」米インペル・ニューロファーマ
片頭痛治療薬「Trudhesa」は、dihydroergotamine mesylateの新規の鼻噴霧剤。前兆のない急性期片頭痛の治療に使用できます。dihydroergotamineの点鼻薬としては、すでに「Migranal」などが販売されていますが、Trudhesaはインペル独自のPOD(Precision Olfactory Delivery)技術を使っており、血管の多い鼻腔上部に薬剤を送達することが可能です。
「Exkivity」武田薬品工業
チロシンキナーゼ阻害薬「Exkivity」(一般名・mobocertinib)は、「EGFRエクソン20挿入変異を伴う成人の局所進行・転移性非小細胞肺がん」の適応で迅速承認を取得しました。EGFRエクソン20挿入変異を標的とする治療薬は世界初。承認の根拠となった臨床第1/2相(P1/2)試験では、約1.5年の奏効期間(中央値)を示しました。中国やオーストラリアでも申請中で、日本ではP3試験を進めています。
「Tivdak」米シーゲン
再発・転移性子宮頸がん治療薬「Tivdak」(tisotumab vedotin)は、デンマーク・ジェンマブの組織因子を標的とする抗体と、米シーゲンの微小管阻害薬の複合体。化学療法後に進行した患者が対象です。101人の患者を集めて行ったP2試験では、客観的奏効率24%、奏効期間(中央値)8.3カ月を示し、この結果をもとに迅速承認されました。日本でもP3試験を実施しています。
「Opzelura」米インサイト
アトピー性皮膚炎治療薬「Opzelura」は、JAK阻害薬ruxolitinibの外用剤。アトピー性皮膚炎に対するJAK阻害薬の局所製剤は米国初です。承認の根拠となったP3試験では、アトピー性皮膚炎による炎症やかゆみを有意に減少させました。日本でも開発が進んでいます。
「Qulipta」米アッヴィ
1日1回投与の経口CGRP受容体拮抗薬の「Qulipta」(atogepant)は、成人の反復性片頭痛の予防薬。成人患者を対象とした臨床試験では、12週間の治療期間でひと月あたりの発症日数を半分以下に抑えました。日本でもP3試験段階です。
「Livmarli」米Mirum
「Livmarli」(maralixibat)は、アラジール症候群に伴う胆汁うっ滞性そう痒症の治療に使用される経口液剤です。同薬は胆汁酸トランスポーター阻害薬。腸肝循環を介した胆汁酸の再利用を減らすことで全身の胆汁酸濃度を低下させ、胆汁酸を介した肝障害や合併症を軽減すると考えられています。同疾患に対する治療薬は米国初。欧州でも申請中です。日本では今年9月、武田薬品工業が国内の開発・販売権を取得しており、胆汁うっ滞に関連した適応症で臨床試験を行う予定です。
【適応拡大】「Brukinsa」の辺縁帯リンパ腫、「Cabometyx」の分化型甲状腺がんなど
「Brukinsa」中国ベイジーン
BTK阻害薬「Brukinsa」(zanubrutinib)は、新たに再発・難治性の辺縁帯リンパ腫の適応で迅速承認を取得しました。少なくとも1つ以上の抗CD20療法を受けた成人患者が対象です。臨床試験では、患者の20%が完全奏効を達成しました。同薬は米国や中国でマントル細胞リンパ腫などの適応で承認。日本でも血液がんを対象に開発中です。
「Cabometyx」米エクセリクシス
マルチキナーゼ阻害薬「Cabometyx」(cabozantinib)は、局所進行・転移性の分化型甲状腺がん(DTC)に適応拡大。VEGF受容体を標的とする治療を受けた後に進行した、放射性ヨウ素131I治療抵抗性・不適格の12歳以上の患者が対象です。DTCは米国で最も多い甲状腺がんで、放射性ヨウ素131I不応の患者は予後が悪いと知られています。P3試験では、プラセボと比べて無増悪生存期間を有意に延長しました。日本では武田薬品工業がライセンスを持っていますが、甲状腺がんではまだ開発されていません。
「Jakafi」米インサイト
JAK阻害薬「Jakafi」(ruxolitinib)は、新たに慢性移植片対宿主病(GVHD)の適応で承認されました。1つまたは2つの全身治療に失敗した12歳以上の患者が対象です。米国では2019年、ステロイド難治性の急性GVHDに適応拡大。今回の承認は4つ目の適応症となります。 日本では導出先のノバルティスファーマが急性・慢性GVHDの適応で申請中です。
「Repatha」米アムジェン
抗PCSK9抗体「Repatha」(evolocumab)は、食事療法やLDLコレステロール低下治療を行うヘテロ接合型家族性高コレステロール血症患者の補助療法として、新たに10歳以上の小児に使用できるようになりました。合わせて、ホモ接合型家族性高コレステロール血症の適応でも、これまで13歳以上だった対象が10歳以上に拡大されました。
【バイオシミラー】サムスンバイオエピスのranibizumab
「Byooviz」韓国サムスンバイオエピス
「Byooviz」(ranibizumab)は、米ジェネンテックの 眼科用VEGF阻害薬「Lucentis」のバイオシミラー。同薬のバイオシミラーは米国初で、▽滲出型加齢黄斑変性▽網膜静脈閉塞症に伴う黄斑浮腫▽近視性脈絡膜新生血管――の治療に使用できます。欧州でも今年8月に承認。米国での販売は、提携先の米バイオジェンが行います。