2020年12月に米FDA(食品医薬品局)が承認した主な新薬と適応拡大をまとめました。
【新薬】遺伝性血管性浮腫発作抑制薬「Orladeyo」や前立腺がん治療薬「Orgovyx」など
「Orladeyo」米バイオクリスト
「Orladeyo」(一般名・berotralstat)は、12歳以上の遺伝性血管性浮腫患者の発作抑制に使用される血漿カリクレイン阻害薬。臨床第3相(P3)試験では、1カ月あたりの発作の頻度を減少させました。日本では先駆け審査指定制度の対象品目に指定されており、近く「オラデオ」の製品名で承認される見通し。欧州でも申請を済ませています。
「Klisyri」米アテネックス
微小管阻害薬「Klisyri」(tirbanibulin)は、顔や頭皮にできる日光角化症の局所治療に使用される軟膏です。米国では提携先のスペイン・アルミラールと共同販売する予定。日光角化症は前がん病変で、放置しておくと10~15%が皮膚がんに進行するとされています。
「Margenza」米マクロジェニクス
Fc最適化抗HER2抗体「Margenza」(margetuximab)は、転移性HER2陽性乳がん治療薬。少なくとも2つの抗HER2療法を受けた成人患者が対象で、化学療法と併用します。化学療法への上乗せを検証した臨床試験では、抗HER2抗体「ハーセプチン」と比べて無増悪生存期間を有意に延長しました。
「Orgovyx」米マイオバント・サイエンシズ
大日本住友製薬の子会社マイオバント・サイエンシズのGnRH受容体阻害薬「Orgovyx」(relugolix)は、進行性前立腺がん治療薬。経口のGnRH受容体阻害薬は米国初です。米国では提携先の米ファイザーと共同プロモーションを行います。マイオバントは、relugolixにエストラジオールと酢酸ノルエチンドロンを加えた3剤配合剤についても、子宮筋腫を対象に米国と欧州で申請中です。
「Gemtesa」米ユーロバント・サイエンシズ
同じく大日本住友子会社のユーロバント・サイエンシズのβ3アドレナリン受容体作動薬「Gemtesa」(vibegron)は、「成人の切迫性尿失禁、尿意切迫感および頻尿の症状を伴う過活動膀胱」の治療薬です。経口の過活動膀胱治療薬としては米国で約8年ぶりの新薬。米国では、前立腺肥大症を伴う過活動膀胱と過敏性腸症候群関連疼痛への適応拡大に向け、後期臨床試験を行っています。
【適応拡大】「Gaverto」のRET変異陽性甲状腺がん、「Benlysta」のループス腎炎など
「Hetlioz」米ヴァンダ
メラトニン受容体作動薬「Hetlioz」(tasimelteon)は、スミス・マギニス症候群(SMS)に伴う夜間睡眠障害に適応拡大。既存のカプセル剤の適応拡大とあわせ、新たに経口懸濁液も承認されました。SMSは神経発達障害で、概日リズムの逆転によって夜間の睡眠が困難となる疾患。SMSに対する治療薬は米国初です。
「Gavreto」米ブループリント
RET阻害薬「Gavreto」(pralsetinib)は、RET遺伝子変異陽性またはRET融合遺伝子陽性の進行・再発の甲状腺がんに適応拡大しました。1日1回投与の経口剤で、2020年9月に転移性非小細胞肺がんの適応で承認を取得。米国ではブループリントと米ジェネンテックが共同で販売しており、米国と中国以外ではスイス・ロシュが販売権を持っています。
「Saxenda」デンマーク・ノボ ノルディスク
GLP-1受容体作動薬「Saxenda」(liraglutide)は、新たに12~17歳の肥満症患者に使用できるようになりました。体重60kg以上で、BMIが30を超える患者が対象。同薬は2014年、成人患者の体重管理で承認を取得しました。
「Benlysta」英グラクソ・スミスクライン
抗体Bリンパ球刺激因子(BLyS)抗体「Benlysta」(belimumab)は、活動性ループス腎炎に適応拡大。標準治療を受けている成人患者が対象です。ループス腎炎は全身性エリテマトーデス(SLE)による腎炎で、SLEの約40%の患者に見られます。同薬は2011年にSLE治療薬として承認。日本でも17年から販売されています。
「Kineret」スウェーデンSobi
IL-1受容体拮抗薬「Kineret」(anakinra)は、IL-1受容体拮抗分子欠損症(DIRA)に適応拡大しました。DIRAは幼児期に発症する非常にまれな自己免疫疾患で、皮膚や骨などの病変を伴う全身性の炎症を引き起こします。安全性と有効性を評価した長期の自然史研究では、Kineretの投与を受けた9人の患者全員で寛解が確認されました。
「Arcalyst」米リジェネロン
IL-1阻害薬「Arcalyst」(rilonacept)は、IL-1受容体拮抗分子欠損症(DIRA)の寛解維持療法に使用できるようになりました。体重が10kg以上の小児、成人患者が対象です。
「Iclusig」武田薬品工業
チロシンキナーゼ阻害薬「Iclusig」(ponatinib)は、慢性骨髄性白血病の適応で、少なくとも2種類のチロシンキナーゼ阻害薬による前治療に抵抗性または不耐性の慢性期患者に対象を拡大しました。米国では現在、フィラデルフィア染色体陽性の急性リンパ性白血病(フロントライン)への適応拡大に向けたP3試験が行われています。
「Tagrisso」英アストラゼネカ
EGFR阻害薬「Tagrisso」(osimertinib)は、早期ステージのEGFR遺伝子変異陽性非小細胞肺がんのアジュバント療法として使用できるようになりました。エクソン19欠失またはエクソン21の点突然変異(L858R)を持つ成人患者が対象です。オーストラリア、ブラジルなど5カ国で審査が行われており、中国や欧州でも申請中。日本では、同適応でP3試験を実施しています。
「Xpovio」米カリオファーム
経口選択的核外輸送タンパク質阻害薬「Xpovio」(selinexor)は、セカンドライン以降の多発性骨髄腫に適応拡大。ボルテゾミブ、デキサメタゾンと併用します。同薬はデキサメタゾンとの2剤併用療法で4回以上の治療歴のある多発性骨髄腫を対象に承認されていましたが、今回の承認でより広い患者に使用できるようになりました。
「Trikafta」米バーテックス
嚢胞性線維症治療薬「Trikafta」(elexacaftor/ivacaftor/tezacaftor)は、in vitroデータに基づき、CFTR遺伝子に特定の変異のある12歳以上の患者に適応拡大。あわせて、同社の嚢胞性線維症治療薬「Symdeko」(tezacaftor/ivacaftor)、「Kalydeco」(ivacaftor)も、対象となる遺伝子変異の追加が承認されました。
【バイオシミラー】米アムジェンのrituximab
「Riabni」米アムジェン
抗CD20抗体「Riabni」は、米ジェネンテックの「Rituxan」(rituximab)のバイオシミラー。同薬のバイオシミラーの承認は、韓国のセルトリオン、米ファイザーに続いて米国で3剤目となります。
(亀田真由)
AnswersNews編集部が製薬企業をレポート
・大日本住友製薬
・武田薬品工業