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病院の外へとシフトする手術|DRG海外レポート

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米国に本社を置くコンサルティング企業DRGのアナリストが、海外の新薬開発や医薬品市場の動向を解説する「DRG海外レポート」。米国では、通院外科診療所など病院外に処置の場を求める傾向が強まっており、新型コロナウイルスの感染拡大がこれに拍車をかけています。

 

(この記事は、DRG発行のレポート「COVID-19:Impact on ASCs」の一部を日本語に翻訳したものです。レポートのダウンロードはこちら

 

コロナ禍で拍車

新型コロナウイルスの感染拡大で、医療機器業界はかつてない状況に追い込まれた。医療提供社や規制当局は、新型コロナウイルス患者をはじめ、急を要する患者に適切な医療を提供すべく、この非常事態に速やかに順応することが求められている。

 

処置を行う場所を通院外科診療所(ASC)など病院以外の場所に移行させる傾向は以前から進んでいたが、コロナ禍はその傾向に拍車をかけている。特に顕著なのは、整形外科、心臓病、疼痛管理、内視鏡検査、耳鼻咽喉科といった領域だ。

 

米国では、すでにパンデミックの前から、処置を病院以外の場所に移行させることがある程度定着していた。例えば、院外で行われる大関節債権インプラント手術は、2017年から19年にかけて50%近く増加している。こうした傾向の背景には、多くの要因が存在する。主なものとしては、▽コスト▽償還政策▽転帰の改善▽低侵襲治療の発展▽遠隔患者モニタリングの発展――などが挙げられる。

 

 

低コスト

特に重症度が低い患者では、病院の外来部門やASCで処置が行われるケースが増えている。コストが安く済むことが、その主な理由だ。膝関節鏡検査、腰椎固定術、大腸内視鏡検査といった多くの処置や検査は、病院よりASCの方が約50%もコストが低いと言われており、ASCでの処置を求める患者の声は大きくなっている。

 

病院の場合、手術の選択肢や使用する機器の選定において管理者が大きな役割を担っている。一方、ASCでは、こうした集権的な色合いははるかに薄い。ASCの方が柔軟に予定を組むことができ、高い採算性が見込め、外科医が手術の選択肢を主体的に評価することができる。業界関係者によると、ASCのネットプロモータースコアは90を超えており、患者の満足度も非常に高い。

 

外来処置の増加には、患者やペイヤーが、コストの削減、長期入院に伴う院内感染リスクの排除、そして最終的には医療の質の向上を求めていることも関係している。Healoraの最高経営責任者(CEO)であるトム・ファーマー氏は、「感染症の発生率は病院よりもASCの方がはるかに低いとの報告がある」と述べている。さまざまな医学誌に発表された研究によると、ASCでの処置は病院での処置に比べコストは低い上、効率的で、再入院率や麻酔に伴う悪性高熱症の発生率も低い。ASCの再入院率は、病院の外来部門や診療所とほぼ同じかそれよりも低いことも明らかになっている。

 

 

米国では、医療提供者が大きな説明責任を負う支払いモデルにより、外来処置への移行が後押しされている。包括払い制度では、病院は質の低い医療や高コストのサービスを提供すると不利益を被るリスクがある。コストの低い外来で処置を行えば、仮に有害事象や再入院が発生したとしても、財務的なリスクを最小限に抑えることができる。

 

患者は、低コストでの速やかな回復と質の高い医療を求めている。加えて、テクノロジーや外科的手技の進歩によって、処置の安全性や費用対効果も向上している。こうした状況も、外来処置へのシフトを促進する背景となっている。

 

償還政策

ASCでの処置に有利な償還政策も進んでいる。

 

メディケア・メディケイドサービスセンターは最近、新型コロナウイルスの感染拡大を踏まえ、償還の仕組みの見直しを前倒しして行うと発表した。見直しには、全人工股関節置換術をASCの支払い可能リストに追加することや、入院患者専用リストを2023年まで廃止することなどが含まれる。

