米国に本社を置くコンサルティング企業DRGのアナリストが、海外の新薬開発や医薬品市場の動向を解説する「DRG海外レポート」。 新型コロナウイルスの影響で、患者の受療行動や医療情報との関わり方が大きく変化しています。
(この記事は、DRGのアナリストが執筆した英文記事を、AnswersNewsが日本語に翻訳したものです。本記事の内容および解釈については英語の原文が優先します。正確な内容については原文を参照してください。原文はこちら)
医療費の支払い 困難に直面
DRGの「Cybercitizen Health U.S. 2020」の調査結果によれば、新型コロナウイルスの感染拡大で、患者の間ではオンラインによる受診や健康関連情報(治療情報など)の収集が進んでいる。
新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、患者は生活のさまざまな側面で非常に大きなストレスにさらされている。患者の38%は収入の途絶や減少を経験し、25%はコロナ禍で精神面の不調を経験したと回答。受診方法の変更を経験した患者も44%いた。
支援プログラムにニーズ
患者にとって、医療費の支払いは切実な懸念事項となっている。Cybercitizen Health U.S. 2020の調査対象となった米国成人4884人のうち、23%がコロナ禍で失業を経験しており、経済的な不安に対処しようと懸命に努力している。5人に2人を超える患者が、この2年で医療費が増えたと答えていて、19%は医療費の支払いが困難だと答えている。
こうした患者にとっては、製薬企業からの支援が歓迎されるかもしれない。患者の18%は処方薬の代金を節約する方法を見つけるのが難しいと答えており、36%の患者は節約が可能になる製薬企業の支援サービスを利用したいとの以降を示している。一方で、製薬企業が提供している支援プログラムをまったく知らない患者も37%いる。
患者の3割が特定の薬剤の処方を依頼
すでに患者は、遠隔診療を利用することに違和感を覚えなくなっている。遠隔診療を受けている人の半数以上は「はじめはバーチャル診療を受けるのにためらいがあったが、実際に受けてみて、もっと頻繁に利用したいと考えている」と答えた。利用経験者は、時間の節約(48%)や移動が不要(47%)といった利便性をプラスの要因として挙げている。
製薬企業が注目すべきなのは、患者がバーチャル診療を利用するケースとして、薬剤の処方が上位を占めている点だ。普段から服用している薬の処方はもちろん、新たな症状に対する治療薬の処方も含まれる。
米国の患者は、自身の治療方針の決定に非常に積極的に関わる。患者の58%は治療の決定に積極的に参加していると回答。31%は特定の薬を処方するよう医師に依頼したことがあるといい、医師が患者の依頼を受け入れたケースは86%に上った。
正確な情報提供がミッションに
こうした依頼のもととなる情報源は、家族や友人からの勧め、インターネット検索、健康関連サイト、テレビコマーシャルだ。
Zoonでの会議であれ、Netflixの視聴であれ、自宅でモニターの前に座って過ごす時間が増えている。こうした状況では、薬の広告に触れる機会が増えるのも当然だ。過去6カ月間に処方薬の広告を見た記憶のある米国の成人は63%で、2019年の55%から増加している。
オンライン広告を見た記憶のある人の56%は、実際に医師に処方を依頼する前に、インターネットで薬に関する情報を検索している。製薬企業にとっては、症状や治療に関する質の高い正確な情報を届けることがクリティカルなミッションとなる。インターネットには多くの健康情報が溢れているものの、信用できないものも多く、このミッションは患者にとって重要なニーズを満たすことになる。実際、患者の56%は「インターネットには情報がありすぎて、どれを信じていいのか判断が難しい」と感じている。
(原文公開日:2020年12月17日)
(この記事は、DRGのアナリストが執筆した英文記事を、AnswersNewsが日本語に翻訳したものです)
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