 

企業も、ASCに特化した製品を開発することで、ASCへの移行を支援している。デバイスの革新を通じて、手術の難易度を下げ、手術時間を短縮しているほか、患者教育や手術の準備を容易にするリソースやサービスを提供している。これにより、プロセスのワークフローを合理化し、患者の滞在時間を短縮し、最終的にはコストを削減しながらアウトカムを向上させている。

 

 

例えば、Zimmer Biometの「シグネチャー・ソリューション・アウトペイシェント・プログラム」には、患者教育とプロセスの改善ツール、手術計画ソリューション、コーディング・償還ガイドライン、股関節・膝関節・骨セメント製品/器具などが含まれており、外来での膝関節・股関節置換術をトータルでサポートよう設計されている。同様に、Smith & Nephewの「ASCプログラム」、DePuy Synthesの「アドバンテージ・アウトペイシェント・ソリューションズ」、Strykerの「パフォーマンス・ソリューションズ」も、外来施設が効率的に手術を行えるよう、ワンストップショップを提供している。

 

Strykerの「アセンシャル・プログラム」は、複雑な処置を行わないASCを対象に、よりシンプルなインプラントを無菌パッケージで導入し、合理化された流通プロセスを提供している。価格は安いが、Strykerは製造以外のコストを削減しており、利益率は高い。昨年、StrykerはASCに特化した事業を立ち上げた。ASCが必要とする可能性のある製品をすべてそろえ、一括購入による割引機会を提供し、製品調達プロセスを大幅に合理化するなど、ASCに合わせたソリューションを提供している。

 

技術革新

ロボットシステムは、低侵襲かつ短時間での手術を可能にし、手術件数を増やすことができるため、ASCでの採用が進んでいる。Smith & Nephewの「CORI」、Zimmer Biometの「ROSA」、Strykerの「MAKO」は、インプラントの位置を決めるのに術前にCTスキャンを必要としていた従来のシステムと違ってコンパクトで、術前の画像診断は不要だ。

 

Smith & Nephewは、膝関節手術用システム「NAVIO」の急速な普及によって、近年収益を伸ばしている。NAVIOは、比較的安価で持ち運びしやすく、安全性も高いため、外来での使用に適している。同社は米国の医療費請求サービス会社と戦略的提携を結び、米国内のASCに収益サイクルの管理サービスを提供している。これは、企業がASCをビジネスのターゲットとする傾向が強まっていることを意味している。

 

 

Zimmer BiometのROSAとStrykerのMAKOも、パンデミックの中で強い支持を得ている。前者は四半期あたり3000症例以上で自社のシステムが使用されると見込んでおり、これは19年第4四半期から倍増することを意味している。最近の決算説明会では、Zimmer BiometのCEOが、ASCでのロボティクス使用の見通しについて、非常に楽観的な見解を示している。

 

ASCへのシフトが進んでいる要因として、ASCで実施可能な代替医療の登場も挙げられる。たとえば、Relievant Medsystemsは17年に「インターセプト神経焼灼システム」の承認を米FDA(食品医薬品局)から取得した。これは、RFエネルギーによって痛みのシグナルを伝達する神経を焼灼することで腰痛を緩和し、脊椎手術の必要性を遅らせたり排除したりすることができる。

 

メディケア・メディケイドサービスセンターは最近、同システムに対してHCPCS (Healthcare Common Procedural Coding System)コードを発行しており、病院の外来部門やASCは払い戻しを受けられるようになった。結果として、多くの患者が利用できるようになり、入院で行われ続けている脊椎手術にかわって、ASCでこの治療を受ける患者が増える可能性がある。

 

(この記事は、DRG発行のレポートの一部を、AnswersNewsが日本語に翻訳したものです)

 

【記事に関する問い合わせ先】
DRG(クラリベイト・ジャパン・アナリティクス株式会社)
野地(アカウントマネージャー)
E-mail:Hayato.noji@clarivate.com

 

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